27.ギール殿下の告白
国民が捧げた、ピンクのガーベラで囲まれた霊廟。
この一年、どの家の窓辺にもずっとその花が飾られていた。ゼノア公爵家の窓辺にも。
祭礼が終わり、今日をもってマリアテレジア太王太后陛下の喪が明ける。
そして今、私はギール殿下とふたり、霊廟が見える丘の上にいた。
遠く離れたところからステファンが此方を見ている。
太王太后陛下が眠る霊廟を見つめる、ギール殿下の横顔はとても寂しげだ。
「…………彼女はこの国の支柱だった。でもね、王家の僕らにとっては、皆が思っているよりも、遥かに大きな精神的支柱だったんだ。彼女を喪って、前国王陛下も、私の父も心細いんだ。もちろん私もね」
優しい風が私達を通りすぎていく
此方を向いた殿下の視線が、私を落ち着かなくさせる。
「マリア? 聞いて欲しい。
君と図書室でお互いの夢を話しただろう?
君はとても活き活きしていて、側にいて本当に楽しかった。それに、自分の夢は夢でしかないと諦めきっていた私に、君が息を吹き込んでくれた。あの瞬間から、私の世界はまた色を取り戻したんだ。
マリア、私の側で、夢を叶える私を見ていて欲しい。そして、私も君が夢を叶えるのを見ていたい」
殿下が私の手をとる
「マリア、お願いだ。
君に私の妃になって欲しい」
ギール殿下がそんな気持ちでいたなんて、知らなかった。でも…………
つい、ステファンを見てしまう。
彼の顔がとても苦しげだ。
「ギール殿下、私…………」
「やっぱりそうだろうな。いやいいんだ。ステファンといる時の君を見ていて、初めから答えはわかっていたんだ。それに、テレジア様に似ている君なら、うんと言う筈がないとわかっていたからね」
寂しそうに笑うギール殿下に胸が苦しい
「知っていたかい? テレジア様も君と同じで、先々代の国王陛下を愛するようになるまで、恋愛がわからないという方だったんだよ。
でも先々代だけが、彼女を振り向かせることが出来た」
殿下がステファンの方を見ながら、言葉を紡ぐ。
「太王太后陛下は仕事がとてもお好きだったけれど、それでもずっと、歴史学者になって、あちこち外を自由に飛び廻りたいと願ってもいた………………兄上が、次の子が王女なら、テレジアと名付けるそうだ。だから、彼女を半分だけ自由にしてあげることにするよ」
そう言って私を振り返り、吹っ切ったように明るく笑ってくれた。
「マリア、恋敵だった彼に伝えてくれないか。『ひいおじいさまは5年かかった』そう言って貰えればわかるから」
ギール殿下は、ステファンに向かって手を振り王宮へ戻っていった。
ギール殿下を見届けて、ステファンが私の方に歩いてくる。
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