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20.手紙

※追記

中盤以降、前作の親世代のお話をお読みいただいてない方には通じない「名称」や「人物」「展開」部分が増えていきます。直接、この作品からお読みいただいた場合は意味不明になってしまうと思うので、お詫びします。

 立縞の限界です。

 


 カミラを見送って三月も経った頃、私が一人で司祭館を見に行くと告げると、ステファンとお兄様が同行すると言い張り、宥めるのに骨がおれた。


「遠くから様子を見るだけだから」と説得して、やっと今日、来ることが出来たのだ、護衛はもちろん一緒だけれど。




「姉ちゃん、おっせー」

「うわっ こっち来る!」「逃げろ!」


 カミラが、子ども達と追いかけっこをしている。いまはカミラが鬼なんだわ。


「へっへー こっちだよー」


 ど、どうしよう、こっちに来る!


 あ、護衛が見つかった。


 あぁー


 護衛が私を見たせいで、私まで見つかった。


「姉ちゃん! こっちに怖いおっちゃんと変な姉ちゃんがいるー」


「何ですって? 」

 慌てて子ども達を守ろうとカミラが走って来る。



「……マリア、様?!」

「カミラ、来ちゃった」


 隠れて見ていたことがばれ、間抜けなことしか言えなかった。





 子ども達を護衛に預け、石塀にカミラと並んで腰掛けた。


 何を話せばいいのかわからない……

 ただ黙って足元を見ていた。



「マリア様、本当にごめんなさい…………」


「カミラ……」


「……私、お母様に愛されていると思っていたかったの。憧れはあったけど、会ったこともない父親よりも、お母様が私のすべてだった……伯爵夫人は会ってもくれなかったし。

 …………ずっとお母様以外の母親を知らないまま育ったわ。だから、辛い仕打ちを繰り返すお母様を、憎く思ってしまうことに罪悪感でいっぱいだった。貴女に会った頃はもう、お母様への思慕と憎しみが、混じり合ってしまって辛くて限界だった。だから…………私が苦しいのは、お母様を苦しめた人達のせいで、お母様は悪くないんだと思いたかったんだと思う……」


「あなたはもう誰も憎まなくていいのよ」


「ええ。私、ここに来て良かったと思ってる。司祭様やあの子達に愛されて、愛し返すのに忙しいの。誰かを憎んでいる暇はないわ。

 …………それにもう、私の手を誰かを陥れる為になんて使わない。あの子達を抱き締める為にあるの。あの日の貴女のように」


「……カ……ミラ」


「泣かないで、マリア様。

 私の、優しい従姉妹のマリア。

 あのね、私は今、幸せよ。貴女に会えたら、これだけは言いたかったの。ごめんなさい、それからありがとう」


 泣けて泣けてしょうがない。

 カミラも一緒に泣いていた。



 一頻り泣いて、お互いちょっと恥ずかしくなって笑っていると、


「マリア様、これを」


 護衛が手紙を持ってきた。


 手紙には、ガッディス修道院と王宮の検閲印が捺されている。宛先はカミラで、差出人は罪人としてそこに送られている、カミラの祖母ユリアだった。


 両陛下のカミラへの温情だろう。本来は赦されないところ、特例として許可してくれたのがわかる。


 会ったこともない祖母からの手紙に、不安しかないというカミラに頼まれて、彼女と一緒に読んだ。


 手紙には


 身を守る為とはいえ、マリアの実の祖母、シルビアを貶めて死なせるようなことをすべきでなかった。そんな自分を見て育ち、そのうえ自分がルシェラを同じように育ててしまった。孫のカミラがつらい思いをしたのもすべて自分の罪だと、繰り返し謝罪が綴られていた。


「どうしよう、マリア。私、やっぱりお母様を見捨てられない、お母様は私と同じなんだわ。私だけが幸せになるなんて、やっぱり駄目よ……」


 カミラは手紙を握りしめ泣いた。



 私は、それを王太后陛下に伝えた。



 数日後、王宮からガッディス修道院のユリアへ恩赦が届けられる。


 18年前の裁判で、改心が認められたら減刑をと、フレデリカが王太后へ依頼していたこと。

 シルビアとアンジェリカからの恩赦だということ。

 『複写』による火傷の治療が許されること

 足枷が外されること。


 だが後日、ユリアから王太后陛下へ陳情が届く。


 恩赦への礼と共に、ルシェラよりも先に減刑されるのを望まないという内容の。









お読みいただいてありがとうございます。


因果の終末まで、頑張ります。

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