手紙 ~カミラへ~
本編外です。
寝不足で顔が浮腫んでいる私を心配した夫が、『少し休め』と代わってくれたので、顔を洗いに外に出た。
きっとすぐに音をあげて、私の名を呼ぶだろう。
彼は赤ん坊の抱き方が下手だから。
ほら、さっそく泣き出した。
でも、夫にはもう少し頑張ってもらおう。
今、夫の腕の中で元気に泣いている娘には、優しい彼女の名を貰った。
時々、隠れて見に来てくれているのも知っている。娘が生まれたすぐあと、送り主のない大きな果物籠が届いたから。
それに、彼女はかくれんぼが下手だ。
今度見つけたら、赤ん坊を抱いて貰おう。
娘の名前を教えたら、彼女なら泣いて喜んでくれるはず。楽しみだわ。
いつも、郵便を届けてくれる雑貨屋の男の子が、息を切らせてやって来るのが見える。
赤ん坊が可愛くて仕方がないそうだ。
「カミラさん。はい、これ」
手紙を私の手に押し付けると、一目散に娘のところに走っていく。
「マリアからかしら?」
それとも、お世話になった人達に、結婚して子どもが生まれたと手紙で知らせたから、その返事だろうか。
「え!!」
皺だらけで、遠方からだと分かるその手紙には、王宮の検閲印が捺されていた。
「第二王子ご成婚の恩赦として、手紙の遣り取りを許可する」
という事務的なメモが添えられている。
震える指で手紙を開くと、初めて見る祖母のクセの強い字が並んでいた。
牢の前で別れてから、6年
ルキア鉱山から初めて届いた手紙。
最後には祖母のとは別の、美しい文字が書かれていた。
「ああ、神様」
音をあげた夫が、娘を抱いて出てきた。
手紙を振って見せると、私からすべてを聞いて知っている夫が、娘を落とさないよう、おっかなびっくり歩いてくる。
嬉しくて、笑いながら涙を流す私に、ニコニコしながら「いい知らせ?」と聞く。
「ええ、とっても」
『 おめでとう
ごめんなさい
ありがとう 』
お読みいただいてありがとうございます。
最後までお付き合いくださったお陰で、書き上げることが出来ました。
因みに、第二王子=ギール殿下のお相手はサーシャ様です。
紆余曲折あって、婚約者と別れたサーシャが、ギール殿下につかまります。
アイリス殿下に、ギール兄に似ていると言われたマリアを大好きなサーシャ様ですので、当然、ギール殿下に惚れていきます。で、無事ご成婚。
という裏設定。サーシャ様は素晴らしい王子妃になるでしょう。
またいつか、別の作品でお会い出来ればと思います。




