15.C級昇格試験⑤ どうしよう、わくわくする
▷▷福山紗奈
「……くっくっく……例え貴様らが何体で来ようとこの我には叶わぬぞ……!」
どうしようどうしようどうしようどうしよう。 何? 何なの? 何でガンマングースが一気に4体も現れるわけ? 意味わかんない!? え? ガンマングースって単独行動するモンスターじゃないの? 意味わかんない!
洞窟内を進んでからしばらく、私はこの目の前の状況に頭の中でパニックになっていた。
目の前にいる4体のガンマングースは私を威嚇しながら喉を震わせる。
……大丈夫。
落ち着くのだ我が精神よ……。
ガンマングースの主な攻撃手段は掌から発射される石の弾丸。
つまり、私も遠距離からの魔法を使えば威力負けすることはないはず……。
……そしてこういうときは。
「先手必勝! 我が光の槍に貫かれるがいい! “ライトニングジャベリン”!」
私はガンマングースが攻撃をしてくる前に、無数の“ライトニングジャベリン”を放つ。
「ザググッ!」
「グルアア!」
「! 守れ! “プロテクト”!」
2匹のガンマングースに“ライトニングジャベリン”が命中するが、あとの2匹には体を転がりながらかわされ、そのまま攻撃をかわしたガンマングースたちは石の弾丸を私に向かって撃ってきたので、それを“プロテクト”でガードする。
くっ……! モンスターのくせにカッコいい動きを!
「だが我も負けられぬ! 地より這い出でし者よ、敵を引きずりこむが……ってキャアッ!」
“ライトニングジャベリン”をくらって怯んでいる2匹の方に“デーモンハンド”で追撃をしようとすると、先ほど石の弾丸を放ってきた残りのガンマングースたちが再び石の弾丸を撃ってくる。
しかし、弾丸は外れて私の足元に撃ち込まれる。
「ふっ、不意を突くとはやつではない……にゃにぃっ!!」
内心ドキドキしながら平静を保とうとすると、弾丸を撃ってきたガンマングースたちは今度は私との距離を詰めてきて、爪で引っ掻き攻撃をしてきた。
「ぐっ……!」
何とかそれを紙一重でかわすが、もう1匹のガンマングースが今度は跳び蹴りをしてくる。
「守れ。“プロテクト”!」
慌てて“プロテクト”を張ることで攻撃を防ぎ、私は逃げるようにガンマングースとの距離を取る。
何!? ガンマングースって接近戦も出来るの!? 聞いてないよ!
ガンマングースとの距離を取りながらそんなことを思い、いつでも魔法を使える体勢を取る。
後方を見ると、“ライトニングジャベリン”を受けたガンマングースも体勢を立て直し、こちらを威嚇している。
……ど、どうしよう……こんなとき、いつもなら南と晃太が前に出て時間を稼いでくれるけど……。く……こういうときに接近戦の重要さがよくわかる……。こうなったら我の隠れた潜在能力を解放して無敵の力を手に入れるしか……じゃなくて! ……せめて、詠唱を唱える間だけでもガンマングースの動きを止められたら……!
▷▷結城晃太
「……はは、こりゃあわくわくする状況だなおい」
洞窟内をロックドッグやゴブリンモドキを倒しながら進んでいると、ついにガンマングースが現れた。
それも6匹も。
……おいおい、これ全部倒したら結構な経験値積まれるんじゃねえか?
俺のやる気まんまんの態度に気づいているのか、ガンマングースは敵意剥き出しで俺を睨み付けてくる。
「“変身”、ブラスターフォーム!」
弾丸には弾丸だ。
俺は“変身”でブラスターフォームになると、右腕のブラスターの銃口をガンマングースたちに向ける。
「ザグルアアア!」
「“サンダーショット”!」
ガンマングースが弾丸を撃ってくるのに合わせて、俺は“サンダーショット”を連続で放ちガンマングースたちの撃った弾丸にぶつけ相殺させる。
スキル〈銃士〉によって、ブラスターフォーム時に限って俺は弾丸や砲撃系の魔法を詠唱なしかつ威力上昇、命中精度アップで使うことができる。
「“ウォーターショット”!」
「グルアッ!?」
続けざまに“ウォーターショット”を放つと、1匹のガンマングースに命中し後ろに吹っ飛んでいく。
「ザグアアアア!」
すると、他のガンマングースが今度は弾丸を連続で一斉に撃ってきた。
「“アクアキャノン”!」
そこで、俺は“アクアキャノン”を地面に向かって放つ。
“アクアキャノン”は、“ウォーターショット”より威力もサイズも大きい分、相手に向かっていく速度が若干遅い魔法である。
俺はそれを地面に向かって撃ち爆発させることで周囲に水の衝撃波を生み出し、ガンマングースたちの弾丸を弾き飛ばす。
衝撃波はガンマングースの方にまで届き、びしょ濡れになったガンマングースたちは体をぶるぶる奮わせて水を飛ばしていた。
……何となく思いつきでやってみたけど結構上手くいくもんだなー。あ、でも南がいるときにいきなりやったら「やるならせめて何か言え!」とか言われそうだなー。……ん? 待てよ……? 最初は1人でダンジョン潜るのほんの少しだけ不安だったが逆に言えば自由に出来るということじゃね?
俺はふとそう考えた瞬間、思わず口元を緩ませる。
「へっへっへ……ようは思いついたこと全部試せるわけだ……!」
普段はパッと思いついたことがあってもチームで動いている以上、あまり下手なことしたら迷惑かかるから出来なかったけど、今なら誰にも迷惑がかからない。
「はは……なんだかわくわくするなおい……!」
俺は体にかかった水を飛ばしきり、こちらを威嚇するガンマングースに再び攻撃体勢を取る。
「行くぜ……俺タイムの始まりだ!」