落ちこぼれ
この異世界には、魔法・波動・我力・神力の4つの異能の力が在るとされている。
魔法はこの世界において最もポピュラーな異能であるが、火・水・風・土・闇・光・亜のそれぞれの精霊に愛されなければ扱うことすら許されず。また、精霊が与える愛の大きさによってその属性への才能が変わってくる。
努力で補える部分もあるが、一般的には「魔法を上手く扱うには才能が必須」という意見が殆ど。
我力については、完全な解明はされいない。およそ人口の2割が持っているとされる異能で、個人により能力は様々。単純な身体能力向上や、精霊からの愛を増幅させる能力、シックスセンスの向上、戦闘以外に関しては異種とのコミュニケーション能力の向上など様々。
我力についてわかっていることは「25を過ぎに者は我力を得る資格を失う。」、「我力は己の生きる道の手助けとなる能力である」、「我力が得られる人間は、己の道をどんな道であれ理解している」ということ。
神力は4年に1度、一人だけに授けられる特別な能力。文字通り神に等しい力である。天候を操作するもの、存在しない生物を召喚させるもの、人の心を操作できるもの等。我力を遥かに凌駕する、神に愛された者のみが使うことを許される能力である。
神力の持ち主は神の子と言われ、その多くは神々の島とよばれる孤島での生活を行っている。
最後に語るのは波動。生物には体内に波動と言われるエネルギーがあり。この異世界では波動をどんな生物であれ扱うことができる。波動を球体にして放つ「波動弾」、波動を体内に循環させ、身体能力を向上させる「流波動」等がメジャーであるが流派によって呼び名、形状、波動の使い方は異なる。
波動の特筆すべき点は、才能での力の強弱が一切ないということ。波動は鍛錬を積むことでのみ成長させることが可能で、近道は一切存在しない。どんな生物であれとは言ったが、それなりの鍛錬を積んでいない人間は体内に溜められる量が少なく、身を守る為の術にすらならない。
これから書く物語は、精霊からの愛に見放され、それでも自分の生きる道を貫く為に波動を信じ、戦う男の物語。
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~エルネア国・ハチノキ村某所~
???「波動弾ッ!!!」
???「やっぱり遅いよー、絶対当たらないよーそんなの」
渾身の一弾として放ったはずの波動弾だが、その速度は渾身とはほど遠く、避けようと思えばいくらでも避けられるであろう頼りないものだった。
???「くぅ・・・」
???「絶対こっちの方が強いって! バーン!」
体内から全ての波動を放出した少年は、波動弾を放ったその場で膝を付く。横へのステップで波動弾を軽々と避けたもう一人の少年は、火属性の基礎魔法の一つ「バーン」を唱える。
螺旋状になった火の球体が、少年の手から放たれる。容易く放った「バーン」は、少年の波動弾の速度と比べ明らかに速く、力量の差を如実に表していた。
威力は並以下のものではあったが、波動を使い果たした者へのトドメの一撃としては十分な威力だった。
????「それまでっ!」
土魔法「ドルク」により波動弾を放った少年から1メートル程離れた距離の大地が隆起し、バーンを防ぐ。
60代半ばの白髪の男の制止により、戦いは終わった。
????「勝者はレイギス!敗北したレイジは休憩後村を一周するように!」
「ヴェルマー先生ー!勝ったからご褒美頂戴よー!」
「ふむ・・・そうだな・・・次の席換えの時は最初に好きな場所を選んでも良いぞ」
「ほんとー!?やったー!」
無邪気に喜ぶレイギスであったが、このご褒美はそこまで価値のあるものではない。勿論、好きに決められるに越したことはないのだが、席換えの際に最も重要視される点は「友達と近い席になれるか」であり場所自体はあまり重要ではない。そのことにレイギスが気付くのは、席換えで自分の席を選ぶ時だった。
レイギスとは対照的に、レイジは膝を付いた場所から離れない。そこにある表情は自分の無力さを悔やむものであるのは誰の目から見ても明らかである。
「治療室に行って休むいい、なぁに次に勝つのはレイジだと――」
「大丈夫です。波動も回復したので村を走ってきます」
自分の顔を伏せながらそういうと、自分の顔を腕で覆いながらその場から逃げるように走りだす。
実際、今回の模擬戦闘ではお互いにケガを負っていない。近付こうとするレイジに対して、レイギスがそれを退ける構図が序盤は続いた。それに痺れを切らしたレイジが波動弾を使い遠距離戦になったことで、目に見える外傷はお互い無かった。
ヴェルマーが言った休憩は、敗北で傷付けられた心の回復も含めてのことだったのだが――
「まぁ・・・体を動かした方が心の回復は速いかもしれんな・・・特にレイジは・・・」
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―なんで、なんで負けるんだ
―僕が弱いから、そうだ、僕が弱いからだ
―なんで他の友達は強いんだろう
―魔法が使えるから
―なんで僕は魔法を使えないんだろう
―――僕が弱いから ―きっと強くなれば魔法が使えるようになるはず
走りながらレイジは考える、自分がなぜ負けるのか、なぜ魔法が使えないのか―
レイジはまだ知らないのだ。魔法が生まれ持ってでしか手に入れることが出来ない「才能」であると。
魔法のいろはについて学ぶのは12を超えてからである。最も、それまでに自分がどの属性の魔法が扱えるのか、魔法が生まれ持った属性しか扱うことが出来ないということは誰しも気付くことなのだが、まだレイジは自分が魔法を扱えないことを気付いていなかった。もしくはレイジ自身が気付きたくなかったのかもしれない。
全ての属性の魔法が扱えないことは、極めて異例。能力の差はあれど、誰しも1属性は扱える魔法があるのが一般的で、どの精霊からも愛を受けていない人間は殆ど存在しない――
――否、厳密には存在を消されるというのが正しい言葉になる。生を受けた時点で、属性の適性が判別される。その際に、どの精霊からも愛を受けれなかった子は、安楽死という形で処分。無属性の割合は殆ど無いものの、非人道的な行いに反対の声を上げる団体も存在する。
この行いが黙認されいるのは、この世界において「無属性」はガルド大陸を除いて、最も重い差別対象であるからだ。先進国でのまともな生活が行うことが困難なのはもちろん、人間として扱われない地域すら存在する。過去には「無属性狩り」などという団体も活動し、その団体の影響もあって「波動至上主義」のガルド大陸以外では現在属性無しの烙印を押された赤子は処分されるのだ――
レイジは孤児である。物心が付いた時には既にハチノキ村の孤児院「ヴェルフェドーラ」で暮らしていた。
孤児院の管理者であるヴェルマーに育てられ、波動の扱い方について教わってきた。他の孤児達には魔法の扱い方を教えているのに、自分には教えてくれないことへの不満もあったが、自分だけ特別に波動の扱い方を教えてくれていることへの優越感の方が大きく、そのことについてヴェルマーに聞くことは無かった。
「魔法の使い方、聞かないと・・・」
村を一周し終わり、木陰で体を休めながらそう呟く。
たぶん皆ヴェルマーさんに魔法の使い方を自分から聞いてるんだ。自分は聞いてないから魔法が使えないんだ、家に帰ったらちゃんと使い方聞かないと。
呼吸を整え、再び走り出す。
ヴェルマーに聞けば自分が魔法を使えるようになることを信じ、ただ真っ直ぐと――
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第1話終わり!
初投稿です。もし誰かがコメントくれたりしたら100%続きかきます。
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