プロローグ「リスタート」
初めまして。読んでいただいてありがとうございます!
頑張っていきたいと思います! 更新はだいたい2日に1回くらいのペースでがんばりたいと思っています!
遠くから音が聞こえる。
ごおおん、ごおおおん、と低く響く音。
疑問に思う前に意識が覚醒した。
目の前にあったのは真っ白な世界。地平線の果てまで真っ白が続く。
途方も無い広さに、目が痛くなるような無機質な世界に、俺は立っていた。
俺の名前は水無瀬 真。二十五歳、会社員。二年目の平社員だ。ブラックな仕事場からようやく撤収して帰宅しようとしていたところまでは覚えているのだが、その後のことが思い出せない……。
「ああ……。俺、死んだんだっけ?」
思い出した。
徹夜二連続の上に、持ち帰り残業。体の限界に立ちくらみがして、駅のホームから落ちたんだっけ。
「だっせぇ死に方……」
両手で顔を覆ってしゃがみこむ。
死んじまってどうしようかなあ。できれば彼女とか作りたかったなあ。
あ、そういやレンタルDVD返してないわ。通話料金払ったばっかなのに。
そうやパソコンはどうなるんだろ。あの俺しか見ねえと思ってるから秘蔵フォルダが出しっぱなし……っ!
しばらくもだえてみるが、もうどうしようもない。むしろ、死んだあとに考えることができるほうが驚きだ。
それで、どうしたもんかなあ。この状況。
「これが、死後の世界ってやつか?」
「そうともいえるし、ちがうとも言えるだろうね。死んだ君の魂をインターセプトして、ここに引き寄せたんだ」
こいつ……。いつの間に?
誰にともなくいった問いに答えが返ってきたぞ。
気がつくと俺の背後に一人の男がいた。
いや、「居た」という表現もちょっと違うか。なんでこいつ、ソファーに寝転がって山積みにした漫画を読みまくってるんだ……?
整った顔立ち、ゆるくウェーブした金髪。漫画にでも出てきそうなイケメンだ。ゆったりとした服装。昔のローマ人のような姿でぐうたらしてる姿に、ひどく違和感を覚える。
「いやあ、君の世界は面白いね。こんな楽しいものがいっぱいあるなんて」
「いやまあ、娯楽には事欠かないと思うけど…。ところで、何で俺はここにいる…んですかね?」
なんだかよくわからんが一応敬語で話しておこう。怪しさ爆発だが、この状況において俺より詳しいやつだろう、たぶん。
「うん。さっきも言ったけど、僕が呼んだんだよね」
よっこいしょ、といいながら男は身を起こした。じじくさい。
「僕の名前はパルスト。君たちのいうところの神だよ」
……は?
「あの世界で死んじゃった君の魂、もったいないからうちでやり直してみない?」
これはあれか? いわゆる転生……というやつ?
「今ならちょっとした特典もつけてあげよう。君たちの世界では、そういうの好きみたいだね」
「おお!」
あれか! <身体能力上昇>とか<物理攻撃無効化>とか!
お金を自由に生み出せるとか、運がとんでもなく良くなるとか!
生身でチートキャラ、最高! そんな状態になるんだな!
「オッケー! やるやる!」
「――イエスと言ったね?」
……あれ? 神様? なんか顔が怖いんですけど。
「契約成立だ! これ以降は君の才能と技能と才覚で生き残って僕を楽しませておくれ!」
ガコォオオオン、と一際大きな音と同時に、俺の足元にぼっかりと大きな穴が開いた。まじかよ。
「ちょっ――――ッ!?」
胃が持ち上がる浮遊感と、不吉な予感がないまぜになって俺の体に襲い掛かる。
ちょっと待て! 事前情報なんもなし!?
視界は一瞬でホワイトアウトした。落下する轟音で何も聞こえない。
「――生まれなおす君に幸あれ!」
かろうじて神様の声が聞こえた。
なに言ってやがる!
くたばれ! 神様!
くそっ……! 次の人生は……好きに生きてやる……!
次もよろしくお願いします!