約束
大学の学期末が終わり休みにはいる。
「終わった。しかし相変わらずだよなあんな簡単なのをギリギリとは」
光一はオタクだが自分の興味があることには努力して高得点を取っており、反対に私は赤点は取らない平均点からすれば興味のない科目は私以上にギリギリである。
「平均ならほとんど変わらないだろう」
そう言いながらタンデムで何時ものように先輩の家に向かう、途中バイト代の入金があったのでまとめて下ろして到着をした。
「ぐわ、少なすぎる」
波戸が何時ものように封筒の諭吉さんを数えて予想以上に少なかった様で大袈裟に悶えてる。
「光一が170%で私も同じ、30%しかコミケでしなかったからね二人とも」
そう言うと波戸は転がりながら、
「あれもこれも来月までお預けか」
芝居がかった様子で頭を抱えるのを光一が、
「先月も先々月も言ってたよねそれ」
とどめ指した言葉だがそれを聞いてけろっとして、
「まあいいか週末のバイト頑張ろっと」
そう言うと録画していたアニメを見始めウンウンと画面をみて楽しそうにしている。
「いい加減週末にバイトよりこれの方が割りが良いて言うの気がつかないのかね、言ってるけど」
私が光一に言うと、
「波戸だから」
そう言って今月分の打ち込みを二人でやり始めた。
「飯は、給料出たから俺作る」
山田が起きてきて給料の中身も見ずに買い物に出かける。
実家は中華料理屋なのだが継ぐきは無いのかここの住人であるが料理は好きらしく給料日には何かつくって振る舞ってくれていた。
「時間があるからXXの整備してる」
私は波戸とアニメを見始めた光一に言うとoil缶と廃油用の箱を持って外に出る。
休みに遠出をしようと思っているのでoil交換等の整備をし始めた。
「ブレーキパットも交換した方がいいよな、タイヤは戻ったらで良いか」
部品代などを頭の中で考え諭吉が飛んでいく、小さい方がランニングコストは半分以下になるだろうが長距離を走るときもだけど大型を操る楽しみを覚えたのでバイトを頑張ろうと思いながら部屋に戻った。
「今日は酢豚でござい」
何時もの特大の大皿に何人まえだと言いたくなるような山盛りの酢豚を前に一斉に箸を伸ばすと波戸が、
「パイナップル、パイナップル、邪道だ」
そう叫ぶと実家ではこうつくると山田は言い私と光一も気にせず食べていく、
「食べなきゃ良いだけ」
光一はボソッと言うと大袈裟にOrzと言う風に両手を床につく、そんなことをしているとテレビで恐い話が始まりピタッと止めて見始めた。
「これは夜トイレに行けない」
光一は怖がり別に部屋に逃げ出し3人で見続けていると、話は作り話だろうと思いながら見ていると携帯が不意に鳴った。
「出たら向こうから誘われるような声でそれに答えると引き込まれるぞ」
私の携帯では登録されてない番号が表示されているのを波戸が呟く、脅しているだけとわかってはいるものの夜のこの時間にかけてくるのにためらいながら電話をとった。
耳からは声は聞こえてこず、こちらも少しだけ恐いのでもしもしも言わずに音を聞いていると悲鳴と共に、
「助けて、お願い連れていかれちゃうのこのままだと」
そう言われてチビりそうになるのを我慢して、どちら様と聞くと大学の友人の彼女で部室にいると言い、電話番号は彼氏から聞いたと言い本人はと聞くと用事があると断られたらしい、ため息をつきながら夜の学校に向かうと言うと誰もがわざと叫びながら布団へ潜り込んでしまいXXで学校に向かった。
学校に到着して研究棟以外は真っ暗で音もなく部室へ慎重に向かう、校舎を曲がって部室に行こうとしたがやなものを見てしまう。
多分通り道にもなっているのか新旧様々な年代性別の幽霊が列をなして部室棟へと向かっていた。
何かをされるかと思ったが興味がある事がそっちにあるようで関係なく吸い込まれていく、
「ここ入るのやだな」
思わず口に出してしまうほどあふれており、物理的には入れるのだが精神的にきつく電話をかける。
「ごめん、そこから自分達で出れないかな、目の前にいるけど入れない」
そう言うと後ろから悲鳴とすすり泣く声や大きく破裂する音等カオスと聞いててわかる状態に、
「早く来てよ、お願い」
そう叫ばれ気合いを入れて剣を取り出すと鞘を抜いてみた。
「抜けた。抜けた理由がわからない」
抜けなければまわれ右も考えたが抜けたので向かいながらどうするか考える。
もし切れたとしてもこれだけの量は無理だしと思いながら呟く、
「高天ヶ原に...」
祝詞を呟いてみた。
「失敗した」
呟いた瞬間こちらに一斉に振り向いて動き始める。
悲鳴を出したいが祝詞を唱えるのが止まらずにおりどうするかと太刀を見ると、
”そのまままっすぐだしなさい”
声が響きあわてて両手で前につき出すとそこに幽霊が飛び込んできた。
触れた瞬間に幽霊が光り空に吸い込まれていくように消えていく、触れた瞬間は苦悶の表情になるがすぐさま幸せな顔になり空へと次々と吸い込まれていくと静けさを取り戻しつつあった。
これで終わりかと思ったが真打ちがまだ残っているらしく重いものが感じられていると車両の音が後ろから聞こえてきたのであわてて隠れる。
黒いSUVが構内とは思えない速度でとばして部室棟の前に止まると運転席から短髪の男が、助手席から黒髪の長い女性がおりてくる。
スーツに太刀を持ち周囲を確認して中へと入ったので面倒はごめんとばかりにXXで自宅に戻った。
「声を聞いたか、じいさんや他のご先祖様の」
父親に今日の事を言うと嬉しそうに酒で満たしたお猪口で天叢雲剣に礼を言うと飲み干し、
「それとそのスーツの連中はそのうちわかるだろう、ねえちゃんの方は可愛いだろ」
そう言うと今日は気持ち良く寝れるぞと寝てしまった。
翌日大学に行くと朝から大騒ぎかと思ったがそうでもない、部室棟はガス漏れのため入室禁止と張り紙がされていただけである。
講義を受け光一と学食で昼を済ませた後に講義を受けて帰ろうかと声をかけていると門の前に昨日のSUVらしい車が停まっていると噂話が聞こえてくる。
「面倒がやだから裏から出るぞ」
光一も昨日の今日で何か察したらしく頷くとバイクを押して歩行者用の門からでて帰ることにした。
「あれ」
光一が言うので振り向くと黒いSUVが向こうから来るのが見えたのであわてて出発する。
私が逃げたのを見て加速させるが渋滞では2輪にかなわず振り切ると何時ものように先輩宅に逃げ込んだ。
「あれって昨晩のあれ」
光一は顔を青くしながら言うのを頷くと寝るわと布団部屋に転がり込む、
「何々、黒髪の美少女に狙われてる、ふむふむ」
早速向こうで3人が話しているのをほっておきバイトの打ち込みをしながら昨日の事を考える。
こっくりさんていうのは人間の思い込みで行われていると言うのが一般的であり解明されているはず、しかし今回のは本当にこっくりさんなのかはたまた別の何かを引き寄せたのかわからないがあれだけの霊を呼び寄せてしまったと言うこと、
「戸波、こっくりさんで何か知ってるかい」
言わなきゃよかったと後悔させる目の輝きで知識をひろうする。
いつの間にか横に来ていた山田から趣味をからめて話をして脱線するなと戸波に突っ込みを入れ笑いながら頷きまた脱線をする。
光一が布団部屋から出てきて、
「いい加減にしろよ寝れなくなるだろう」
そう言うとようやく終わり自宅に戻ろうと前まで来たがあのSUVが停まっているのを見つけてまわれ右で戻った。
「この美少女アニメ飯3杯いけるいける」
出戻りをすると戸波が夕食を食べながら見ており、テレビを見ると美少女の首が飛ぶ画面で思わず凍りつき、
「これ子供見たら泣くぞ、トラウマに」
思わず言うと、
「現実は厳しいのだよ、人生負けることもあると身をもって教えてくれたのだよ」
自画自賛で自分の発言に頷き、
「死んだら人生おしまいなんだけど」
と言う声はスルーらしく嬉しそうにテレビを見ていた。
さっさと寝ようと思っていると着信があり電話に出ると昨日かかってきた彼女の彼氏である友人、
「勝手に人の電話教えるな」
出るなり言うと、
「悪かった。だから助けてくれ叫び声や呻き声が聞こえて変なのがいるんだ」
今日は講義で見なかったなとおもっていると悲鳴を圧し殺した小さな声で言うので場所を聞くと何故か港の倉庫だと、すぐに支度をして光一に聞くが布団の奥へと潜り込んでいき一人で出かけた。
環状道路を抜けて港へ出る。
倉庫が立ち並ぶ一画はゲートで夜は封鎖されているのだがどうやらこの中のひとつなのでゲート横の警備員詰め所の横を見つからないように通り抜け目的の倉庫に到着した。
やに静かな状況に剣を取り出し入ろうとすると着信がある。
「お前今何処にいるんだ」
電話に出ると父親であり何時ものおどけた感じではない、
「友人から助けを求められて海岸の倉庫前にいるけど」
そう言いながらドアが開いたので中へとはいる。
「中にはいるな、応援がいくまで待ってろ」
ドアがしまりもう入ったと言う前に携帯が雑音と共に何かが聞こえてくる。
失敗したかなと思いながら天叢雲剣をベルトにさしてゆっくりと倉庫の中を進む、静かすぎるほどの静けさであの電話は何だろうと思っていると、
「ふふふ、ようやく来たわね、待っていたわ」
携帯を切ったはずだが女のこもった声が聞こえ背筋が寒くなる。
それを無視して友人に連絡をとると奥で着信の音が鳴ったので向かった。
搬入用エレベーターの前に数人の影が見えたので声をかける。
友人と同じ大学の同級生であり私を見ると顔をひきつらせ、
「遅かったじゃないか、お待ちだぞ」
取り憑かれたとか言う感じではなく私を見ての表情と言うのに違和感を感じながら、
「誰が待ってると言うか、恐怖で従ったのか」
天叢雲剣が熱くなり問いかけると口をひきつらせ、
「恐くてたまらなかったんだよ、こっくりさんに従えば何もしてこないから」
恐怖から逃げたいがためにと言うことで、
「それ以上近寄るな、斬れちゃうかもよ」
わざと脅すように少し笑いながら抜く、
「この中は日の光も月の光も届くまい、私の事をとらえられずにゆっくりと吸いとってやろう」
そう言われて気配は微塵にないが怖いと言う感覚はないので1つ聞いてみる。
「こっくりさん、エンジェル...」
いくつかの名前をあげながら最後に、
「本人もわかってない集合体と言うことかな 神のお使いよりも行き場の無い連中のと言うことかな」
そう言うと一瞬沈黙のあと怨念の塊が倉庫の壁からしみだしてきて友人達は悲鳴をあげようとしているがあまりの怨念に声も出せずに倒れた。
どんどん重圧が高まるが天叢雲剣で落ち着いている。
金切り声やおどろおどろした声、泣き叫ぶ声や悲鳴が響き何百何千と言う念が倉庫を満たしており、
「何もできまい、お前の無力を後悔し怨め」
次々と心を揺さぶる言葉を吐き続け友人達もこれにさらされたと言うことで頷ける。
「お楽しみのところ悪いんだけど、天叢雲剣を持ってればそれ以外は何もできないと思うけど図星かな」
一瞬だけ静けさを取り戻しすぐに騒ぎ出す。
「それと申し訳ないけど太陽の光も月の光も無いけどこれなんかどうかな」
ポケットから取り出すと電源をONにして剣に当てると光りは吸い込まれ放射されるあ。
「からだが焼ける。消える消えたくない、怨んでやる」
光り当たった瞬間蒸発するように消えていく、ゆっくりと動きながら乱反射する光りに眩しさを覚えながらこっくりさんと呼ばれた物が浮かび上がる。
「熱いがそれだけだ」
表面が焼かれて蒸発するがどれだけの死念体と言うものが集まったのかゆっくりとだが近づいてくる。
斬りつけてどうにかなるとは経験不足からも思えずさらに、
「今です、これならこいつは動けません」
友人が足首に必死にかじりついて薄ら笑いを始めた。
体重を友人の上からかければ楽に脱出できるが腹を決めてこっくりさんと正対した。
「へその下、丹田だったかな」
大きく天叢雲剣をふりかぶり構える。
「人間の中心には普段使うことの無い力がある。それを意識すればこうもできる」
じいちゃんの話と刀を振り上げる姿、それを大きな岩に振り下ろしてしまう。
岩はしばらくすると斜めにずれて落ちじいちゃんは私にウィンクして親父に話しかけている。
「斬鉄剣だ、すごい」
そう言うと笑って私の頭に手をのせてくしゃくしゃにしてくれた。
自分の沸き起こる力が天叢雲剣に流れていく、心地よい気持ちでもっともっとと心から欲する。
「これで終わりだ」
体ここにあらずと言う感覚でゆっくりと近づくこっくりさんを斬りつけた。
意識が吸い込まれていきながらじいちゃんが笑いその後ろに似た人達が現れ怒っていたり頷いたり最後に小さなふっくらとした顔の子供が出てきて私に抱きつき消えた。
「気がついたか」
めをあけると夜明けの紫色の空と父親がのぞきこんでおり珍しいほっとした顔で言う、
「しかしなどれだけ何だよ」
そう言われて辺りを見回して驚く、倉庫も跡形もなく消え去り眺めのよい東京湾が
見えており見とれていると、
「すみません、いろいろ話を聞かなければなりませんが、お願いできますか」
「そうだそうだ、いやーうちのバカ息子がこんなにして申し訳ない」
振り返るとあのSUVの黒のスーツを着た同年代か少し上の男がたっており父親の知り合いのようで何か話をしており私にも、
「ここにいたのはこっくりさんに間違いないな」
「そこにいる友人がそう言っていただけでわかりません」
そう言うと精神が崩壊してしまった友人をみてくろづくめの男達に指示をして連れていった。
「周辺にひとっこひとりきれいに消えてしまってみたい」
助手席に乗っていた長い黒髪の女性がやって来て呆れた様に言うと、
「世界中の何処かで毎日こっくりさんをしている。その中のほとんどは気にすることもない稚拙なのだが」
スーツを着た男が手短に説明をしてくれる。
「1人その中で該当者がいれば呼び寄せてしまうその総称をこっくりさんと言うのだ」
「一番の勘違いは勝手に呼んで帰ってくださいと言われて帰るわけなかろう、そのまま残留して精神的に弱っているもを引き込もうとするか、何も感じない者に影響を与えて、運が悪かったと言う現象を連発する」
「それなら影響を受けないのでは」
「元々感じないのであればだが、有りすぎて鈍感にか無視をしているだけでその方が始末が終えない、多分その若者は後者だろうな」
そういえば実家の前に廃院となった産婦人科があり子供の頃は悩まされたんだと酒の席で言ったのを思い出していると父親が剣儀をいつ覚えたのかと聞かれ記憶でじいちゃんにと言うと頭を抱え、
「思い出した。あん時のを覚えていたか、地は争えんと言うことか」
そう言うと自宅に戻るぞと言うのでXXに乗って戻った。