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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第1章 出逢いと始まり ―動き出す物語―
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1.迷子たち① ダンジョンに出会いを求める時は慎重さも忘れずに

「ダンジョンに出会いを求めるのは間違ってるだろうか……否! 間違っていない! なぜなら、ダンジョンにはロマンとの出会いがありふれているのだから!」


「唐突に何言ってんの? ていうか大声出すなようるせえから」


 ダンジョン内を探索していると、晃太が某小説のタイトルみたいなことを突然叫ぶ。

 意味がわからない。

 おまけにこの名前のまだないダンジョン、洞窟になっているから晃太の叫びがこだまして、余計に耳に響く。


「いや、思いついたから何となく言ってみただけ」

「……はあ」


 晃太は、その見た目と性格から、結構モテるが、このバカな感じのおかげで最終的にはまだ誰とも付き合ったことがない。

 というか、このバカな感じがいいっていう女子もいるらしいが、生憎なことに、晃太はバカ+鈍感の属性も持ってるので相手の明らかな好意にすら気づかないというのも中学時代はざらだった。

 どこのラノベ主人公だよって感じだ。


「ところで晃太、お前が大声出したおかげで、さっきからモンスターの気配がすごい勢いでこっちに向かって来てんだけど」


 俺は、ある程度ではあるが周囲の敵意みたいなものを感じることが出来る。

 晃太(バカ)が大声を出してから、洞窟内の空気の流れが変わり、ピリピリとした獰猛な気配がいくつかこちらに向かって来ている。


「よーし、迎え撃つぞ!南!」


 モンスターを呼んだ張本人は張り切って戦闘体勢に入った。

 本来であれば、まだ調査中のダンジョンだ。

 奥にどんな強さのモンスターがいるかわからない。

 ダンジョンを調査するのは、ギルドから依頼された高ランクの強くて信頼できる冒険者というのが基本なので、安全だと判断され俺たちみたいな低ランクの冒険者が行ってもいいという許可場所には強いモンスターは出ないと言っていい。

 仮に、調査中の区域に強いモンスターがいたとしても、こっちに逃がすということは確率的にはかなり低い。

 しかし、だからと言って、絶対に安全だという保証はどこにもないから、慎重に探索をしてモンスターとの遭遇、戦闘はなるべく避けたいところだったのだ。

 そう、本来ならば。


「はあ……」


 俺も仕方なく戦闘体勢に入る。

 ただし、万が一に俺たちの手に負えないモンスターが出てきた場合、すぐに逃げれるように。

 そして、だんだんと、足音がこちらに近づきその姿を現す。


「ロックドッグか……」


 大型犬くらいの体型、兜と鎧のように全身を覆っている岩の皮膚、そして赤く光る鋭い目つき……。

 それは、ロックドッグと呼ばれる洞窟のダンジョンなんかによくいるモンスターだった。

 性格は獰猛で、人や動物を見かけると見境なく襲って来るやつで、こいつに突然襲われて、大怪我を負う冒険者も多いんだとか。

 でも、それはあくまで突然襲われた時の話である。

 警戒していれば、こいつの対処は難しくない。

 ロックドッグは、俺たちの数メートル手前で止まり、一瞬こっちをしてからすぐに牙を剥き出しにして襲ってきた。


 ―――って俺の方に来んのかよ!


「くそっ!」


 ロックドッグの攻撃を後ろに跳んで避けながら、俺は右手に風を纏わせた。

 そして、手をロックドッグの方にかざす。


「“疾風波(しっぷうは)”!」


 着地と同時に、手に纏わせていた風を衝撃波としてロックドッグに目掛けて放つ。

 急な突風の衝撃波に煽られたロックドッグは、そのまま数メートル先に吹っ飛ばされて、そのまま横向けに倒れこみ、心臓部分にあるエナジーコアが見えた。


「晃太!」

「わかってるって!」


 晃太は俺が何を言いたいのかわかっていたのかのように、既に攻撃体勢に入っていた。


「稲妻の如く敵を穿て! “サンダーアロー”!」


 詠唱を唱えた後、晃太のかざした手のひらから、雷属性の矢の魔法が放たれ、ロックドッグのエナジーコアを貫いた。


「ガアアアアアアアアアア!!!」


 ロックドッグは絶叫した後、肉体が黒い霧状になってエナジーコアを残してそのまま消滅した。


 エナジーコアというのは、モンスターが持っている心臓のようなもので、このエナジーコアを壊すとモンスターは消滅し、倒したことになる。

 ちなみにだが、エナジーコア以外のところを攻撃しても、怯ませたり損傷させたりすることはできるが、エナジーコアを壊さない限り、時間が経つと回復してしまうため、注意が必要である。


「よし、エナジーコアゲットだな」


 晃太はそう言って、エナジーコアを腰のポーチにしまった。


「さ、進もうぜ、南」


 そして、晃太は何事もなかったかのように前に進もうとしていた。


「おい待てこら。お前はもうちょっと慎重に行くってことを―――」


 そこまで言いかけたときだった。

 無数の殺気立った視線が俺と晃太の方を見ているのを感じる。


 ……ああ、そういえば、ロックドッグは自分のピンチとかになると遠吠えで仲間を呼ぶとかって言ってたっけっか……。


 俺と晃太が視線の感じる方を向くと、赤く光った目がこちらを見ていた。


「晃太……わかってるな……」

「おう、もちろん、戦うんだよな!」

「ちげーよバカ……」


 何なのこいつ? 戦闘狂か何かなの?


『ガルルルルルァァァァァ!!!!』


「逃げるんだよ!」

「あ、おい南!」


 今さっき倒したロックドッグの仲間たちが思いきり襲いかかってきたので俺はダッシュして逃げた。

 晃太もさすがに数の多さに引けたらしく、俺のあとを追うように逃げる。

 さすがに十何体も相手はできねーよ!


「「アアアアアアアアア!!」」


 俺と晃太はそれはもう必死になって逃げた。

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