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14.止まらない

じめってます。キノコが生えそうです。




後半、サーシャ嬢の目線が入ります。



 手紙の差出人もわからぬまま、更に数日が過ぎ、マリアの周囲は不穏になってきていた。



 そうこうするうちに、シェリル様がステファンと親密な仲だと噂が流れ始める。

 シェリル様がステファンを『スティ』と愛称で呼んでいるという。


「今まで家族とお互いでしか使わなかったのに、シェリル様には許したのね……」


 今さらながら、遠い存在になったのだと愕然としたけれど、周囲は然もありなんと悔しながらも、シェリル様なら仕方がないと、半ば諦めをもって歓迎されていた。


 反対に、ステファンに捨てられたマリアが、第二王子殿下を篭絡しようとしていると、シェリルと引き比べて噂されるようになった。


 公爵家と伯爵家では身分も、立場も大きくかけ離れている。王族の血が濃いゼノア公爵家とジェスキア公爵家なら尚更だ。

 それに伯爵令嬢が公爵家に縁付くのは、家格の違いと妬みから、やもすれば非難と中傷の対象にもなりやすい。


 …………なのに、シェリル様はジェスキア公爵家の嫡男であるステファンとの関係を、当然のように歓迎されて、公爵家令嬢であるはずの私は此処まで貶められてしまう……


 公爵令嬢の地位をもってしても、自分はどうにもならない存在なのかと、最早、マリアは下に下にとしか考えられなくなっていた。


 とても居心地の悪い学園生活の中で、唯一の救いだった学園の図書室どころか、今ではもう、王立図書館にまで行けなくなってしまっている。

 学園の内でも外でも、くちさがない令嬢や子息達がわざわざやってくるせいだ。


 ジェスキアのお祖父様にまで、これ以上迷惑はかけられない


 どうして、こんなことになってしまったのかしら。図書室通いも図書館通いも、ずっと前からのことなのに、急にどうして………


 少ないながらも交流のあった令嬢達も、今では寄り付きもしない。


 噂が両親の耳にも入ったのだろう。段々と口数が減るマリアを心配した両親が、手助けをと言ってくれたが断った。

 公爵家の権威をもってしても、どうにもならないと思い知ってしまったから。




「マリア嬢、私に出来ることはないかい?」


 図書室に現れなくなった私を心配してくれたギール殿下が、とうとう様子を見に来てくれるようになった。


「いいえ殿下、ご心配おかけして申し訳ございません。私は大丈夫です」


 口が裂けても辛いとは言えなかった。

 ギール殿下にまで悪い噂がたつのが怖かった。

 学園で自分を気に懸けてくれるのは、兄の他にはもう、殿下しかいなかったから。


 何度か殿下が来てくれるうち、怖れていたことが起きた。いつもは殿下が高等部へ戻っても、殿下の威光のお陰で僅かながら収まるマリアへの非難が、収まるどころか大きくなっていったのだ。


 何故? 私は何もしていない!何もしていないの! どうしてよ!


「ステファン様が駄目だったから、次は殿下だなんて、はしたないとはお思いにならないのかしら」

「公爵家のご令嬢とは思えない振る舞いですわ」


 とうとう、そんな風に囁かれるようになって、マリアが第二王子を誑かしたという噂まで流れ始めた。


 ああ、もういけない。これ以上は駄目。


 その噂を聞いてしまい、ギール殿下に申し訳なくて申し訳なくて、来ないで欲しいと頼んだ。


「私の為に、どうかお願いします」


 殿下には随分粘られたけれど、そう言うと、何かあればすぐに言うことを条件に、渋々頷いてくれた。


 


 そんな日々が続いた学園の休日、疲れはてたマリアの元に、予告もなくサーシャ様が現れた。


 せっかく来てくださったからと、頑張って会話しようとするけれど、当たり障りのない話を数分しただけで、黙り込んでしまう。


「マリア様、お辛くても学園にいらしてね」


 そんなマリアを見て、サーシャ様はそう言い残して帰って行った。





「サーシャ嬢、少し聞きたいことがある」


 馬車に乗り込もうとしたとき、ジェリス様が私に声をかけてきた。


「学園でマリアがどんな状態なのか、詳しく教えて欲しいんだ」


 学年が違うのでと辞そうとした私に、


「わかる範囲でいい」とジェリス様は引き下がらない。


 ああ、マリア様には今、本当に学園で誰もお味方がいないのだわ

 噂されているような方ではないのに

 臆病で勉強が好きな、ただの泣き虫なのに


 我に返ったサーシャは力強く頷いた。


「私も皆と同罪でしたわ。私はマリア様がどんな方なのか存じておりますのに、噂を放っておきましたの。この借りはオラクル家の名に懸けてお返し致します」


 ジェリス様に、自分が知っていることを洗いざらい話した帰り道。オラクル家に戻る馬車の中でも、自分に出来ることは他にもないかと考え続けていた。


「あの方は!」


 ゼノア家のある方をじっと見つめている、思いもかけない相手に出会う。


「マリア様、私に感謝なさってね」


 サーシャはこれで借りを返せると、その人物の前で馬車を止めた。







どん底まで落ちてしまうと、人は自力では立ち上がれないのです……




お読みいただいてありがとうございました。

茸の生え具合いいかがでしょうか。


次回は、凄い上からドーンなお話です。

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