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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第2章 炎天下の熱闘
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26.VSマイティキング⑧ 古藤&紗奈VS袴田&瀬野(1)

『さあ、両チームの選手が揃いました! 2戦目は2対2の勝負です! どちらかの選手が1人でも場外、もしくは戦闘不能になった時点で勝敗が決します! 間もなくスタートです!』

「それでは……試合開始!」


 審判の合図とともに試合が始まり、紗奈と昇司は即座に戦闘の構えに入る。


「ねえ……やる前に聞きたいんだけど……」


 が、対戦相手の1人、丸眼鏡を掛けた三つ編み女子の袴田良美が戦闘体勢に入ることなく口を開いてきた。


「……何かな?」


 昇司は戦闘体勢を崩すことなく良美のことを警戒しながら返事をする。


「あなたじゃなくて……福山さん? ……だっけか」

「いかにも」

「いかにも……? まあいいや。さっきから気になってたんだけど、あなたのその両腕の包帯は何なの? 怪我?」

「ちょっと袴田さん。急に喋りだしたと思ったらなんなんですか? 対戦相手の心配なんてする必要ありますか?」


 良美が紗奈に問いかけると、横にいた瀬野真波がムッとした表情でそう言う。


「あるよ。これは大事なこと」

「そうですか……!」


 良美の何を考えているのかわからない表情にイラつきを覚えながら、瀬野は紗奈へと顔を向ける。


 ―――何なのよ。こいつの腕が怪我をしてようがしてまいが私たちには関係ないことでしょ。ただでさえイライラしてるっていうのに……!


「くっくっく……早くも仲間割れか? いいだろう、この両腕について教えてやろうではないか……! この両腕に巻いている包帯……これは我の腕に宿っている聖なる白闇(はくあん)と暗黒なる黒光(こくこう)の力を抑制するためのものである……!」

「「…………え?」」


 紗奈が何を言っているのか理解が出来ず一瞬固まる良美と真波。


 ―――ただの日焼け対策……いや、ただのとは言えないけどよくそんな言葉思いつくよなぁ。


 対して、すっかり紗奈の言動に慣れてしまい、逆に感心する昇司。


『……両者動きません。何やら会話をしているようですが、こちらでは何を話しているのかまではわかりません。何を話しているのでしょうか?』


「……あなた、ふざけてるの?」

「くっくっく……我はいつでも本気であるぞ……!」


 紗奈のただの中二病発言を煽りと勘違いし、さらにイライラを募らせる真波。


「……全然何を言っているかわからなかったけど、要は怪我ではないってことだよね。……じゃあ、安心だ」


 それに反し、良美は安堵したような表情を見せる。


「安心……? それはどういう意味だい?」

「……もし、その子が怪我をしていたのなら可哀想だから……」

「可哀想? 我に同情しようとしてたのか?」

「そうだね……。だってもし怪我をした状態で私たちと戦ったんじゃ、もう冒険者出来なくなっちゃうかもしれないから……! 瀬野さん」

「わかってます!」

「! 来るよ福山さん!」

「任せるがいい!」


 良美が戦闘体勢に急に入ったと同時に、その場の全員が魔力を込めて詠唱を始めた。


「我が魔よ、我が仲間にその力を分け与えよ―――」

「凍てつく我が(ひょう)よ、槍となりて敵を穿て―――」

「自然に集いしマナよ、我と仲間に力を分けたまえ―――」

「聖なる光よ、闇を切り裂く(つるぎ)となれ―――」


 そして。


「“エンチャント・スペシャルアップ”」

「“エンチャント・エンデュランス”!」

「“ブリザードランス”!!」

「“ライトニングセイバー”!」


 良美が真波に、昇司が紗奈にそれぞれ付加魔法を使い、真波が放った巨大な氷の槍と紗奈が構えていたSギアスティックから放った“ライトニングセイバー”が激しく衝突する。


『おっと! 両者動き出したと思ったらいきなり大技のぶつかり合いだぁー! 威力はほぼ互角か!?』


「な……私の付加つきの“ブリザードランス”と同じ威力……? それも光魔法ですって……!?」


 良美の放った“エンチャント・スペシャルアップ”。

 この付加魔法の効果は、付加した対象の攻撃アビリティの威力を増幅させるものである。

 自身の魔法の攻撃力に一定の自信を持っていた真波は、この良美の“エンチャント・スペシャルアップ”が付加された“ブリザードランス”と互角レベルの魔法をぶつけられたことに少しの動揺と腹立たしさを覚える。


「く……!」

「瀬野さん、落ち着いて。次が来る。私の後ろに下がって」

「っ! わかってます!」


 紗奈がスティックを再び構え、詠唱を始める中、良美も再び詠唱する。


「白き光よ、聖なる力で敵を討て。“ライトニングジャベリン”!」

「我が魔よ、盾となりて我らを守りたまえ。“プロテクト”!」


 紗奈が放った無数の光の槍が真っ直ぐと良美と真波に向かって飛んでいき、それを良美の“プロテクト”が防いでいく。

 ……かに思えたが。


 ―――ピキピキ―――パリン!


「な……!」

「嘘……」


 次々と襲い掛かる“ライトニングジャベリン”に良美の“プロテクト”は耐えきれず壊され、残りの光の槍が2人目掛けて飛んでくる。

 しかし、2人には命中することなく光の槍は地面に突き刺さり消滅していく。


『先程の“ライトニングセイバー”に続き、この“ライトニングジャベリン”ももの凄い威力です! 袴田選手の“プロテクト”を撃ち破ってしまいました! これはまた凄い人物が現れました!』


「くっくっく……さっきはもう冒険者が出来ないとか言っていたが……一体それは誰のことであろうか……?」


 予想外の攻撃力に焦りの表情を見せる良美と真波に対し、紗奈は思いきったドヤ顔で2人にそう言った。


「……福山さん、一気に行くよ……!」

「合点承知である!」

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