アリンツ島へ
アリンツ島へは港湾区画から船で南方におよそ5分程の距離で到着する場所である。船はクエストなどで手に入る”上陸許可証”があればオートでも進んでくれる。
船は、個人単位、パーティーで使うときは漁船よりも一回りほど小さい船を港湾区画の発着場からレンタルできるが、ギルドを設立し、ある程度のクエストをこなすとギルド専用の船を入手でき、出航中は、ギルドハウスと同様にログインポイントとしても使え、施設を追加すれば、ギルドハウスとしても利用でき、遠征するときに役に立つ。
ユウたち、夢幻の旋律もギルドシップを所有しており、港湾区画のNPCが管理している発着所に預けている。
ギルド本部から出たユウたちは出航をするために発着所がある港湾区画へ向かう。
中央都市区画から北西へ進むと港湾区画につながるチューブ状の通路が見える。チューブ状の通路は上半分がガラスのように透明で、青の空に白い雲が流れている。
「日本にいるみたいに空、綺麗だね〜」
メイはそう呟き、リアルと変わらぬ青空を眺めていて。もし尻尾があるならぶんぶん振っているだろうとユウは若干失礼な想像をしていると、不意に潮の香りが漂う。
ゲームとはいえ、香りなどの情報は大雑把ながらも現実と同様感じることができる。もちろん食べ物にも大雑把ながら味を感じ、当然、ゲーム内で食事をしても、現実ではお腹が空く。
潮の香りがはっきりとしてくると、通路は開け港湾区画が姿を見せる。
港湾区画は、港町まちみたい雰囲気で、船を外の世界へ送り迎えるための通路”航路”や釣りを楽しむ所などプレイヤーが何度もお世話になる場所である。
「お?ユウじゃないか?」
港湾区画に入り、発着所へ足を運ぶと不意に後ろから声を掛けられ、ユウが振り向くとつられるように隣の二人の少女も振り向き。
男は170cmの優男風であり、中性的な顔立ちで赤茶の髪に琥珀のような瞳、茶の盗賊風の服に銀の胸当て、背中には白と黒対の双長剣を背負っている。
彼の名はラキ、50人規模の”クレッセント”の構成員で夢幻の旋律とは合同で遠征にも出かけたことのある男だ。。
「よう、ラキ、今日はマイはいないぞ?」
ユウは悪戯半分に応えるとラキは若干動揺した感じになるが、少し残念そうにする。
ラキはマイに対して、好意を持っているのは身内のほとんどは気づいており、当然ユウと舞斗本人以外はマイがネカマキャラだとは知らず、キセは確信はないが勘付いていて、仲間と信頼しているので、深くは考えていない。
「あ、いや…見ない娘いるなと思って、挨拶をしに来ただけだから」
そう言いながら。笑みを浮かべメイに深々とお辞儀し、
「いつも、夢幻の旋律にお世話になってます、クレッセントのラキです。以後よろしくお願いします。」
「はいっ、こちらこそよろしくお願いしますね」
メイはつられるように深々とお辞儀をして、ラキはギルド本部に用があるからと、その場で別れを告げた。
「礼儀正しいけど。変な人でしたね〜」
「変じゃなきゃ。ラキは空気。」
言いたい放題言う二人であった。
少し歩くと、周りをフェンスで囲い、入り口のゲートの先に、海側には受け付けというコンビニサイズの建物で、受け付けを海で挟む反対側には船が格納されているところであり、ユウたちは受け付けに入り、カウンターのお姉さんに端末をみせ、入り口と反対側に、ある出口に向かうと海から反対側の巨大な倉庫風の建物の海に直接つながるゲートがゆっくりと開き、全長40メートル高さは5mほどの白い小さな客船が姿を見せる。
夢幻の旋律の所有するギルドシップ”オリゾン”である。
オリゾンは発着所へ到着すると、ユウたちは、中から出てきたNPCの職人に礼をすると職人は礼には及ばないとニカっとワイルドな笑みを浮かべる。
流石海の漢だと感心するユウに、頭にハテナマークを浮かべるメイと早く行こうと目で訴えるキセに気づくと職人が降りてきた板を渡り、三人は船に乗り込み、ユウは操縦席に向かい二人は看板に向かい船が動き出すのであった。