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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
Prologue ―運命の日―
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そして始まる

「んー……」


 現在、俺はギルドに到着し晃太を待ちながら、ギルドの壁に貼ってある地図を眺めていた。

 地図には、この地域周辺の土地の名前やダンジョンの場所が記されている。

 そもそも、ダンジョンとは何なのか。

 それについては、まだ完全に解明されてはいない。

 わかっていることと言えば、空間の歪みというのが発生し、今まで何でもなかった場所が突如としてダンジョン化するということ、ダンジョン化したところにはモンスターが出現するようになるということ、……そして、ごく稀に宝類なんかが潜んでいるってところくらいか。


「あれ? 日向君?」

「あ、水瀬(みなせ)さん」


 声を掛けられたので、その方向を向くと、資料らしき紙を大量に持った水瀬さんがいた。

 水瀬さんは、このギルドの受付と事務として働いているお姉さんだ。

 黒のショートカットがよく似合うかわいらしい人で、人柄も良く、ギルド内ではかなり人気のある人……らしい。

 噂では、水瀬さんのことを狙ってる冒険者がたくさんいるとかいないとか。

 まあ、他の受付の人から聞いた話だけど。

 水瀬さんは、俺と晃太がギルド登録したときに担当してくれた人で、俺たちがギルドに登録したばかりの高校生ということで何かと気に掛けてくれる。


「今日って入学式じゃなかったっけ?」

「もう終わりました」

「あら。じゃあ、今日もダンジョン行くの?」

「はい。まあ、どこのダンジョン行くのかはまだ決めてないですけど」

「おーい、南ー」


 すると、晃太が声を掛けてきてやってきた。


「あれ、水瀬さん。こんにちはー」

「こんにちは結城君。今日も元気だね」

「それだけが晃太の取り柄なんで」

「おい、それだけってどういう意味だよ南」

「そういう意味だよ」

「……ふふっ。やっぱり仲いいわね二人」


 水瀬さんは俺たちのやり取りを聞いて微笑んでいた。

 まるで、子どもを見るような優しい顔で。

 というか、完全に子ども扱いって感じ。

 と言っても水瀬さんって大学卒業してからまだ2年らしいし、年齢的に俺たちは弟とかそういう感覚なんだろう、多分。


「そうそう。日向君、まだどこのダンジョン行くのか決めてないって言ってたよね?」

「はい」

「なら、最近見つかったここのダンジョンはどう?」


 水瀬さんはそう言って、俺に持ってた資料の一部を渡してきた。

 資料には、ダンジョンの位置や環境、モンスターの強さなどが細かく記されていた。

 場所などに目を通していくと、あることが思い浮かんだ。


「水瀬さん、これって今朝のニュースになってた新しいダンジョンじゃないですか?」

「それなら俺も見た。SNSのニュース記事に載ってたやつだろ?」


 隣で顔を覗かせて資料を読んでいた晃太が思い出したような顔をする。

 多分、俺が見たやつと同じ記事だろう。


「ああ。でも、見つかったばかりだしここってまだ調査中なんじゃ……」


 資料には、ダンジョンを入ってすぐ周辺のところの情報しか記されておらず、中腹以降の情報は何も書かれていなかった。

 そんなところに、ましてやギルドに入りたての俺たちのような冒険者が行ってもいいんだろうか?

 そんなことを考えていると、水瀬さんは俺が言いたいことを察してるかのようにニコニコと笑っていた。


「調査の終わってるところは入っても問題ないし、モンスターも君たちが入っても大丈夫なような、弱いのしかいないから。さすがにまだ調査中のところは危険だし、調査員の人たちの邪魔になっちゃうかもだけど」

「だってよ。南、別にいいんじゃないか?」

「んー……」


 別に行きたいダンジョンがあったわけじゃないし、あまり奥に行かなければ大丈夫っぽいし……。


「そうだな。今日はここ行ってみるか。えーと、ダンジョン名は……まだついてないのか」


 通常、ダンジョンには一つ一つ名前がつけられる。

 この町周辺のダンジョンであれば、森のダンジョンだったら迷いの森とか、山のダンジョンだったら星屑の山とか。

 そこの土地の特徴をそのままダンジョン名としてつけているらしい。


「そうなの。何せ出現したばかりだからね。多分、調査が終われば名前もつくんだろうけど……」

「今のところは名無しのダンジョンってことなのか……」

「おお、それ、何かワクワクすんな南!」


 晃太はダンジョンに名前がまだないところに何故かわくわくしている。

 調査済みの範囲なら、晃太が思ってるようなわくわくするところはあまり無さそうだけど。


「よし、じゃあとりあえず行くか」

「おう」

「水瀬さん、何かありがとうございます」

「いいのいいの。冒険者をサポートするのが私たちの仕事なんだから」


 水瀬さんはそう言ってにこっと笑った。

 ……やっぱりこの人かわいいな。


「あ、そうそう。日向君たち以外にも何人かダンジョンに行ってる人たちもいるから、冒険者同士のマナーは守ってね」

「はい」

「はーい」


 俺と晃太は返事をして、ダンジョンへ向けて出発した。


 ……まだ調査中のダンジョンにそんな何人もずかずかと足を踏み入れてもいいのかっていう疑問はあるが、ギルドの職員が大丈夫って言うんだし大丈夫なんだろう。


 きっと。

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