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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第2章 炎天下の熱闘
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23.因縁⑤ 神崎美穂と多田大我(2)

 告白。

 最初に頭によぎったのはそれだった。

 中学生になってからたまにこの木の場所で告白されてたことがあるから余計に。


 ―――いや、全部断ってたよ。気になるって感じの人全然いなかったし。


 それで、もしそうだったらすぐに断ろうと思ってた。

 まず、見た目が無理だし聞いてる噂もろくなのないし、唯一良いところは玉の輿に乗れるところだけど、そのためだけに他の全てを犠牲にするのはね……。

 だから、直後に多田さんから放たれた言葉は私にとって予想外だった。


「神崎、俺の冒険者チームに入らないか?」

「……え?」


 その言葉に私は思わず一瞬固まる。


「……どういう意味ですか?」

「そのままの意味だ。俺は来年には高校生になるし、当然冒険者として活動出来るようになる。だから、今のうちに有望そうなやつらにこうして声を掛けているんだ」

「何で私なんですか?」


 何となく理由はわかっていたけど、訊いてみる。


「何で……か。そんなの決まっているだろう。お前が既に6属性の魔法に加えて支援魔法、さらには詠唱なしで魔法を唱えられるスキル、〈詠唱破棄(ノットスペル)〉を使える天才だからだ」


 案の定、予想通りの答えだった。

 この時は、まだ私が天才魔法少女だなんて言われる前で、せいぜい同級生とか知ってる人たちに凄い扱いされる程度だった。

 けど、さすがに噂だけは校内全体に広まっていて多田さんもその噂を耳にしていたらしいの。


「でも、そう言っても属性魔法も支援魔法も使えるのはまだ基礎的なものばかりなので、私なんか実力的に言えばまだまだですよ」

「基礎が出来ていれば今の段階では充分だ。これから強化していけばいい」

「……私、まだ中2ですよ。多田さん、1年待つことになりますよ」

「構わん」

「……というか、そもそもですけど私、まだ冒険者になるかどうかも決めてないんですけど」

「決めてないということは冒険者になるということも視野に入れているんだろ?」


 私が何とかしてやんわりと断ろうとする度に、それを無駄だと言わんばかりに返しを入れてくる多田さん。


「…………まあいい。今日はこのくらいにしておくとする。後日、改めて訪ねる。その時返事を聞かせてもらおう」


 ……だから、さっきからやんわり断ってんじゃん。気づけよ……。


 喉まで出かかったその言葉を飲み込み、私はその場を去る多田さんの背中を無言で見送った。

 その時は、ただこの人からさっさと解放されたいという思いが強かったため、特に何も考えずに多田さんの言葉をそのままの意味として受け取っていた。

 次は強気に断ろうって。

 その言葉の真意も知らずに……。




 それは、2日後のことだった。


「取材?」


 放課後、担任の先生に呼び出しを受けた私は職員室でそう先生に聞き返していた。


「ああ、地元のテレビ局がお前のことを取材したいと言ってきてな。14歳にして6属性の魔法に支援系魔法を操り、さらにはそれを詠唱なしでも普通に使えるということに興味を示したらしくてな。是非と言ってきたんだが……どうだ?」

「どうだって言われても……いきなりすぎませんか? それにその取材っていつなんですか?」

「明日だ」

「明日!? 本当にいきなりじゃないですか!?」


 唐突すぎることに、思わず大声を出してしまい、周囲の先生の視線が一瞬集まる。


「……そういうのって、普通予定とか調整しながらしっかりと日程を決めてするものじゃないんですか?」

「……いや、まあ正直言うとな、先生も非常識なことだとは思ってる」


 私の問いかけに対し、先生は周りに聞こえないように口元を手で隠すようにして私にそう言う。


「じゃあ何で……」

「……まあ、その、言いにくいんだが……大人の事情ってやつが今回渦巻いていてな……神崎には申し訳ないが……」


 先生のその申し訳なさそうな顔と言葉で私は何となく察した。


「ああ……そういうこと……」

「……本当に申し訳ない。ダメなら先生から断りを入れておくが」


 そう言う先生の顔は何とも複雑そうだった。

 急に来た取材の話、大人の事情、もうこれだけあれば何がどうなっているのかこの中学の生徒なら誰でもわかる。

 多田さんだ。

 自分の思い通りに事が進まない時、もしくは思い通りに事を進めようとする時、あの人は自分が使える権力やコネを惜しみなく使って事を進めていこうとするのは有名な話だった。

 だけど、これの意図が私にはわからなかった。


「……いや、いいですよ。断ったら何が起きるかわかんないし、受けますよ。取材」

「……いいのか?」

「はい」


 正直、この取材を受けるメリットが私にはなかったけど、取材を受けなかった時の私と周囲のデメリットが大きいと考えた私は首を縦に降った。


「すまない……。ありがとう」


 先生が私の手を握って感謝の言葉を述べる。

 それと同時に、周囲からホッとしたような安堵の息がところどころで聞こえてくる。

 きっと、先生たちの中では既に知れ渡っていた話だったんだと思う。

 こうして、私はテレビ局の取材を受けることになり、これがきっかけで天才魔法少女って呼ばれるようになった。

 けど、それだけじゃなかった。

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