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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
Prologue ―運命の日―
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天才魔法少女

 クラスでの自己紹介タイムが終わった後、体育館で入学式が行われると、何事もなく式は終わり現在は教室に戻っていた。

 強いて言うなら、入学式の式辞を神崎が読んでいたぐらいか。

 これも別に驚くことではない。

 理由は簡単。

 魔法を使うということはその魔法の理、つまり、使用する魔法の特性を理解するところから始まる。

 言ってしまえば、頭がそれなりに良くないといけない。

 天才魔法少女と騒がれた神崎は、俺の記憶が正しければ六属性の魔法が使えるとどっかの記事だかで乗っていた。

 そもそもだが、一般的に魔導士が扱う属性は3つ程度とされている。

 ギルドに所属する高ランクの魔導士でも、扱う属性は4つか5つらしい。

 何故なら、それ以上多くの属性魔法を覚えようとすると、自身の魔力が多数の属性魔法を覚えるのを大きな負担になると判断し、拒否してしまうからだそうだ。

 だが神崎は、まだギルドに入れるようになったばかりなのにも関わらず、6属性もの魔法を扱える。

 通常、1つの属性魔法を覚えるためには、その属性の性質や効果などを把握していなければ、習得することができない。

 要は、自分の使う属性魔法についての知識が必要なのである。

 それなのにも関わらず、6属性の魔法を操ることができるらしい神崎はとてつもなく頭が良く、式辞を呼んでても驚かない、寧ろ当たり前と言えば当たり前の話なのである。

 というところで、現在。

 教室ではホームルームが行われており、六花先生が教壇の上で話していた。


「―――ということで、明日は午前はロングホームルームの後、部活紹介、身体測定を行い、午後からは各々のアビリティの把握の意味も含めたレクリエーションをやるので体調を整えておくように。それと、これは大事なことだから最初のうちに言っておくが、ギルドへの登録は早めに済ませておくように。課外実習や実技試験でダンジョンに出向くこともあるからな。……まあ、アビリティ科の生徒ならその心配はあまりしてないが」


 授業がないのはいいけど、部活紹介に身体測定にレクリエーションってイベント詰め込みすぎだろ。どういう予定の組み方してんだこの学校。


「というわけで、今日はこれで終わりだが、くれぐれも問題を起こさないようにな。以上だ」


 六花先生がそう言うと、号令を掛け、ホームルームが終わると、六花先生は、ささっと教室を出た。

 なんというか、今日だけの印象だと、無駄のないてきぱきとした先生だなあの人。


「なあなあ」


 帰り支度をしようとすると、前に座っていた学がこっちに振り返り話しかけてきた。


「ん?」

「南はこのあとどうすんだ?」

「1回家帰って昼ご飯食ったらギルド行く予定」

「お? 登録か?」

「いや、登録はもうしてるから軽くダンジョンに潜りに行ってくる」

「もう登録してんのか。早いな」

「そうか? そういう学はどうなんだ?」

「俺はまだ。春休みはめいいっぱい遊んでおきたかったし、登録は入学後でもいいかなって」

「そっか。そっちは午後どうすんだ?」

「んー。特に決めてないんだよな。ギルド登録行こうとも考えたけど、せっかく午前だけで終わったし、とりあえず家でぐうたらしながら考えるって感じだな」

「何だそりゃ」


 学の適当さに思わず少し笑ってしまった。

 いつの間に帰り支度していたのか、学は「とりあえずまた明日なー」と言って帰っていった。


 学が教室からいなくなったあと、俺も帰り支度を進め、席を立ち上がった。

 教室内は、ガヤガヤとしていて相変わらず神崎の席の周りには人だかりができていた。


 ちなみにだが、俺の後ろの席の中二病少女は、俺と学が話している間に帰った。

 その前は、辺りをきょろきょろ見渡していたが、小さく息を吐いたあと、静かに帰ってた。

 そして、もう一人の中二病患者はホームルームが終わると同時にさっさと帰っていった。

 天才魔法少女に中二病約2名、このクラス、どうなるんだろうか……。

 そんな少しの不安を頭に置いて、俺は教室を後にした。

 すると。


「よっ!」


 教室を出た矢先、俺のことを待っていたのか、晃太が廊下の壁に寄りかかっていた。


「わざわざ待ってなくてもよかったんだけど」

「そういうなよ。どうせ電車一緒なんだし」

「……ま、それもそうだな」


 俺と晃太はそのまま歩き出した。そして、そのまま玄関まで来たところで晃太が話しかけてきた。


「そういや南、そっちのクラスどうだった?」

「あー、悪くはないか……?」


 俺は自分の下駄箱から外靴を取りながら答えた。


「何で疑問系なんだよ」

「まだ前の席のやつとしかまともに話してないからな。あと、既にキャラ濃いのも何人かいるから何とも言えないんだよ」

「あれ? 南のクラスって今日式辞読んでた神崎美穂いるよな? 天才魔法少女って騒がれてたあの。あれ以上に目立つようなやついるのか?」

「まあ目立ってはいたな。色んな意味で」

「何だよそれ。気になるじゃねえか」


 クラスに一人ならまだしも、二人もほとんど中二病確定のやついるとは何だか言いにくかった。


「そのうちわかるさ。そっちのクラス、Ⅱ組はどうだったんだよ」

「Ⅱ組か? そうだな、まだ何とも言えないけど、今のところは楽しそうだぜ」


 そう言って、イケメンスマイルを浮かべる晃太。


「何とも言えないのに楽しそうなのかよ」

「だってよ、楽しそうって思ってた方が面白いだろ」


 こいつ、ホントにどっかに出てきそうな主人公の性格してんな。


「で、南。今日はどこのダンジョン行くんだ?」

「まだ決めてない。っても、俺たちの行ける場所なんて限られてるけどな」

「そしたら、ギルドに行ってからか」

「そういうこと。飯食ったらギルドに直接集合な」

「はいよ」


 こうして俺たちは、何事もなく帰路につくのだった。

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