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異世界の落ちこぼれ  作者: みっトン
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波動弾

孤児院「ヴェルフェドーラ」は村の北東に位置している。村を一周し終えたレイジは、孤児院の代表であり自分の育ての親であるヴェルマーに初めて魔法の扱い方を聞こうとしていた。普段模擬戦を行っている場所は孤児院から数百メートル離れた所で行っており、孤児院へ帰る為にはあと少し距離がある。


先ほど走り終えたばかりのレイジであるが、僅かな休憩時間で息を整え、孤児院までの帰路ですら己の鍛錬の為に走る。


「波動は己を鍛えることのみで成長する・・・波動は嘘を付かない・・・」


ヴェルマーから教えられた波動の教えを呟く。レイジはこの言葉が好きだった。楽を出来る場面であっても、レイジはこの言葉を呟き、常日頃己を鍛えることに尽力している。自分を鍛えることは、ヴェルマーとの約束であり、自分だけに言ってくれた特別な教えだった。


既に日が陰り、周囲の家からは夕飯の準備であろう匂いが漂ってくる。おそらく今日はレイギスの好きなシチューだろう。模擬戦がある日は、勝利した子の好物が夕飯になるのが孤児院での習慣となっている。


//////////////////////////////////////////////////////////////////////////


模擬戦が行われるようになったのは3ヵ月程前、孤児院にいる10~12歳の子供達がある程度自分の扱える魔法について理解していると判断したのか、本来であるならば高等部から行われるはずの模擬戦闘を中等部でも希望者のみ行うとヴェルマーが言った。


好奇心に溢れている多くの子供たちはその知らせに喜んでいたが、レイジは別だった。レイジは自分が未だに魔法が扱えないことを気にしており、自分の波動では周囲の子達の魔法に到底敵わないことも理解していた。

それでもレイジはこの模擬戦闘に参加する決意をする――


レイジが模擬戦に参加するか悩んでいる所、ヴェルマーに声をかけられた。


「レイジ、波動は己を鍛えることでのみ成長する。模擬戦は波動を鍛えるのにうってつけだぞ」


「わかってます先生、でも・・・魔法の扱えない僕ではとても皆に勝てそうにありません」


「なぜそう思う?」


「魔法は遠距離から攻撃できます。波動を飛ばす技はあると先生は言ってましたが、僕はまだそれを教えて貰っていません」


ヴェルマーはしばらく考えると、レイジにこう言った


「では、波動を飛ばす技をレイジに教えよう。本来であれば十分に波動を体内に溜められるようになってから扱う技だが、今回は特別だぞ」


「ホントですか! ありがとうございます! いつ教えてくれるんですか!?」


「コラコラ落ち着け! ・・・そうだな、なるべく早い方が良い。明日の朝、朝食を食べ終わり次第裏庭にくるのだ、そこで波動弾を教える」


「明日の朝ですね!? 約束ですよ!」


普段は大人しいレイジだが、この予想外の出来事に自らの心の高揚を隠さずにはいられない。遠距離からの攻撃手段さえあれば、他の子供達にも勝てると信じているのもあったが、何よりヴェルマーが技を教えてくれるという事実が何より嬉しかった。


////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


約束通り、朝食後に孤児院の裏庭で波動弾の放ち方を教えて貰う。ヴェルマーが息を整え、腰を深く落とす。腹部の左側に両手を持ってくる、ボールを両手で掴むような手の位置を取り、ヴェルマーがゆっくりと息を吸う。それに比例するように両手の中に波動が溜められていくのがわかった。直径20㎝程の球体になった所で、ヴェルマーがそれを放つ――


「波動弾!!」


風を切る音が聞こえ、薄藍の波動が予め用意されてあった大木の丸太を目掛けて真っ直ぐ進んでいく。丸太を直撃しても尚消えることは無く、丸太を抉るようにして突き進んでいく。丸太を容易く貫通し、あわや後ろの植木に直撃しそうになった所で急速に速度が落ち、波動弾は消えた。


「これが、波動弾だ」


「――凄い・・・」


自然とレイジの口からは波動弾に対する素直な評価が出てきた。これさえ使えれば皆にも勝てる、高等部の人達にも勝てるかもしれない。


「先生、撃ち方を教えてください!」


気持ちと言葉が同時に出てくる。これほどまでに心が昂ぶったのは、ヴェルマーがレイジに波動の基礎を教えてくれた時以来だった。


「焦るでない、撃ち方は単純だ。波動を体外に出し、それを局部に溜める。十分に溜まった所で、波動を体から切り離し、放つ。まぁ、やってみるのだ、意外と簡単かもしれんぞ?あれを目掛けて撃つと良い」


ヴェルマーが指したのは先ほどと同じ大きさの丸太。ヴェルマーの姿を思い出しながら、波動弾を放つ準備をする。


「腰を深く落として・・・両手を右に・・・それから・・・波動を体から出して・・・一箇所に、集めるッ」


ここまでは波動の基礎が出来ている者であればスムーズに行える。白色の波動の球体が、レイジの手に現れ時間と共に膨張していく。


(玉の形にするの難しいな・・・大きくするまで時間がかかりそう・・・・)


ゆっくりではあるが波動弾は膨張を続ける。直径10㎝程に球体が成長したのを確認したヴェルマーは、レイジにこう指示した。


「もういいだろう、撃ってみるといい」


ヴェルマーの声が集中状態の自身の耳に入り、それが発射の合図だと理解。ヴェルマーの波動弾の約半分の大きさであることに不満を感じたものの、素直にヴェルマーの声に従い、波動弾を放った。


「波動・・・弾ッ!!!」


放った瞬間、集中状態の体の力が一瞬で抜ける。体内の波動が枯渇している事実に気付いたのはこの時であった。体の疲労を感じながらも、自身が放った波動弾を見る――


そのスピードはヴェルマーの波動弾のスピードとは程遠く、並の人間が走行する程度のスピードだ。今にも消え入りそうな球体は、丸太にぶつかり、かすり傷を丸太に残したところで完全に消えた。


――意識が遠のく――


初めての波動が尽きる感覚に耐え切れず、その場でレイジは意識を失った――




「・・・・ふわぁ~」


「あぁ、良かったぁ。大丈夫?痛い所なぁい?」


レイジが目覚めると、そこは治療室だった。治療室を任されている50代の細身の女性「デイヴィス」に心配そうに声をかけられる。


「ありがとうございます、デイヴィスさん。心配かけてごめんなさい。・・・・ヴェルマー先生は?」


「ヴェルマー先生ねぇ、レイジ君が起きたら自分の部屋にいるって伝えてくれって言ってたわよぉ」


「わかりました、先生の所に行ってきます」


「無理しちゃだめよぉ、意識を失ったって聞いてビックリしたんだからぁ」


「・・・・・はい」


返事だけ返し、その場を後にする。自分が意識を失ってしまったことの恥ずかしさと、これからの波動弾の修行の過程でまた治療室にお世話になることへの罪悪感のようなものがあり、これ以上デイヴィスと会話をするのに抵抗があった。


ヴェルマーの自室は孤児院の2階の隅に位置する。ヴェルマーの自室の前に立ち、ノックをした。


「レイジです。先生、入ってもよろしいでしょうか?」


「大丈夫だ、入ってくれ」


ヴェルマーの自室は実に簡素な物だった。ベッドと机と必要最低限の家具に衣類。目立ったものと言えば、成長し、自身の力のみで生活するために出て行った子供たちの写真くらいだ。


「体調は大丈夫か? ・・・なぁに、心配するな。初めて波動弾を使う者は、大抵こうなる」


「そうなんですね、先生は大丈夫だったんですか?あんなに大きな波動弾を撃って」


「私の波動量なら、あのレベルの波動拳1発で疲労することは無い。レイジもこのまま鍛錬を重ねれば、2・3年もすれば先程の波動弾くらいは撃てるようになる」


レイジが波動拳を扱うには根本的に波動量が不足していた。現にレイジはヴェルマーの波動弾の半分の大きさ、明からに遅いスピード、低すぎる威力の波動弾を撃っただけでも体内の波動を使い果たしている。それでも尚、少年は波動弾を使い、魔法に勝つことを諦めなかった。


「先生、僕、皆に勝ちたいです。もっと波動拳の使い方、教えてください」


「良かろう、まずは波動を波動弾に変える練習からだ。溜めるスピードが遅ければどんな威力であっても実戦で使うことは出来ん。切り離さなくても良い、まずは球体にすることに慣れるのだ」


ヴェルマーもまた、レイジが波動弾を諦めないことは解かっていた――


――修行の日々が始まる






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第2話終了。4話になるかも?  アドバイス頂けると幸いです!





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