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第59.5話「補給」

 ――――――。


 長い。長い眠りがあった。


 ―――――――――。

 

 戦闘用、非戦闘用ゴーレムを問わず全てが休眠状態に入っている。


 ウフェボック魔術ゴーレム研究所が襲撃を受けてからおよそ二千七百五十三年二百十五日十時間三分五秒経過していた。

 今や古代の廃坑と言われているこの遺跡は、かつて魔術ゴーレムを研究する施設であった。

 魔術ゴーレムとはマナストーンに魔術溝を彫り込み、人型の物体に自律的な行動を可能とするものである。良質なマナストーンほど馬力が強く、より行動を彫り込むことができるとされていた。


 ウフェボックは魔術ゴーレムの製造に長けた魔術師であった。故に、彼はマナストーンではなく、マナ基点に魔術溝を彫り込むという禁忌に手を出してしまったのだ。マナ基点は目に見える器官ではない、それを取り出すために、人間を魔術的に生きたまま丸ごと溶かして圧縮する方法が利用されていた。

 魔術を起動する際の核となるマナ基点は、マナストーンより上質な素材となった。エネルギーは強く、自律能力もはるかに高い、学習することすらできる。もとが人間なのだからあたり前だ。

 理想を賛同する魔術師と共に研究を進め、多くの魔術ゴーレムを造り出したウフェボックは、もはや人を攫う悪魔と同じようにして呼ばれていた。

 雨季が終わり、収穫期が終わった時期、イシュハーン帝国が軍事攻撃に踏み切った。

 魔術師二百七十名、宮廷魔術師五名を用いての魔術攻撃が展開された。


 攻撃は単純である。土系魔術を起動し、跡地に山脈ができるほどの土砂で生き埋めにしたのだ。


 異常なのは魔術ゴーレム研究所だった。

 魔術防御により、研究所自体に被害はなく。土砂によって生じた気圧差や空気の問題も魔術的な機構で解決した。それどころか、地表に向かって魔術ゴーレムによる掘削が開始されたのだ。


 だが、ウフェベックとその部下達は地上の光を見る前に亡くなった。

 魔術ゴーレムは飲まず食わずでも働けるが、人間はそうではなかったのだ。土砂の量は膨大であった。備蓄を食いつくしても地上まで通路が繋がることはなかった。全員餓死したのだ。


 魔術ゴーレム達のマナ供給が断たれた。

 活動を続けるためにはマナが必要である。

 魔術ゴーレム達はマナが補給される状況になるまで、スリープ状態になることを選択した。


 長い。長い眠りがあった。


 ――――――。

 

 戦闘用、非戦闘用ゴーレムを問わず全てが休眠状態に入っている。


 ウフェボック魔術ゴーレム研究所が襲撃を受けてからおよそ二千七百五十三年二百十五日十時間三分五秒経過していた。


 ――――――――。


 ――――――――ナンバー〇〇〇〇三七Sの起動を確認しました。


 独自の魔術機構により、研究所内の個体が起動したことを確認した。スリープモードが解除される理由はただ一つ、マナ供給が可能になったということだ。


 ――――――――ナンバー〇〇〇〇三七Sの起動を確認しました。


 二機目の魔術ゴーレムが独自の魔術機構により、研究所内の個体が起動したことを確認した。


 ――――――――ナンバー〇〇〇〇三七Sの起動を確認しました。

 ――――――――ナンバー〇〇〇〇三七Sの起動を確認しました。

 ――――――――ナンバー〇〇〇〇三七Sの起動を確認しました。

 ――――――――ナンバー〇〇〇〇三七Sの起動を確認しました。

 ――――――――ナンバー〇〇〇〇三七Sの起動を確認しました。


 次々と連鎖的に起動を始める魔術ゴーレム達。大きいモノも、小さいモノも、等しく起動していく。戦闘用のモノも、そうでないモノも等しく起動していく。


 間接部に異常あり。しかし短時間の稼動には耐えられる。

 装甲に経年劣化を確認。自己崩壊は無い。問題は無い。

 命令は無い。自己保存が優先される。


 ――――最優先取得目標:マナストーン

 ――――最優先取得目標:マナ基点


今回はいつもとは違う感じになっております。作者の趣味です! 好きなんです。ロボット系。地底回は「ごはんだよ!全員集合!」。

読んでいただいてありがとうございました!

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