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19.処遇と新生活

まだ続くんです、はい。

寧ろ、ここからが本番……m(__)m

 


 騒動はすぐに国王陛下の耳にも届いた。



 一週間後の今日、ギール殿下から招かれて私達は王宮の庭園にいる。


「陛下と王太后陛下は、ルシェラにかけた温情が届かなかったことに、肩を落としていたよ」


 あれからすぐカミラは、レイバン伯爵の籍から抜かれ平民に戻された。そして処遇が決まるまでの間、牢への収監を言い渡された。


「言い渡されている間も、虚ろな目で、淡々と頷くだけだったらしい」


「そうですか…………」


「マリア」

 ステファンが慰めるように私の手を握る。


「シェリル嬢は?」


 アイリス殿下を待たせているお兄様が促す。


 シェリル様は騒動の後、姿を見ていない。


「王命に背いてルシェラを助けたうえに、嘘の報告をし貴族籍まで悪用したんだ。当然、レイバン伯爵は爵位没収さ。正妻の実家へ身を寄せるそうだ。

 シェリル嬢も、学園にいられるわけもない。自主退学という形で学園を辞めて、両親についていったよ。

 彼等も欲を出した代償はあまりに大きかったと、身に染みてわかっただろう」



 同時刻、国王陛下に招集された、18年前の関係者であるジェスキア公爵夫妻と両親は、彼女の出自と騒動の理由を聞き、カミラの処遇に悩まされていたらしい。


 結局、私達も喚ばれ、学園内で収まったことと、カミラ自身が行ったのは、下級貴族の子息令嬢達の買収、嫌がらせの捏造と悪評の煽動、暴言だったということで、被害を受けた私の意見が優先され、実刑は免れた。


 彼女に買収された者達も、今回に限りという条件をつけて不問として貰えるという。


 但し、牢から出されたカミラは、母親のルシェラの元に返すことは良しとされず、司祭に預けられることになった。




 カミラが司祭に預けられる日、ギール殿下に頼んで許可をとって貰い、見送りに行くことが出来た。


「カミラッ」


 司祭に連れられていくカミラに呼び掛けたけれど、聞こえていたかどうかはわからない。

 馬車に乗る寸前、一瞬此方を見た気がしたけれど、それもよくわからなかった。


「マリアこっちへ」

「スティ、どうしたの?」


 引き揚げようとしていたのに、一緒に来ていたステファンに、急に物陰に引き込まれた。


「聞こえるだろう?」


 カミラと入れ違いにやって来た、罪人護送用の馬車から、喚き散らす女性の声がする。


「やはりな。マリア、あれがルシェラだろう」


 馬車から下ろされた女性は、確かにカミラによく似ていた。

 今回の元凶となったルシェラが、レイバン領から王都へ護送されて来たのだ。


 ルシェラは腹違いではあっても、母、フレデリカの実の姉で、私の実の伯母でもある。頭ではわかっていたけれど、暴れて始終喚き続け、周囲を誰彼関係なしに罵るその姿は、とても受け入れられない。


 カミラが彼女と会わずに済んで良かったと、心から思った。





 ◇


「カミラ」


「はい、司祭様」


「私はこれから司教様のところにいってくるよ。子ども達を頼めるかい?」


「ええ、もちろんです。おまかせください」


「よろしく頼むよ。君なら安心して任せられる」


 そう言って私の頭をグシャグシャに撫でる。


「司祭様、またっ」


「ワハハ、すまんすまん」


 出かけていく司祭様を見送ると、子ども達のおやつの準備に取り掛かる。


 高齢の司祭様は、とても穏やかで優しい。

 私を小さな子どものように扱うこともあるけれど、その愛情はくすぐったいほど温かくて、私の何処か飢えたところを少しずつ、満たしてくれるのを感じる。


 司祭様のところに来た初めの頃は、部屋に閉じ籠って、夜中に、用意されていた食事をひとりで貪るということを繰り返していた。


 そんな生活を1ヶ月も過ぎた頃、夜だというのに暴動が起きたかのように騒がしくなった。 

 確認しようと扉を開けた途端、後ろに押されて尻もちをついてしまう。


「お腹すいたよ」「まてなーい」「ごはんごはん」


 口々に好き勝手に喋り、一様に空腹を訴えている。


「何?何なの?!」


「だってぇ、おばちゃんがお休みで僕ら、まだ晩ごはん食べてないんだよ? 司祭様がお姉ちゃんにお願いしてあるからって言ったのに。忘れちゃってた? 待っててもお姉ちゃん出て来ないんだもん、お腹すいたー」

「すいたー」「ボクもー」


「私、何も聞いてない……」


「もういいからーごはーん」


 両手を引っ張られ、お尻を押され、司祭館の厨房に連れていかれる。


 まだ作り始めてもいないのに、テーブルに食器を並べる子ども達を見て、何故だか自然に下手なパンケーキを焼き始めていた。




 ほんの2ヶ月前のことなのに、子ども達はもう私を本当の姉として扱う。だから、甘えるのも怒るのも全力だ。しかも、全員性格が違う。

 抱き締めて抱き締められる、そんな子ども達との生活は、毎日がいっぱいいっぱいで、自分のことは何もかも後回し。

 でも、毎日笑ってる。


 空の青さが美しいことにも気がついた。


「ああ、私、幸せなんだわ」


 空を見上げて、あの日以来初めて泣いた。


 母の真実を知った日に、「幸せになって欲しい」と抱き締めてくれた彼女は、今、どうしているだろう。

 牢から出された時も、見送りに来てくれたけれど、私のことなど忘れてしまったかもしれない。ずいぶん酷いことをしたもの。


 同い年の『従姉妹』


 掛け値なしに私の幸せを願ってくれた人。

 生まれて初めて、私を想って抱き締めてくれたのは彼女だった。



 いつか彼女に言えたらいい。



 あのね、マリア。

 私は今、幸せよ










お読みいただいてありがとうございます。


ラブが遠い……

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