(教えて)
それは、とある日曜日のこと。
気持ちよく晴れていて、ひさしぶりに洗濯物が一気に片付いて。
物干し竿をいっぱいにして機嫌良く庭から引き揚げてきた詩乃を、珍しく弟が待ち構えていた。
「姉ちゃん」
すわ小遣いか、と警戒する。
こんな神妙な表情で頼みごと(推定)など、ゲーム機が欲しいと言ってきた時以来だ。まぁ付き合いもあるだろうし、たまにはいいかと許可したら二万円以上した。携帯ゲーム機で、だ。
今度は据え置きか。三万越えか。バイトで少々うるおっているからといって気を抜く気は………
「チャーハンの作り方、教えて」
「だ……」
とりあえず否定してから交渉しようとしていた言葉が止まる。
「…?なんだって?」
「だから。チャーハンの作り方」
「…………」
本年度中学生となった弟・湊には、小学生時代に料理を教えた。中学生になったら自分のことは自分で出来るように、と。
……かなりイヤイヤ従っていた覚えがある。その証拠に、隙あらばレトルトカレーかインスタントラーメン。せいぜいが、食パンに目玉焼きである。
「どうしたの?」
料理上手な男の子が好きというコでも好きになったのだろうか?
「……この前作ったの、前のと違う」
東にチャーハンを教わって以来、何度か家で作っている。アドバイスをもらったりして、今ではパラパラに近い。
「それは、つまり……」
以前の、味付けご飯の塊については忘れよう。あまりに気にすると、これから出す結論にちょっぴり腹が立ちそうだし。
湊が言いたいのは、つまり……
「チャーハン、おいしかったのね?」
教わりたくなるくらいに。
「………」
沈黙は、雄弁だった。
が、答えがわかったところで引くわけにはいかない。
「おいしかったのね?」
「………」
是が非でも、言質を取らねば。
「お・い・し・か・っ・た・のね?」
「…………」
攻防は五分ほど続き………湊が渋々頷くことで決着を得た。




