猫耳日記1 忙しくなるな
現在夜の九時。いつまで経ってもあのバカ親から電話が来ない。こちらから一回電話をしたのだがでないのだ。
「さてと、どうしたものか…」
俺はベッドに寝かしている猫少女を見る。綺麗なプラチナブロンドの髪。綺麗に整えられた顔。スラッとした体型。そして、頭についている猫耳とお尻のあたりについている尻尾。
「本物…なんだよな」
俺は試しに触る。すると彼女は少しくすぐったそうに震えた。
「あのバカ親、ついには人にまで手を出したか…」
俺の両親は闇医者だ。元は正規の医者だったのだがあまりにも解剖や実験の度が過ぎるためやめさせられた。それからは、その神技術を誰しもが狙って俺の両親を奪い合った。その結果、両親は「それぞれの物になるから戦争ごとはしないでくれ。俺たちは俺たちの意思でお前らの力になる。だから、それまで待て」とそれぞれ完璧な外国語で対応し現在はロシアのロサンゼルスにいるはずだ。だが、俺の両親がやっていることはあくまでも非人道的なことだ。やっていいことじゃないんだ。たとえば、今回の彼女のような勝手に遺伝子配合を書き換えたりとか。俺は目の前の猫少女が目を覚ましたらいろいろと事情をきくつもりだが、それをしようにも親の電話がないと元も子もないのだ。なにしろ、さっきの会話では会話が成立しないからだ。
「大丈夫か?」
「にゃ…」
この猫少女は俺らの言葉を喋れるのかわからないのだから。すると、急に机においておいたスマフォがセカオワのRPGの着メロが流れ始めた。これは、両親専用の着メロだ。俺はすぐさまスマフォを手に取り通話ボタンを押す。
「もしもし」
「もしもし!私だよ?わかるかな」
スマフォの向こう側では若い女性の声が聞こえた。
「母さん、あれはどうゆことだ。」
「もぉ〜つれないなぁ〜。お母さんこんなにもがんばってるのに!」
「ついには人にまで手を出しやがったな」
「うん!我慢できなくてやっちゃった!てへ!」
「てへじゃねぇよ!どうすんだよあの子!」
俺が母親の態度にイラついていると次は若い男性の声が聞こえた。
「迅、お久しぶりだな」
「あぁ、父さん。それよりも…」
「わかっている、すまないとは思ってるがこうするしかほかに手段がなかったんだ」
俺は父さんの声と話を聞きだんだんと冷静を取り戻していく。
「どうゆうことだ?」
「彼女はな、銃で頭に二発、体に五発貰っててな」
「なっ!」
これは驚いた。頭に二発に体に五発ってそんなの…。
「あぁ、最初は俺も死んでるんじゃないかと思った。けどな、その子はその銃弾を受けてもなお生きていたんだ。虫の息だったがな」
「そんな、なんでそんなことに…」
そんな俺の疑問に父さんは答えた。
「戦争に巻き込まれたんだよ」
「戦争…」
父さんの言う戦争とは父さんと母さんを奪い合う戦争のことだ。父さんと母さんはすべての外国を説得はした。だが、やはり我慢のできないやつがおりそいつが戦争をおこしているのだ。
「また、中国なのか?」
「あぁ、あの国は個人的にはあまり関わりたくないのだがね」
中国、全世界に向けて核攻撃を仕掛けようとした大国。だがそれは、アメリカ、ロシア、日本、イギリス、ドイツの連合に阻止されたのだ。それ以来、アメリカ、ロシア、イギリス、ドイツ、日本の外交関係はよりいい方向へと向いたが中国は外交関係を封鎖した。当時、ほとんどの製品、食物を中国に任せていた日本はこれをロシア、ドイツ、アメリカの三国に補ってもらっていた。そして、俺の両親が表に出たせいで中国がその技術を狙い両親がいる国を片っ端から戦争を仕掛けているのだ。
「それで?」
「それで、な。その子は俺たちのせいでこんなことになってしまったんだなと思うと胸が痛くてな。せめて、この子だけでも救ってやろうと思ってな」
「じゃあ、なんであんなことになってんだ」
「あんなこととは猫耳と尻尾のことかな?」
「そうだよ」
「迅は猫好きだろ?」
そういう問題じゃねぇ!」
「あはは、そうカリカリせずに牛乳でも飲みなさい。冗談だから」
「そういうタチの悪い冗談はやめてくれ」
「そうだな、ここからはちょっと長いぞ?」
「構わねーよ」
「そうか」
そういうと、父さんは一度呼吸を整えて説明を始める。
「その子にはな遺伝子として一番なければいけないものが破壊されていたんだよ」
「遺伝子で一番なくてはいけないもの…」
「まぁ、詳しくは言わないがそれが欠けていてね。それを補うためにはほかの人の遺伝子か…」
「ほかの人って!まさか…」
「そう、そのまさかさ。その子を生かすためには他の生きている人の遺伝子が必要なんだ」
「それで…」
「だが、それはわたし達にとってもやってはいけないことでね。だから…」
「かわりに動物の遺伝子を使ったと…」
「そういうことだ。それで、ああいうふうになってしまったのだよ」
「あの子は喋れるのか?」
「あぁ、ひとついいことを教えてやろう。猫というのは人よりも知能指数が遥かに高い生き物なのだよ。つまり…」
「つまり?」
「わたし達の言葉など覚えるのに雑作もないというこだよ」
「なるほど。じゃあ、喋れるのか」
「そうだ、喋れる」
「それはよかった」
「それで、なんで猫なんだ?」
「じゃあ、ひとつ質問しようか」
「?」
「迅は動物の遺伝子を女の子に組み込むとき今からいう選択肢の中から選びなさい。一、カバ。二、猫。三、ヘビ。さぁ、どれがいい?」
「なるほど、それは二になるな」
「だろう?さすがに一と三は酷いだろ?」
「それで、俺は彼女はどうしたらいいんだ?」
「迅は確か猫カフェをやっていただろ?」
「あ、あぁ」
いまも、彼女のまわりには俺が飼っている数十匹の猫が囲んでいる。
「それでだな、猫の声がわからないとお前も大変な事がいろいろとあるだろ?」
「まぁ、それは…」
「その子なら猫の気持ちを知ることができるぞ」
「そうなのか?」
「それはね、なにしろ猫の遺伝子を受け継いでいるのだからね」
「それで、本当は?」
「実のところ。ここ最近忙しくなってきてね。彼女の面倒がみれなくてね。悪いとは思ってるんだが迅に彼女の面倒を見て欲しいんだ。頼む」
スマフォの向こう側で父さんが謝っているのがわかる。
「わかったよ。それに、こいつらの気持ちを知ることができるならお安い御用だ」
「「「にゃー」」」
猫たちが俺の言葉をわかったかのようにみんないっせいに鳴いた。
「ありがとう、迅」
「いいよ、いいよ。それよりもお仕事頑張ってな。父さん。母さんも」
「あぁ、ありがとうな。あとで、その子についての詳細をメールで送る。今日はもうお休み、迅」
「あぁ、おやすみ」
俺がいい終えるとスマフォがツーツーとなり電話を終えた。
「さて、これから少し忙しくなりそうだな。」
そうして、俺は明日を覚悟するのだった。




