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キルトリ KILL-TORI  作者: モノクロック
EP.04 to京 WARGAMES
57/63

4-11 Stage:網状都市[中層⇔下層]/???th BUG`s『子どもたち』

 

 ヒトガタの狂ったような挙動に、将司は対応できなかった。

重たい武器を捨て、バックステップ。

カードを切り、「盾」を発動させる──


ヒトガタは無効化された回し蹴りに怯むことなく、手を前に突き出す。

重力。

腹をぶち抜くような波動が、将司の体とビルの中の3つの壁を吹き飛ばし。

勢いはビルの中央の柱が爆散したところで、ようやく停止する。

左脚の全体、灰色。動きが鈍い。

ヒトガタは浮遊しながらビルの中へと進行し、将司を追い詰めようとしている。

最悪だ、と将司は思う。



「たまんねえよな」


悔しげで憎らしげな眼光が、乱れた髪の中から三角錐の集合体を睨み付けた。





悠月は空中で、G・スクエアを操作しながら、弧を描いて飛んでいた。

連続して産み出す重力。

その全てとの離反。

方向転換される身体。

80°。


下方の悠月が吹き飛ばした方のヒトガタに目を留め、

完全に沈黙している事を確認した後で、将司の元へ向かう。

「悠月!電車を──」将司の叫び声。途絶える。

放っておくわけにはいかない。


左に体を倒し、

元の重力を頼りに、落下。

落下しながら水平に戻したところで、地面との水平方向にスクエアを射出。

加速する身体。

重力。

建物が視界の右から左へ。右から左へ。

右から──

急停止。

将司のたたきわった窓が。


悠月はビルの内部に見えたヒトガタの後ろ姿目掛けて、剣を突き立て突進──刺した。

ヒトガタは2つの方向から攻撃を受けていた。

将司の巨大な拳が三角錐の顔面をくぼませ、悠月の剣先は胴体の目玉から少しズレた場所に刺さっていた。

ヒトガタは壁の無惨に剥がれ落ちた建物の中で動きを停止させ。


3秒。


甲高い声。

分解されるヒトガタ。

バラバラになった三角錐が、2人の体を吹き飛ばし。

目玉だけが残っていた。


「……なん」


口を開きかける将司に、つんざくような悲鳴が。

収束されるエネルギー。

吸い込まれそうになる体を抑えながら、

目を瞑る悠月。

悠月の蹴ったヒトガタの断片をも収束され。

目を開いた時には、2つのヒトガタの体が目の前に作り上げられていた。


『……奴にとどめをささなかった俺のミスだ』歯ぎしりする悠月は、そう言おうとした。

「悠月、俺の号令でビルから離脱しろ」既に立ち上がる将司は、それより早く口を開いていた。

「そして……『そっちサイド』の柱は頼むぜ」

悠月は言葉の意図をすぐに理解した。


無茶苦茶なオーダーを……悠月はそう考えながら、将司が後方に四角形を射出するのとほぼ同時に、悠月も青い四角形で後方の、線路を跨いだ先のビルをとらえる。

離脱――

 着地。


2つのヒトガタが怪訝そうに首を振り回し。

互いに別々の敵を追おうとしたところで。

対戦車ロケット弾の爆音。


壁に張り付いていた悠月の体が、引き戻され。

高架下をくぐり抜け。

煙の中へ。

煙の中で、切られたカードの、大剣の一閃が。

ビルの柱を砕く。


ビルの反対側で、爆砕音。

残された壁が軋む声をあげたので、

離脱。再び。


柱を無くしたビルは、悠月の目の前で音を立てて崩れ落ちた。

ヒトガタは、それに飲み込まれていった。

『防衛機構』は駆逐した……

悠月はそれを目にしながら、後方の重力に引かれ──

着いた先の地面が、

激しく、動く事に戸惑った。

目を走らす。

壁面。

──見覚えのある顔。……姉の顔。不安気に俯く朱里の表情が。

静止画が切り替わるように、それは動いている。

走り続けている車両の窓に当たる部分に、それが映し出されていた。


──嘘だ!ハッタリだ!


悠月は心の中で叫びつつも、その場から動けずに。

『投影された姉』がこちらに気づいてはくれないだろうかと、何度も呼び掛けた。

何かが車両の上、否、その上を覆う四脚のBUGの上に落ちてきた音。

将司。

巨大な拳を、不気味に動く四脚の上に突き立て──カードを切る。


「『2つめのC・スキル』だ」


将司は眼下のBUGを睨み付け。

巨大な大砲に姿を変えた腕を。

BUGの赤い目玉に、ぴったりとつける。


「くたばれ……!」


何かおかしい……! 悠月が口を開こうとした瞬間だった。

廃墟のように黒く沈黙していたビルが不意に息を吹き返し、モニターになった。

幾つものモニターには、同じ弥生の顔が映し出されていた。

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