11話【抱きつく後輩】
「そーか、ならあいつらは帰ったんだな」
眠気が消えた涼介は凜華から事情を聞いた。
「はい、それで先輩が寝ちゃってたんで、そのまま帰るのでもよかったんですけど、起きる気配がなかったんで私だけ残ることにしたんですよ」
凜華はホントに迷惑ですと最後に付け足した。
「ホントにサンキューな、今回ばかりはお前が居てくれて助かった」
涼介は感謝した。
「お礼はいいので物か何かで感謝の気持ちを表してください」
そんなことを言う凜華に涼介は可愛げがないと思った。
「はいはい、分かりましたよー」
涼介はとりあえず適当に返事をしておいた。
「もー、絶対何もくれないパターンじゃないですか〜」
「そんなことは無いぞー、とりあえず学校から出ようぜ」
下校時間は18時30分と決まっているためあまり時間はなかった。
しかし、下校時間というのは建前であり、その時間を過ぎても部活をしている部は少なくはない。
「ちょっと待ってくださいよー
なんで待ってた私を置いていくんですかー」
凜華は慌てて教科書などをバックの中に入れた。
「お前の片付けが遅いからだろ」
涼介は凜華のことを扉の前で待った。
やがて片付けが終わり部室から出てきた。
「お待たせしました、帰りましょっ」
そして涼介が扉に鍵を掛けている時に凜華は涼介の腕に抱きついた。
「おい、くっつくな、やりにくい」
凜華は抱きついた腕を離す気はないようでさらに強く抱き締めた。
「お、おい」
涼介は自力で腕を抜こうと思ったが腕を動かすと、凜華の女の子の特徴の一つである大きいな双丘の感触が腕を通して伝わってきた。
かなりの質量があるそれの感触をもっと味わいたいと男子高生らしい素直な感情が湧いてくる。
「あれれ〜先輩どうしたんですかぁ〜
無理やり離さないんですか?」
凜華はその事に気がついたのかニヤニヤしながら涼介をからかい始めた。
「いいから離せよ…」
涼介は言葉では言うが強引には離そうとはしなくなった。
「いえ、学校出るまではこうしていて貰いますからね!」
そう言うと凜華は抱きしめる力をさらに強めた。
「たく……お前は何考えてるかわかんねぇや……」
涼介は仕方ないと割り切るしかなかった。
決して、もっと凜華の胸の感触を味わっていたい訳では無い。
「下駄箱までな、さすがに校門とかだと誰かに見られかねん」
涼介はその提案で妥協することにした。
「先輩友達いないから別にいいじゃないですか」
「ちげぇよ、お前が俺みたいなやつと歩いているところ見られたら困るだろって話だよ、つーか俺だって友達いるわ」
涼介の目には驚いている凜華が写っているが、それが何に対しての驚きなのかは分からなかった。
「先輩友達いたんですね」
凜華は手で笑ってるのを隠していたがバレバレであった。
しかし、涼介の腕を押さえ付ける手が一つになったため、涼介はチャンスと思い透かさず離れようとした。
しかし、運動を得意とはしていない涼介はその腕を直ぐに離すことは出来ず、また両手でがっちりと固定されてしまった。
「先輩力弱いですね」
凜華は笑いながら掴んでいる涼介の腕の二の腕の方を触った。
「筋肉全然ないじゃないですかー、もう少し付けないとダメですよ〜」
涼介は自分の筋力が思ったより衰えすぎている事を実感した。
「うるせぇ、文化部舐めんな、体育でも運動しねぇから」
涼介は文化部を代表していると言わんばかりに胸を張って言った。
「いや、そこは堂々としないでくださいよ、私が襲われてたらどうするんですか?」
「もちろん見捨てる」
涼介は迷わずそう答えた。
「えぇ、ここは何があっても助ける〜とか言うところですよ」
凜華は少女漫画の主人公のようなセリフを期待していたようだが現実でそんなこと言うやつは少ないだろうし、実際それを言う場面も少ないだろう。
「考えてみろ?お前よりも弱い男子が助けられると思うか?無理だろ、なら行かねぇー、つーかめんどくさい、お前助ける義理がない」
涼介はすごく現実的なことを言った。
実際攫われたら警察に任せるべきだろう。
「ロマンがないですねぇ〜」
凜華は涼介につまんない〜というようなことを言った。
「つーか、もう少し早く歩けよただでさえお前がくっついてて歩きにくいって言うのに、歩く速度が違うとさらに歩きにくいわ」
涼介はのんびりと歩く凜華に対して文句を言う。
「あと階段降りたら下駄箱ですから我慢してくださいよ」
歩く速度がいつもの半分以下のため学校を歩くだけでもかなりの時間がかかっている。
「せ、先輩意外とこうして降りる階段って怖いですね…」
凜華はいつもの感じではなく、素の状態で言っているあたり涼介も危機感を感じた。
「お前、絶対に落ちるなよ?俺も落ちるから」
涼介はさすがに心配して声をかけた。
「ふ、フラグですか?」
それ言うと立っちゃうからやめろよと涼介は思いつつ言うのをやめた。
言ったらホントに立ちかねん
しかし、それは杞憂であり何事も無く無事に降りられた。
「おい、着いたぞ、もー離せ」
涼介は約束していた通り下駄箱についたため解放を求めた。
しかし、凜華は離す気配がなかった。
「おい、どうした?」
凜華は下を向いていておりどんな顔を押しているかわかんなかった。
「このままがいいです…」
凜華の甘えるような声が聞こえた。
「お、おい…」
涼介は反応に困ってしまった。
「先輩は嫌…ですか?」
凜華はようやく顔を上げた。
凜華は頬を赤く染めていた。
抱きしめたい
そんな思いが涼介を支配しそうになった。
「べ、別に嫌じゃない……が」
涼介は照れたことを隠すため横を向いた。
「先輩……わかってると思いますが嘘ですよー!!」
凜華は恥ずかしそうな顔は一転、笑顔になった。
「うっぜぇー」
そーだった、こいつはこんなやつなんだ、忘れちゃいけねぇ、
改めてそう思う涼介だった。
涼介は気が付かなかったが、自分の下駄箱に向かう凜華の耳はまだ少し赤みを帯びていた。
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