表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/32

3.【改稿済】望んでいない



 みんな、あんまりだわ!

 これを自分勝手と言わずに何を自分勝手というの?

 突然、お前は婚約してたと言われたかと思ったら、とっくに解消もしてたと言われて、「はい、そうですか」なんて言う人がいるわけないでしょう?

 胸がモヤモヤして眠れないわ。 


 もうっ!ボスッ もうっ!ボスッ


 枕をいくら殴っても全然、モヤモヤが晴れない。


 カポ カポ カポ


 あれは。ちょっと遠いけど、馬車の音よね?

 こんな夜更けにゆっくり入って来る馬車なんて、お父様を乗せた馬車よ! 火急の使者とかなら、もっと馬車の音が荒々しいはずだもの。


 こんな気持ちのまま眠れるわけないわ

 

 ガウンを羽織っただけで、部屋を出る。

 肌寒い季節なのに、怒りで全く寒さを感じない。


 お父様は家令や執事から1日の報告を受けるまでは、休んだりしないもの。執務室に行けばお会い出来るはず。

 ちょっとだけでも、お父様に話を聞かないと。


「では私はこれで」

「ああ。お疲れ様」


「あなた、・・・・なの?」

「ああ・・・・・・・」


 執事のセイマスが執務室から出てくるのに気が付いて、思わず柱の陰に隠れると、両親が話す声が聞こえてくる。


 ちょっと距離があるせいで、ほとんど何も聞き取れない。


 お母様、とても心配そうな声だったわ

 何か大変のことでもあったのかしら?


 ……ちょっとだけ、覗いてみよう……



「あなた、本当にもう諦めたと言ったの?」


「ああ、ステファンはもう別の婚約相手を探していると言っていたよ」


「12年もマリアを思ってくれていたのに……」


「だからこそだよ。それだけ想っている相手に、何とも思っていないと言われたんだ。ステファンも、今度ばかりは堪えたんだろう」


「……そうね。頑張ってくれてたものね」


「あれだけあからさまだったのに、なぜマリアは気がつかなかったのか……」


「本当にマリアに何も言わないおつもり?」


「もちろんだよ。あの子が忘れていて、彼の気持ちに応える気もない以上、無理に思い出させて、もう一度ステファンを傷つけることはない」


 沸々と怒りがこみ上げてくる。手まで震えてきた。


 カタッ 


 しまった!

 

「セイマス? 」


 執事だと思ったらしいお父様が、声をかけてくる。

 

 いいわ、もう、我慢出来ない!

 私抜きで私の何かが決まってしまうのはイヤ!


 返事がないのを不審に思ったお父様が、扉を開いた瞬間、怒りが吹き出した。


「お父様、ひどいわ!」


「マリアッ?!」


「ひど過ぎる!」


「……全部聞いたのかい?」

「起きていたなんて……」


 お母様も出てきて、私を抱きしめてくれる。

 優しい抱擁に、余計に腹がたってきた。


「お母様、それじゃ私が傷ついているみたいじゃない! 私は怒ってるの!」


「マリア落ち着いて、ね?」


「婚約してたなんて、私全く知らなかったのよ? いつの間にか婚約してて、それもいつの間にか破棄されてたなんて、あとから知らされた私がバカみたいじゃない! 」


 母が愛用しているピンクのガーベラの香りが、まるで私を宥めようとしているように思える。


 その香りは、父の所領であるゼノア公爵領の花を、母が魔法で香水にしたものだから、私のお気に入りでもあったのに。 


「お父様、お母様、どうしてステファンと婚約していたことを教えてくれなかったの? ねぇ、教えて!」


 両親は目を交わすと頷きあって、マリアを椅子に座らせた。


「マリア、全部話そう。

 でもかなり長くなるよ。私達の生まれから話すことになるからね。それに、お前も気が立っているようだから、今話すのは避けたい」


 お兄様と私には甘いお父様の真剣な顔に、仕方なく頷いた。


「ただ、これだけは言っておく。

 今晩、私はステファンに会って彼の気持ちを確かめて来たんだ。

 ステファンはもう、お前を伴侶に望んでいない。

 だが私の話を聞くまで、ステファンに婚約のことを確かめたり、彼を責めたりしてはいけないよ? 

 それを約束出来るというなら、婚約を忘れたお前に、何も言ってこなかった理由を話してあげよう」


「……わかったわ、お父様」


「いいこだ。もう遅い。明日も学園だろう? 部屋に戻って寝なさい」


「はい……おやすみなさい、お父様、お母様」


「おやすみ」「おやすみなさいマリア」


 結局、何もわからないのは未だ変わらない。

 けれど、お父様が真剣に交わした約束を違えるはずがないという安心感が、私の足を部屋に向かわせた。


 でも、廊下に響く自分の足音が、なぜか心細くて堪らない。



『ステファンはもう、お前を伴侶に望んでいない』


 シオンお父様がハッキリと告げたその言葉が、とても重く胸に残っている。


「どうして、こんなに空っぽな気分がするのかしら? 」


 ひとり呟いても、応えてくれる者はいない。


 胸が苦しいわ。

 さっきまで、暑いほどだったのに寒くて凍えてしまいそう。


『ステファンはもう、お前を伴侶に望んでいない』


『ステファンはもう、お前を伴侶に望んでいない』


 頭のなかで、お父様の言葉が止まらない?


 明日、お父様のお話を聞けば、こんなに虚しくて寒いのも消えてなくなるのかしら?



 今度は、頭まで上掛けを被っても、寒くてなかなか寝つけなかった。







遅くなりました。

基本は11時に投稿出来るようにして忌ますが、

しばらく時間もまちまちになります。




次回は、ステファンの気持ちです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ