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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第2章 炎天下の熱闘
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24.本選開始!③ 燃え上がる闘志

『さあ、1回戦第4試合は『ロックゲイザー』VS『ブレイクラッシュ』です! 『ブレイクラッシュ』としては、ロックゲイザーの関川健史、東堂壮亮、この2人をいかに追い詰めていくかがポイントでしょう!』

「お、始まるみたいだぜ。南、どっちが勝つと思う?」


 第3試合で漆黒の英傑が勝利を収めた後、俺たちは試合の準備のため会場内の控え室へと足を運んでいた。

 外のスピーカーの実況の声が少し鈍く施設内は、運営の人たちがワタワタと忙しそうに動き回っているのが視界に入ってくる。


「……ま、順当に行くなら『ロックゲイザー』が勝つだろ」

「いやいや、そりゃあ確かに壮亮も強いし、関川って人去年テレビで観てて凄かったの思い出したけど、やってみないとわかんないだろ」

「そうそう、晃太の言う通り。『ブレイクラッシュ』の人たちに失礼だよ南」

「……そうだな。仮に当たるなら、『ロックゲイザー』よりかは『ブレイクラッシュ』と当たった方が楽かもしんないし、そういう面では『ブレイクラッシュ』に勝って欲しいな」

「……日向君。その言い方もどうかと思うけど……」

「ふっ……。どちらが勝ち上がって当たろうとも関係ない。我の光と闇で混沌(カオス)へと導くまで……!」

「うちと戦う前からもう次の試合か。随分と甘く見られたものだな」

「……っ!?」


 俺らの会話に突如として乱入してきた声が後ろから1つ。

 振り向くと、多田さんをはじめとしたマイティキングの面々が立っており、威圧するようにこちらを見ていた。


「……あなたたちの控え室、あっちですよ」


 多田さんを見た瞬間に舌打ちをかました美穂は、多田さんたちの後ろを指差して冷静を装ったような声でそう言った。


「知ってるさ。ほら、試合前の挨拶ってやつだよ」

「…………」


 挨拶なんてしたくないと言わんばかりに無言になる美穂。


「……まあいい。それよりだ。日向南……と言ったな」

「はい。何でしょうか?」

「昨日テレビで見たぞ。お前、青龍と同じ類の神獣、朱雀の契約者じゃないだそうか」

「……ええ、まあ」

「昨日のあれが朱雀だな? テレビで見たのよりは小さい姿だったが……。昨日はそう言わず隠してたな? 何故だ?」

「…………どうせ、テレビで予選の様子写されたら意味ないから別に隠す必要はなかったですけど、わざわざバラす意味もないですからね。それも本選で当たるかもしれない相手に。……まさか当たるとは思ってもなかったですけど」

「なるほど……。確かにそれはそうだな」


 美穂に口止めされてたことは言わずに適当に返事を返す。

 と、ここまで来たところで晃太が口を開いた。


「あの……1ついいですか?」

「む……何だ?」

「エルーラ……クォーターエルフの子、何もあそこまでやることはなかったんじゃないかって……」

「……ああ、あれか。だから言ったではないかやりすぎてすまんと。俺もあそこまでやるつもりはなかったが、しつこかったものでな」

「ふっ……、あいつらは弱いから俺たちに負けた。……あのエルフだけは少しだけやるようだったがな。……だが、それ以外まるで話にならん雑魚だった。さっさと諦めればいいものを、醜くあがくからああなる。ハッキリ言って才能がない。お友達なら言っておけ。冒険者としての才能はお前らにはないとな」


 横やりに口を挟んできた相模原仁の言葉に晃太の顔つきが変わった。


「おい、何言ってんだこの―――」

「ごめん、1ついいかな」


 そして、晃太が今にも突っかかりそうな感じで声を少し荒げると、古藤さんがそれを制止するように言葉を挟む。


「別に僕がどうこう言うつもりはなかったけど、相模原君だっけっか? 君、少し言い過ぎじゃないかな? 昨日の神崎さんへの怒鳴りかたといい、今の発言といい……。確かに君たちからすれば、彼ら彼女らは物足りない相手だったかもしれない。だが、あの子たちも……そしてこの子たちも頑張ってる。冒険者になってから4ヶ月でCランクに昇格し、ABFの出場権を得た。これは立派な才能があると僕は思うんだけど」

「……立派な才能? それぐらいは才能がなくても出来ることだ。いいか? 才能がある者とは家柄、血筋、頭脳、身体能力などを兼ね備えた者のことだ。あのエルフ……いや、クォーターエルフだったか。あれにはエルフの血筋という才能があったがな。それ以外には冒険者としての才能は一才感じられなかった。それにだ、神崎(こいつ)に関して言えば大我様を言うことを聞かず、挙げ句の果てには反発をする生意気なやつだ。それに怒鳴りつけて何が悪い?」

「……何が悪い……だって……?」

「あんたなあ……! 人のこと何だと思ってんだ……! あいつらのこと……それに美穂のこともよく知りもしないくせにベラベラベラベラと勝手に喋ってよ……!」

「……仁、口を慎め。試合前に揉めてどうする。わからせたいなら試合でわからせればいい。結果を出せばこれらも納得せざるを得ないだろう」

「…………はい」

「ということだ。挨拶はこれくらいにしておくとする。後は試合で―――」

「なあ多田さん」

「……? 何だ?」

「相模原さんの言葉を何1つとして否定しなかったってことは多田さんも考えは同じってことですか?」

「…………人生には勝ち組と負け組がある。才能ある者は自然と勝ち組になり、元より才能ない者、敗北した負け組は社会の……勝ち組の肥やしとなり、ゴミのような人生をただ散らしていく。……そう、例え朱雀だろうが天才魔法少女だろうが、お前らは負け組となって俺たちの肥やしとなる。……神崎、俺のチームに来なかったこと、死ぬほど後悔するといい」


 多田大我はそう告げると、踵を返して自分たちの控室の方へと歩いていった。

 それに続くように相模原仁を始め、マイティキングの面々は多田大我の後ろをついていく。

 だがただ1人、数歩歩いて立ち止まった後、こちらを振り向いた。

 背の高い藍色のショートヘアーの女子……確か……瀬野真波。


「……神崎美穂。あんたには絶対負けないから」


 そして、美穂を指差してそう言い残すと、再び踵を返しマイティキングの面々とともに去っていった。


「絶対負けない……? それはこっちのセリフだっての……!」


 美穂の過去の件、エルーラを始めとしたオールネイチャーの面々への侮辱……。

 あんなやつらに負けられねえ。

 というか負けねえ!


「絶対勝つぞ……!」

「ああ、ひっさびさに頭来たぜ……!」

「……僕もあんなのには負けてられないな」

「元より負けるつもりはありません! あのデブと仁さん、絶対泣かせてやる!」

「……奴等……許せん……我が光と闇で葬り去ってくれるわ……!」


 『プラチナピース』全員の闘志が、この時最高潮に燃え上がった。

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