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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第2章 炎天下の熱闘
131/215

21.ABF開幕① 宣戦布告……!

―――8月1日―――。


「おおー! たくさん人いるなあ! これ全部参加者か!」


 ABFの開催日。

 俺たちはジョーカシティから車で2時間のところにある山石山(さんせきやま)というところの麓にやってきていた。

 ABFの地方大会は各地方のエリア毎でそれぞれ行われ、そこのエリアを勝ち抜いたチームが全国大会に出場することが出来る。

 俺らのいるガンシュエリアでは、毎年この山石山でABFが開催されており、この周辺はABFの期間に入るといつもお祭りムードになって大盛り上がりとなるのだ。


「……この中から予選を抜けないといけないのかあ」

「……良いではないか! 我が血がたぎっておるわ……!」


 そして、山石山の麓にはABFに参加するべく多くの高校生冒険者たちが溢れ変えるようにいて、正直少し帰りたくなっている。


「これ、作っておいて良かったね。もしはぐれることがあってもすぐわかるし」


 古藤さんがそう言って、着ている白色のフードとチャック付きの半袖パーカーをパタパタさせる。

 このパーカーを着ているのは古藤さんだけでなく、俺たちプラチナピースのメンバー全員だ。

 何故、俺たちがこのお揃いのパーカーを着ているかというと、美穂が「どうせなら皆で何かお揃いのものを身につけようよ」と言い出したことがきっかけで、何がいいかと考えた結果、俺がリーダーでいつもパーカーを着てるからじゃあパーカーでいいんじゃねとなったわけである。

 それで、名前がプラチナピースってことで白色のパーカーにして、左胸には『Platinum Piace』と刺繍が施されているパーカーを全員が着ているわけだが……。


「……刺繍がオーダーだったからその分値は張りましたけどね」


 パーカーそのものは冒険者仕様の服と考えれば、そこまで高くなかったのだが、この刺繍が良い値段をしていて合計で万を余裕で越えたのだ。

 俺はさすがにそこまでしなくていいんじゃないかと言ったのだが、これまた美穂が「この間のロックドッグの討伐クエストの報酬使えばお釣が返ってくるくらいだしいいじゃん!」と反発し、頑なだったのでしょうがなく俺が折れた形となった。

 俺以外は別にいいよという感じだったので、俺が折れた瞬間に諭吉が飛んでいき討伐クエストの報酬が一気になくなってしまった。


 ……まあいいけどさ。


「さて……じゃ、俺参加受付してくるから。古藤さん、すみませんがこいつら頼みます」

「わかった」


 俺は古藤さんに3人のお守りを頼み、あらかじめ書き込んでおいたABFのエントリー用紙と全員分の学校許可証を持って受付へと向かった。




 ……げっ、まだ結構並んでるな。


 受付に到着した瞬間、そこには結構な数の人数が並んでいて俺は少し憂鬱になりながら最後尾へと並ぶ。

 この受付の列に並ぶのが嫌だったので、列が無くなりそうな時間を見計らって一応遅めに来たのだがまだまだかかりそうである。


「……ん? あれ? 大和さん?」

「ん? 日向じゃないか」


 列に並んだところで、ふと前に並んでいる人物を見るとそれは大和さんだった。


「……皐から聞いたぞ。昇司、お前らのチームのメンバーとして出るんだな」

「はい」

「……正直言って、意外だった」

「意外……ですか?」

「ああ。日向は、俺らと昇司の関係については知ってるのか?」

「はい……。古藤さんと木ノ崎先輩のことについても、古藤さんからこの間……」

「そうか……。古藤から聞いたのか……」


 大和さんはそう言った後、ふっと笑みを浮かべる。


「……日向、感謝するぞ」

「え……? 突然どうしたんですか?」


 突然の大和さんの言葉に俺は動揺する。


「……正直、昇司と豪のことは俺も……いや、俺や皐たちもどうにかしたいと思っていた。このまま後味の悪いまま高校を卒業してしまえば、2人が顔を合わせることもなくなってしまうからな。……しかし、今回のABF参加で、昇司は皐に豪とのことをどうにかしたいと言っていたのだろう?」


 ……そう言えば、そんなことも言っていたような気もするな……。


「どちらかが動けば、きっと元に戻る。そんな気がするんだ」

「……でも、古藤さんはともかく、木ノ崎先輩の様子を見てると本当に古藤さんを嫌ってる感じがするしそれは難しいんじゃ……」

「……じゃあ日向に1つ問題だ」

「問題?」

「本当に嫌いな奴が視界に入ったとしよう。日向なら、そいつにわざわざ絡みに行こうと思うか?」

「……俺なら関わりたくもないんで無視しますけど。……って、あ」

「ふっ……そういうことだ」


 大和さんは再び笑みを浮かべると、すぐに表情を変え、今度は真面目な顔になる。


「日向……。お前には感謝してるし、昇司と豪の件は出来れば協力してほしいが、それとこれとは別の話。もし、お前らのチームと戦うことになっても手加減はしないからな」

「! ……お手柔らかにお願いしますよ!」


 大和さんの急激に来る威圧感に対し、冗談混じりにそう返すと大和さんは再び笑みを浮かべる。


「ふっふっ……それは無理な願いだな。俺らも今のチームでABFに出るのは今年が最後。ましてや、お前らのチームは厄介者揃いだからな。本気で行かせてもらうぞ……!」


 ……まじかよ。

 星桜最強、天道大和にこんな受付に並んでる時に宣戦布告されるとは……。


 …………燃えてくるじゃねえか!

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