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第4話「魔術」

ゆっくり進行です。ブックマークありがとうございます! 気長にお付き合いいただければ幸いです。

 

 何事もなく次の日の朝になった。

 どうやら、レジェルとシーナさんはとりあえず信用してもいいということなんだろう。


 冒険者のレジェルとシーナさんは、冒険者ギルドから依頼を受けてここまで素材を採りに来たそうだ。素材も集まって、野営をして帰るって途中で俺を発見したらしい。


 レジェルとシーナさんの2人は、野営を片付けているところだ。

 ひとまず安心した俺は、あぐらをかいた上にクーちゃんをのせて、頭をなでたりのどをなでたりしながら考え事だ。


 ベルランテ……だっけ? 俺は街についてからどうするべきなんだ?

 レジェルとシーナさんのように冒険者になるっていうのが、とても魅力的だ。

 

「出発するよー! マコト!」

 

 まあ、ゆっくり考えるとするか。


 クーちゃんを地面に降ろすと、俺は立ち上がる。後について森の中を歩きだした。

 道順を覚えているのか2人の歩きは淀みない。


 そういえば……。

 

 ここまでの出来事を思い出してたんだが、襲われて、川に落ちる直前になんか聞いた気がするんだよな。

 体得(ラーニング)とかなんとか。


 それって……。もしかして?


 どれくらい歩いたんだろう。ちょっと疲れてきたなあ。


「きゅっ!」

「―――止まれ」


 その時、クーちゃんが小さな声で鳴き、レジェルが緊張感のある声で俺たちに告げた。先にいる何かを凝視している。

 俺は手招きされて近くの木の幹の陰に隠れる。


 なんだ……?

 ぷるぷるした。ゼリーのような、グミのような物体がうにょうにょ蠢いている。


「あれ……って、スライム?」

「やばいわね。ここで遭遇するなんて……」

「シーナ、マコト。逃げるぞ」


 え? スライム……だよな? 逃げるほどのもんか?

 よくあるRPGだとザコモンスターだし。

 スライムの大きさはバスケットボール大。何をするでもなくうにょうにょと蠢いているだけのようにしか見えないけど。


「逃げないと駄目……なのか?」

「見つかったら終わりだぞ。今のオレたちじゃあ対処できんだろうな」

「いや、弱そうに見えるけど」


 レジェルとシーナはあきれたような顔で俺を見てきた。

 え? なんか変な事言った?


「あの身体見てみろ。剣や矢はまず効果が無い。素通りするだけだ。あの身体に組み付かれるとはがせない上に余裕で食われる。移動速度はたいしたことはないが、魔術で攻撃をしてくる」

「どうやって倒すんだよ……」

「1つは鈍器で潰す方法だ。ただし一撃で潰さないとスライムの身体の中で武器が動かなくなるがな。もう1つはこっちも魔術を使うことだ。ただし、オレもシーナも攻撃魔術は使えない」

「レジェルっ! 見つかった!」


 スライムの蠢きが止まっていた。

 こっちを見てる……気がする。


「<身体能力上昇(フィジカライズ)>っ!!」


 魔術――ッ!


 シーナさんの手元に小さな魔法陣が現れたかと思うと、光の粒子になって砕ける。


「マコト。逃げるぞ。スライムは意外と速いが、この距離なら逃げ切れるはずだ」


 レジェルは俺の腕を掴んで、少しずつ後退している。

 シーナさんはものすごい速さで弓に矢をつがえたかと思うと、スライムに向かって2連射した。


「おおっ!」


 ずどどっ、とスライムを地面に縫い付けるように矢が命中するものの、意に介さないように前進してくる。


 なるほど、ありゃ厄介だわ。水を斬るようなもので、剣で斬ってもだめなわけね。


 でも、今の俺ならなんとかなる……はず!


「シーナさん。魔術を使うってどんな感じか説明できたりしない!?」

「それ、今言わなきゃだめなのかな!?」

「もしかしたら何とかなるかもしれないので、今」


 弓で足止めしようとしていたシーナさんは、俺たちのすぐ近くまでかなりの速さで戻ってくる。


 今、7mくらいをジャンプ一発で戻ってこなかったか?


「やり方は人によって違うって言うけどね。私はどんな魔術を使いたいのかイメージして、そこにマナを注ぎ込むの。物を投げる時って筋肉に力を入れるでしょ? その感じかな?」


 シーナさんありがとう。


 燃える火の玉をイメージ!

 

 あとはマナを集める!


 出ろ!


 おおおおお! 出た!


 俺の掌に魔法陣が出ると、シーナさんのときのように割れて光の粒子となる。そこに残ったのは拳大の火の玉!

 

 あの時俺の脳内で響いたのは<魔術「火」初級>とか言ってたはずだから、たぶん火の魔術が使えると踏んだが、正解だな!


「飛んでかねえ!」


 出たのはいいけど何で飛ばないんだよ!

 ちくしょう! 投げてやる!


 俺は火の玉をふりかぶると、スライムに投げつける。少し山なりに飛んだ火の玉は、スライムの近くに着弾すると思ったより小さい爆発を生み出した。


 しょぼい。

 あの時俺が食らったやつの何分の1なんだよ。

 でも効果はあったな。


 爆発を食らったスライムは、しばらくぶるぶる震えると、べちゃっと溶けた。


「マコト、オマエさん魔術師なのか!」


 レジェルの驚いた顔に、優越感を感じる。


「使い方はまだよくわかってないけどな」


「マコト!」


 うぉっ! なんだ?


 シーナさんが投げてきた何かを俺は思わずキャッチする。ていうかいつのまに移動したんだシーナさん。

 手の中にはビー玉のような石。これ、スライムの死骸から採った何かか?


「スライムの核石だ。街で換金して宿代にでもするといい」

「いや、俺、命を助けてもらったし。差し上げますよ」

「気持ちはうれしいがな、マコト。オマエさん、荷物も何も流されて、金は持ってるのか? 街についてからどうする気だ? 金をやることはできんが、オマエさんが倒した魔物の素材だ。もらって足しにしておけよ」


 そういうことは全然考えてなかった。

 レジェルの優しさに本当に感謝です。ありがたくいただくことにしよう。


「よし、ここを抜ければすぐだからな! 頑張って行くか!」


 元気よく進みだしたレジェルを追いかけて、俺たちも歩きを再開した。



 魔術、使えたな。

 これが神様のやろうの言ってた特典なのかはわからんが、ひとつ前進だ。



読んでいただき、ありがとうございました!

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