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もう転生しませんから!  作者: さかなの
建国 編【L.A 2064】
23/53

にくなら、おまかせを(挿絵有)


「……ジェイソン、間違ってもあたしらがミドラスの魔王討伐団だったってこと言うなよ」

「隠し事、むずかしい……」


 口の先を、ツンと突き出してジェイソンはふて腐れていた。確かに、言うなと止めたことより自身の疑問の方が勝ってしまう奴だ。難しいだろう。


「いつかはきっと公になるでしょう、隠し通せるとは思えません」

「あたしだって分かってるさ。だが今は……今だけは、ベネット様の負担になることは減らしたいんだ。戦う事しかできないあたしたちは、ここで一番のお荷物だよ」


 彼らのように畑の耕し方も知らない、草の見わけもつかない、テントの張り方しか分からない。転生を繰り返したって、やってたことはいつも同じだった。


「おや、随分としおらしいじゃないか。だがねドレアスくん、君にはできて彼らにできないことがあるだろう」

「……なんだよ」

「彼らも僕たちも……食べ物がなければ生きていけない。君は畑より得意分野があるじゃないか」

「オレもオレも!」

挿絵(By みてみん)

 落としたままだった視線がようやく上を見る。びょんっと勢いをつけて立ち上がったジェイソンの頭をサイロンはサッとかわした。ベネットの寂しさを、悲しみを見てきたから……自分にできることならなんだってしてやりたい。けれど役に立てる術があまりに足りなすぎる。歯痒くて、自分が不甲斐なくて。でも、まだある。やれることが、残ってる。


「新しい民とベネット様を危険に晒すわけにはいかねぇからな。よっし、狩りに行くぞ!!」

「君たちときたら……まぁ、私もどちらかといえばそちらの方が向いていますね」


 畑を耕してもすぐに食材が手に入るわけではない、体を作るための肉がとれるわけではない。肉は、自分で取りに行かなければ。やることは決まった、と装備を揃えるため立ち上がる。が。……一人多い。


「遠出するならこれ持っていってねぇ」

「どわっ!?きゅっ、急に出てくんな!」


 危うく口から出てはいけない臓器が出てしまうかと思った、とドレアスは胸の間を押さえる。ジェイソンは驚きのあまり椅子ごとひっくり返っていた。


「敵襲コンパスの次はなんですか」

「連絡用トランシーバー」

「……はい?」


 また聞いたことのない言葉の道具を作ったのか……と目を座らせる。手渡されたその道具は四角い金属製の箱のようだった。だが、錠もなければ蓋もない。ただ、コンパスと同じように水晶が埋め込まれていた。


「割と遠いとこまでは連絡とれるんだけど、声だけだからねぇ。改良して映像もつけれるようにするけど、とりあえずはこれで」


 トーマの動きが一瞬固まったことで、危うくその箱を落としかける。それは地面に落ちるか落ちないかのところまでトーマの手の上で踊っていたが、なんとか危機を脱した。


「いやまっ、待ってください……あなた……これが、どれだけまずいものか分かってますか」

「便利でしょお」

「ほんっと呑気な人ですね、今に爆弾なんて造らないでくださいよ」

「分かった、作る」

「あんたねぇ!!」


 分かっているか分かっていないかだと、アオイは前者の方だと信じたい。この技術が世界に出回れば、様々なものが大きく変わってしまう。遠いところまで声だけで連絡がとれる……?長年、様々な学者や研究者が辿り着けなかったものを、あっさり作ってしまった。

 水晶を使って、あるいは風に音を乗せて。それらは実現するあと一歩まで迫っていたのに、その一歩はあまりに遠すぎた。まだ現実的に考えれば、飼い慣らした鳥に手紙をくくりつけるか、狼煙で合図を送るというもの。だが、そのどれもが時間を必要とするものだった。


「それが軍に渡れば、戦争に使われることは確実なのだよ」


 戦争において、勝敗を左右するのは情報の早さ。早馬でも、鳥でも、見つかって殺されてしまえばそこで情報は途切れてしまう。これは、今までの戦争の常識を覆す一石だ。

 だからこそ、アオイはこの道具が如何に危険なものかを自分で理解していて、トーマたちを信じて渡したのだと。


「そういうことです、それにあの魔術陣……たとえ百年生きたエルフ族が全魔力を使っても発動できる範囲ではありません。生命にも関わる、それを……」


「発動したのは一個だけなんだけどね」

「……はぁ?」


 敵襲コンパス、連絡用トランシーバー、未知の魔術、そしてあの大量の巨大な魔術陣。どれを問いただしても、まともな答えは返ってこないだろう。そして、やはり理解不能の答えが飛び出る。


「歯車の要領だよ、一つの魔術陣に対して四つを連結させる。それを繰り返すんだ。確かに中心の一つにそこそこ莫大な魔力は必要だったけど、ベネットの暴走した魔力がなくても俺だけで事足りる量だった。全部が回れば、一番外側の魔術陣の軸を中心に繋げればどこかが欠けない限り魔術は発動し続ける」


「……わりぃ、途中から分かんなくなった……」

「…………ふァッ」

「ジェイソン……寝ないでください」


 ドレアスは恐らく一つの魔術陣に対して四つの部分くらいまでは聞いていただろう。ジェイソンはしばらく前から鼻に風船がくっついていた。

 この男は……あの巨大な魔術陣が、自分だけで発動できたものだとぬかしているのだ。そこそこ莫大な魔力……?魔王であるベネットが三十年溜めた魔力と同等のものを……そこそこ……?

 そして、発動し続けているとも聞こえた。あれは、デントロータスを復活させるものではなかったのか。アオイは、予見しているようで何も予見などしていなかった。ベネットの魔力が暴走することも、デントロータスの出現も、アオイにとっては予想外のことであってもそれすら利用した。


「理屈は、大体分かりました」

「ほんとにぃ?」

「腹立ちますねあなた……」


 強がりで適当に言ったことはすぐにバレてしまった。


「そのハグルマとやらの魔術で君は何をしたのかな」

「結界だよ、敵襲コンパスも改良してマップにしておくね。あ、そのトランシーバー、こっちにある母機は結界内じゃなきゃ使えないからね。子機になってるそっちはどこにいても使えるんだけど」


 また何か訳の分からないことを言い始めた……とトーマはついに頭を両手でおさえる。ドレアスは情報量の過負荷で気絶しかけていた。つまり……アオイはこの城周辺の地図と敵襲コンパスを組み合わせて、敵がくる方角のみならず位置までも特定できるものを作ろうとしている。そしてこの金属の箱……もとい、連絡用トランシーバーは……子機?子機ということは、母機があって、つまり子機を増やせるということなのか、ともはや言葉に出すこともできなくなっていた。


「二つないの?」

「作っておくね」

「やったぁ」


 この技術の危険性が全く分かっていないジェイソンは、アオイに二台目をおねだりしていたことをトーマとドレアスは知らない。


「ベネット様、私たちは少し森まで狩りに行ってきます」


 畑仕事のために、召し物を簡素なものに変え、後ろ髪を高く結い上げる姿はあまりに新鮮でトーマは瞬きすら惜しみながら目に焼き付けていた。


「分かりました、さっきアオイさんがトラン?バ……」

「トランシーバーですね」

「えへへ……それの説明をして下さったので。夕方になる前には帰ってきてくださいね」


 なんて言いにくい言葉の道具なんだ、改名しろ。しかしはにかむベネット様が最高に可愛い。夕方と言わずお昼に帰ってきますね!! この全てを言わずに我慢した自分を褒めたい、とトーマは震える。大体なにを考えているか察したドレアスは後ろでその様子を見ながらどん引いていた。


「ま、早速これ使って帰るときに連絡するぜ」

「サイロンは、残して……っおきましょうか……?」


 本当は自分が残りたいんだろうなぁ、と察してはやるがやはり気持ち悪いのでドレアスは放っておくことに決める。


「アオイさんがいるので大丈夫です!」


 そしてとんでもない爆弾が投下された。今、トーマの中でものすごい大爆発が起きただろう。怒りとか、もはやそういうものを通り越して虚無だろう。だが特に可哀想だとも思わなかった。


「いっぱいお肉も必要になるでしょうし、とても助かります。やっぱり皆さんも魔物や獣に怯える暮らしだったそうで……狩りは難しいと言っていたんです」

「たくさんっ……狩ってきますからねっ……」


 よく生き延びた……ドレアスは心の中でトーマを称える。

 出かける直前、アオイを睨みさえしなければ殴らなかったのに……と残念に思った。


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