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アビリティワールド-ABILITY WORLD-  作者: イズミ
第2章 炎天下の熱闘
121/215

18.狡猾な岩犬② ロックドッグというモンスター

「晃太! ハバネロ!」

「来たか」

「おう! 南、古藤さん、こいつら、逃げるの急に止めたと思ったら立ち止まってこっち睨んでくんだよ」


 追いついた2人に声を掛けると、2人ともこちらを振り向き、晃太が現在の状況を説明する。

 晃太の言う通り、ロックドッグたちはこちらに体の正面を向けて、晃太とハバネロを威嚇するように睨みをきかせていて、これ以上近寄るなと言わんばかりの形相になっていた。

 今いる場所は、周囲は木々に囲まれた視界が狭まった場所。

 俺と古藤さんが走ってきた道は少し開けた獣道のようになっていたので、走る分には問題はなかったが、


「どうするリーダー?」

「リーダー言うな。……そうだな、一旦慎重に様子見を……っ―――!」


 少しロックドッグたちの様子を見て次の動きを考えようとした矢先、1つの懸念が浮かび上がる。


「晃太……お前、ロックドッグ追いかけてる時にあいつらが吠えたり、何か怪しい動作をしたの見たり聞いたりしたか?」

「いや、特には。ハバネロは?」

「うむ……私も特にそのようなもの……は……」

「どうかしたか?」

「いや……そういえば、妙というか何というか……奴らの逃げている時の足音が地団駄を踏むような音をたてていたような…………む……!」

「……くそ、やられたな」


 ハバネロがロックドッグを追っていた時に気になったことを言いかけているところで、俺とハバネロは周囲にあるいくつもの気配を感じ取る。


「南?」

「どうかしたのかい?」

「晃太、古藤さん……辺りをよく見渡して……」

「辺り?」

「……特に何も……っ! なるほど、そういうことか……」


 周囲の状況に気づいた古藤さんは少し焦りを見せた表情を見せ、その直後に晃太も周囲の状況に気づいたのか、警戒体制を取る。

 すると、こちらが気づいたのに合わせるかのように、周囲で感じられたいくつもの気配の正体、複数のロックドッグが俺たちを囲むように一斉にそのその姿を現した。


「グルルルル……!」

「10……いや15以上はいるな……」

「ふむ……少々面倒臭いな」


 俺たちを囲むようにしてこちらを威嚇してくるロックドッグの群れ。

 それにプラスで俺たちが追いかけてきたロックドッグも合わせると、今この場には少なくとも20体以上のロックドッグがいる。


「……どうやら僕たち、ロックドッグにハメられたらしいね」


 古藤さんは「してやられたな」と呟き拳を握る。


 ロックドッグは、自分がピンチに陥ると仲間を呼ぶ習性があるのだが、その主な手段は遠吠えである。

 なので、ロックドッグとの戦闘はその遠吠えに警戒していたのだが、そこに注意が向きすぎて仲間を呼ぶ他の方法があるかも知れないという可能性を完全に頭から消していた。

 狡猾で頭が回る。

 単体ではその岩のように硬い皮膚に注意すれば戦闘においてはさほど恐ろしくないロックドッグだが、その頭の良さから、仲間との連携や怪しい動き等にはかなり注意が必要というのは冒険者の間では周知の事だ。

 これは1つの予測だが、このロックドッグの群れは前にも冒険者と戦ったことがあり、その際に仲間を呼ぶ方法を遠吠え以外にも必要と判断し、ハバネロが違和感を感じたというその足音をもう1つの仲間を呼ぶ方法として確率させたのではないだろうか。

 前に、これに似たような出来事をどこかで聞いたことがある。


「……やるしかないですね」


 俺は思考張り巡らせながら周囲を見渡し一息ついた後、レッドモードになり戦闘体勢に入る。

 それに反応するようにロックドッグたちも喉を鳴らし、前屈みになって今にも襲いかかってきそうな体勢になっている。


「晃太、後俺の後ろ頼むぞ」

「ガッテン!」

「ハバネロは援護射撃を!」

「任された」

「古藤さんはサポートを―――」

「いや、僕も戦うよ。多勢に無勢。モンスターランクDと言っても群れれば厄介だ。攻撃出来る人数が多いに越したことはないさ」

「でも」

「大丈夫。サポートもきっちりするから」

「……わかりました」


 古藤さんの安心してくれと言わんばかりの表情に、俺は思わず了承する。

 一応、気を使ってというか、なるべく危険な役目をさせないように今回はサポートのみを頼もうと思ってたが、正直そう言ってもらえるのはありがたい。

 サポート込みでもこの数を2人で相手にするのは少々しんどい。

 それに、古藤さんは俺たちより冒険者としても先輩だし、話に聞けば古藤さんはダンジョンに行く時は1人で行くことが殆どらしい。


「んじゃあ、行きますよ……!」


 ならば、古藤さんを是非とも頼らせてもらおう。

 

「“疾風波”!」


 俺は攻撃を仕掛けようとしてきたロックドッグたちに先制で“疾風波”を両手で放ち、自分の前方のロックドッグたちの動きを封じる。


「ハバネロ!」

「うむ。“フェザーフレイム”」


 そして、ハバネロは上空から俺の後方にいるロックドッグたちの動きを“フェザーフレイム”を放つことによってロックドッグたちを牽制する。

 古藤さんのアビリティはマジック。

 晃太はともかくとして、古藤さんが魔法を放つための詠唱時間を稼がなければならない。


「“サンダーブロー”!」


 そして、後ろでは例の如く晃太がロックドッグたちに果敢に向かっていく。

 ……あいつ、やっぱりアビリティマジックじゃなくてフォースの方が身に合ってんじゃねえの?


「―――自然に集いしマナよ、我と仲間に力を分け与えよ……“エンチャント・エンデュランス”!」


 そして、古藤さんが“エンチャント”の魔法を唱えると、古藤さんを含めた俺たち3人とハバネロの体がオレンジの光に一瞬だけ包まれる。


「これは……?」

「持久力アップの付加魔法だ。効果が続いてる限り疲れにくくなる」

「へえ……」


 美穂が使う付加魔法には攻撃力強化の“アームズ”とか素早さ強化の“ハイスピード”なんかあるが、持久力の強化は始めてだな……。


「グルアアアアア!」

「! “噴火鉄拳”!」


 俺が感心してると、ロックドッグが“疾風波”を切り抜けて突進してきたので俺はすかさず“噴火鉄拳”で攻撃する。


「お?」


 いつもより波動の消費量が少ない。

 これも“エンデュランス”の効果だろうか。


 ……これなら思ったよりも楽に片付けられるかも。

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