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到着の時刻は迫っていた。その時間通りに電車が着いてくれる保証は、どこにもなかった。正確に言えば、『それが早まる可能性があったのだ』。
各『外陸』から京を繋ぐモノレールの線は、全てが中心都市のそのまた中心の、同じ場所へと繋がっている。しかし各々が独立している分かりやすい設計になっていて、それ以外のどこにも繋がってはいなかった。つまり、京の駅についてしまえば『その先の線は無い』――それを過ぎた列車は、別の線の切り替えによって車両基地へと回送される。つまり、折り返す事を前提とした『線路の終わり』しかないのである。『メタグロシィ』とアティオ-京湾岸線車両は最早ひとつの物体となって、『終わり』へと走っている。故に考えられる最悪のパターンは、想定されていない線路への突入による『何か』との接触、あるいは脱線……
速度をゆっくりと増していく電車。車両は『メタグロシィ』との断続的な接触により激しく揺れ、車内は絶望に満ち溢れていた。
子どもの鳴き声が響いていた。母親は「大丈夫」「大丈夫だから」と根拠の無い言葉を何度も何度も繰り返し、自分すら泣きそうな気持ちで一生懸命の笑顔を子どもに見せていた。
「坊や」
ふと、差し出される手があった。子どもは鳴き声を抑え込み、濡れた目を懸命にぬぐい、キャンディを差し出したその女性に目を留めた。朱里はキャンディの包み紙を広げ、その男の子の口の中にキャンディを静かに差し入れてあげた。
何度かこけそうになりながら座席につくと、一気に力が抜けていった。大丈夫、大丈夫……鋼鉄のすれる音に何度も負けそうになる言葉を、心の中で繰り返しながら目を閉じた。怖い事なんて何度も合ったじゃない。私、抜けてるんだからさ……嫌われるとか、失望されるとか、一人にされるとか、そういう恐怖に比べたらこんなもの全然怖くないもの。少なくともこの怖さは一人のものではない……朱里は口を開きそうになるほどことばを頭の中で繰り返し、心臓の奥から飛び出そうとしている物を、何度も何度も抑えつけた。
「運転士が……!!」
前の車両の方から血相を変えた人が飛び出してくるのを、朱里はもう気にしないと心に決めていた。




