27.君に剣を
ギール殿下の馬車が去って行くのを見送っていると、
「マリア」
ステファンが側にいた。
私が殿下の馬車に乗って行かなかったので、少しほっとしているようだ。
「ギール王子と何を話していたんだい?」
「勝手に教えられないわ」
「………王子の側にはいかない?」
「ええ」
それ以降、何も言わない私を、ステファンがしばらく見つめていた。
ジェスキア公爵家の家紋は本と剣
ステファンは、王宮でも、その家紋が彫られた剣を帯剣することを許されている。
つまり、王太子の側近であり護衛でもあるのだ。
今ももちろん、帯剣している。
「祭礼の日なのに、王太子のお側を離れていいの? 」
「ああ、許しを貰ってある……マリア」
ステファンがおもむろに片膝をついて、私に剣を差し出した。
「スティ?!」
「俺はジェスキアだから」
「な、何を言っているの? 」
「マリア、俺と、いや、私と結婚してくれないか」
「突然、何を言い出すの? 」
「嫌なのか? 」
「急にそんな……」
「俺にとっては急じゃない。
マリア、今、この剣を受け取らないのなら、俺はもう手に入らない。ダメなら俺は他に愛する人を探すよ。辛くても振り返らないし、余所見もしない、だからこれが最後だ」
「…………イヤだと言ったら、スティは私の側からいなくなる? 」
「ああ」
「他の人のところにいくの?!」
「そうだ」
「嫌よ!」
そんなこと耐えられないと思ったら、手が勝手に剣を抱き締めていた。
「待ちくたびれた」と愚痴を溢しながら、ステファンが嬉しそうな顔で立ち上がる。
「でも、私、スティとの約束を覚えていないから、本当に好きなのか自信がない」
「まだ、そんなこと言うんだ?
まぁいいさ。ほかの子に俺を取られるのは嫌なんだろ?」
と、ニヤリとステファンが笑う。
勝ち誇ったかのように笑う、ステファンがキラキラして見えたけれど、ちょっと悔しかったから、ギール殿下からの伝言を伝えた。
『先々代国王陛下は5年かかった』そう言えばステファンにはわかると言われたけれど、どういう意味なのかしら?
「そうか、5年もか……」
「どういう意味なの?」
「マリアは気にしなくていい。ギール殿下が、君を諦めたという意味さ」
「?」
「まぁ、今は取られるのが嫌だくらいでいいよ、これからみてろ」
ステファンが挑むかのような目をするので、ドキドキしてしまう。
何だか恥ずかしくて、つい目を反らしてしまった。
「あはは 良かった。5年も待つ必要はなさそうだな」
嬉しそうにステファンが言うので、意味はわからなかったけれど、私も何だか嬉しくなってしまう。
私達が手を繋いで戻って来るのを、待ってくれていた両親が、微笑んで迎えてくれた。
「呆れた奴らだ」とお兄様とアイリス殿下に笑いながら叱られたけれど。
お読みいただいてありがとうございます。
残すところ、3話?くらいになりました。
お付き合いいただければ嬉しいです。




