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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第2章 炎天下の熱闘
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19.昇司と豪① 友達

▷▷古藤昇司


 ―――今から4年前の4月、中学2年の時に僕たちは出会った。




 うちの中学は2年生になるとクラス替えがあるんだよね。

 それで、2年生になって最初の登校日、僕が少しドキドキしながら教室の扉を開けると、騒がしい声が聞こえてきたんだ。


「あー! 大体何でお前と同じクラスになってんだよ!」

「そんなの知らないわよ! 私だってあんたと同じクラスなんてごめんなのに!」


 その騒がしい声の正体は、木ノ崎と皐さんでね。

 びっくりしたもんだよ。


 ―――ん? 何でびっくりしたかって? それは木ノ崎と皐さん、席が1個開けての前後の席だったんだけど、その間の席がちょうど僕の席だったんだよね。


 ―――ははは、そうだね。僕もこのまま席に着いていいのかわかんなくてさ、教室の入口で立ち止まっちゃってたんだよね。


 そしたら。


「……悪い、そこにいられると入れないんだが」

「あ、ごめん!」


 僕の後ろから声を掛けてきたのがいてね、それが大和だったわけ。


 ……そう、僕と木ノ崎と皐さんと大和は中学で同じクラスだったんだ。


「……確か、2組だった古藤……だよな?」

「うん、天道君」

「……俺のこと知ってるのか?」

「君のこと知らない人はこの学年にはいないと思うよ……」


 大和はその頃からアビリティにおいて頭角を表していてね、僕たちの学年の中じゃ注目される存在だったんだよ。


 ―――あれ? 言ってなかったっけ? 大和は星桜にいる学生冒険者の中だったら最強って言われるくらい実力がある冒険者だって。


 ―――あはは、ごめんごめん。でも、日向君ももう少し他の冒険者のこと知っておいた方がいいよ。ABFで衝突する可能性もあるわけだし。


 ―――うん、それで続きなんだけど。


「……で、何でこんなところで突っ立ってたんだ?」

「ああ、実はね……あそこが僕の席なんだけど……」

「……なるほど、そういうことか」

「え……ちょっと……」


 僕が指差した先の席と、その間で言い合ってる2人の姿を見て全てを理解したのか、大和は納得したような顔をするとつかつかと何食わぬ顔で2人のところまで歩いていったんだよね。

 クラス中の注目を集めているのも気にしないで、言い合っている2人の前まで行くと大和は普通に2人に話しかけたんだ。


「おい」

「ああ!? ってお前天道か……!?」

「ああ」

「……天道君が私たちに何の用なの?」


 言い合っていたせいか、その時は2人とも機嫌が悪そうでね。

 見てる僕はハラハラしてたんだけど、大和はそれも気にしないで一言。


「お前らが喧嘩してるせいでここの席のやつが座れない。やるなら迷惑にならないところでやってくれ」


 そう言って、僕の方に大和が視線を向けると木ノ崎と皐さんも僕の方を見てきて2人と視線が合った瞬間、一瞬ビクッとしちゃったんだけど、2人とも僕を見た瞬間冷静になったのか「あ……」みたいな顔してね。

 これは大丈夫かなって思って、僕が自分の席に向かうと大和が自分の席に戻るところで。


「あ……ありがとう、天道君」

「礼なんていいさ。どっちにしろうるさかったしな」


 って言って自分の席に座ったんだ。


 ―――そう、大和はその頃から周りより大人びてたというか、言いたいことははっきり言うタイプでね。しかも、正論の時がほとんどだから誰も何も言い返せないっていうね。


 で。


「……その、ごめんね?」

「悪かったな」

「あ、いや、大丈夫だよ。うん」


 木ノ崎と皐さんは大和の一言で周りから視線を浴びていることに気づいてさらに冷静になったのか、顔を少し赤らめながら僕に謝ってきたんだ。


「木ノ崎豪だ。そこのアホのせいで迷惑かけたな。よろしく」

「あ……僕は古藤昇司。よろしく木ノ崎君」

「私は笹木皐。そのバカのせいで迷惑かけてごめんね! これからよろしく!」

「……うん、よろしく」

「……おいアホ皐、今誰にバカっつった?」

「あら、バカが誰のことかわかってないなんて。これだからバカは……」

「んだとコラ!」

「何よ!」

「ちょっと2人とも……」

「おい、うるさいって言ったのがわからなかったのか?」

「「あ……はい、すいません……」」


 ―――って言うのが僕らの出会いだったんだ。


 ―――ん? 意外って何が? ……ああ、木ノ崎か。大和は何だろうな……かけてくる重圧がすごいというか、何か凄みみたいなのがあるんだよね。木ノ崎も大和の言うことは何だかんだで聞くとき多いらしいし。


 でだ。

 それから僕たちが仲良くなるのは案外早くてね、僕は木ノ崎と皐さんに席で挟まれるからよく言い合いの仲裁入ってたし、大和は学級委員長になってたところから担任によく喧嘩する2人を見ておくように頼まれててね。

 気づいたら4人で話したり遊んだりするようになってたんだ。

 そこで、4人とも将来は冒険者として活躍したいっていう共通の夢があるってことがわかってね。


 ―――ん? ああ、そうだよ。僕はこれでも元々はプロの冒険者志望だったんだよ。驚いたかい?


 ―――あはは、そうだね。

 

 ―――うん、そう。この時の僕も夢にも思ってなかったよ。まさか、この先医大を目指すようになるなんてね。

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