13.忍び寄る怨嗟
本当に短いですが致し方なく……
学生寮の一室、
彼女はまたひとり、鏡を睨んでいた。
「ルシェラお母様、私、ちゃんと頑張っていてよ。けして奴等を幸せになんかさせないわ。お父様を奪い返してみせる。だから、安心なさって?」
ルシェラ……彼女はマリアの母、フレデリカの実の姉、ルシェラの娘だった。
「レイバン伯爵には感謝しなくちゃ。あいつらに恨みを晴らせる機会をくれたのだもの。私とお母様がゼノア家に戻ったら、たっぷり御礼をしなくちゃね。 そうでしょう?お母様」
母、ルシェラそっくりの金髪を払い、トパーズの瞳を歪ませて、鏡に向けて微笑む。
彼女は正式に伯爵の娘として届けられていた。
王命を受け、ルシェラの監視を任された筈のレイバン伯爵の手によって。
現在はレイバン領である、元ロイド侯爵領から出ることを禁じられたルシェラは、自分が受けた仕打ちを、日毎、娘に聞かせて育てた。
私こそがゼノア公爵夫人なのだと
あなたはこんな伯爵家の令嬢で言い訳がない、王子の伴侶にふさわしい公爵令嬢なのよと
来日も来日も、娘に厳しく令嬢の立ち振舞いや、微笑み方から、視線の配りかたに至るまで全てを練習させ、身につけさせた。
そして、それが完璧だと思った頃、王都の学園への入学を伯爵から母と揃って聞かされる。
「やっぱり、神様は見ていてくださったのよ! これはあいつらに思い知らせてやれという思し召しなのよ!」
狂喜乱舞したルシェラは、自分の代わりに復讐と、地位を取り戻すことを娘に命じて送り出していたのだ。
「ねぇお母様? 引き摺りおろしたら、あいつらをどうしてやろうかしら。きっと今もお父様は騙されていらっしゃるのだわ。おかわいそうに。真実をお教えして差し上げたら、怒り狂って復讐を手伝ってくださるわよね。そして今までの分、私達を可愛がってくださるはずよ。楽しみね、お母様」
ただひとりの独白は、鏡の向こうの彼女だけが微笑んで聞いていた。




