25.偉大なる国母
数ヵ月後、無理をおして治癒魔法をお使いになって以降、体調を崩していた太王太后陛下が危ないと、王室と関係者が集められた。
前国王陛下夫妻、ギール殿下、アイリス殿下、ジェスキア公爵夫妻、私達の両親も、その子ども達も
即位して日の浅い国王陛下と皇太子は、政務で遅れていた。
陛下の急を知った国民達が、不安げに王宮の外を埋め尽くし、いまも尚、その数は増え続けている。皆、その手にピンク色のガーベラを持ち、陛下の名を呼んでいる。
「ようやくアンジェリカに詫びに行けるわ」
「カイゼル、アンジェは何処なの?」
「シオン、婆を許しておくれ」
とうとう始まった記憶の混乱が、その時が近いことを無理矢理教えてくる。
ステファンが支えてくれなければ、立っていられない
曾祖母様……まだいかないで
「時間がありません!呼んで来ます!」
ジョナスさんが、国王陛下と王太子殿下を呼びにいってくれた。
「悔やみながら逝くなんて、そんなことさせられない、あなた……どうしたらいいの」
お母様がお父様の胸で泣く
「おばあ様、おばあ様のおかげで私は幸せになれました。あなたの孫達もそうです。あなたが……頑張ってくれたから、私達は……こんなに幸せなんです」
お父様も、お母様を支えながら涙を流している。
「そうです、大婆様、僕たちが立派にやっていけるのも大婆様のおかげなのですよ」
「そうですわ、大婆様」
ギール殿下とアイリス殿下が太王太后陛下の手を握っている。
「みんな、ありがとう、いいこね」
「おばあ様!」「大婆様!」
ジョナスさんが、国王陛下と王太子殿下とともに駆け込んで来た。
王太子の腕には、半ヶ月前に生まれたばかりのラファエロ王子が抱かれている。
王太子がラファエロ王子を、そっと陛下の横に寝かせた。
「ほら、大婆様、貴方の玄孫ですよ……」
太王太后陛下がラファエロ王子の方にお顔を向けられた。
王子を見つめて、嬉しそうに微笑んでいらっしゃる。
「私は……なんて幸せなのでしょう」
一筋の涙を溢して、建国以来の才女が目を閉じる。
賢王と讃えられた先々代国王を支え、自らも善政を行い、前国王、現国王の彼等を教え導いた女性。
『偉大な国母』と国民から讃えられた女性の幕がおりた。
喪が明けた翌年
国王陛下は、彼女が生涯、側においたピンク色のガーベラを国花と定めた。




