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これから一番高くなるだろう日の光だけが差し込む、例の特別教室。
同じ袋に梱包された2つのパンが、テーブルの真ん中で寂しく身を寄せ合っていた。将司が先程調達してきたパンだった。それを覗きこんで同時に溜息をつく悠月と葵をよそに、将司はあらぬ方向を向いて口笛を吹いていた。
「お前が購買戦争の王子様っていうから頼んでみたらよお」舌打つ葵が、口笛を吹くプリンスに、いつもの如く女子とは思えない語調で吐きかける。
「なんだこの様は」
「だからもう、俺はいいから二人とも食べなって」
「ちげえよ、クリームパンとチョココロネとはどういう了見だ? あんなに意気込んで串揚げバームクーヘン調達してくるっつてたじゃねえか」
「あれ?月に一度しかでないんじゃなかったっけ?」葵のしょうもない抗議に一応悠月は口を挟む。
「いやあ、レアめの良い事が立て続けにおきるとさあ、そろそろ世界終わるんじゃねーかって思えてきちゃうよね」両手でやれやれ、といった体勢を作る将司。
「話題逸らしてんじゃねーよお前が終わるのか?」と葵。
「というかこれっぽっちの飯で昼から始まる真の戦を生き延びようとするのが無理な話なんだよ」
「つかオーダーに沿ってないから金は払わん的なアレか?言う位なら自分でちゃんと用意してこいよ」
悠月の言葉を葵は鼻で笑う。
「私が言いたい事はそんなことじゃねーよ」
「あんだよ」
「おーっ、やる気か!?お前らやる気か!?」側面のひん曲がった教卓でバリケード作ってヤジを飛ばす将司。
「金は私とお前とできっちり払うけど、2つのパンは全て私がもらう」
「言ってる意味が全然わかんないよ?」
「見せてもらおうじゃねえかってことだよ、修行の成果って奴を」
ただならぬオーラが悠月と葵と、机の上にちょこーんという擬態語と共に置かれたパンを取り囲む。
「こ……これは」購買から持ってきた2つのパンから飛び散る火花、正に購買戦争……
モノローグと言う名を冠した更なる煽りを入れようとした将司の肩を、叩く者があった。
「丁度大学のチョココロネ売切れてたのね、はいお金」
「うわあっ、八雲先輩!?」
チョココロネ分の代金をきっちり左手で受け取りつつ、将司は驚愕する。しれっと黒板の方から姿を現した天才ハッカー女子大生は、既に半分ほどが消失したチョココロネを握って美味しそうな物を味わう時の顔をしていた。
「うわあああ何してくれとんじゃ姉御おおおおお!!」
普通に驚く悠月と違い、葵は金切声に近い怒りの雄叫びをあげていた。
「フィールドは用意してあげるから十分に戦うといいわ」
「生死問題なんじゃぶちこするど貴様ああああ!!」
無邪気に笑う八雲弥生を八つ裂きにする勢いで喰らいかかろうとする葵。それをはいはいはいはいと言いながら必死に抑えつける悠月。葵は身を翻して、足を机の角にぶつけつつ、悠月を睨み直した。悠月は参ったな、といった様子であの時の自分の無様な状況を知るであろう先輩に意義ありそうな目線を投げかけた。




