4-1(Ⅱ)
僕は目を開けた。
閉め忘れたカーテンの隙間から漏れていたのは、裏切らない朝陽の断片だった。
窓の外は何があるのかわからない程強い光に満たされていて、悠月は窓の外に何があったのか思い出せない程強い光に眩みそうになっていた。
確かなのはここが自分の部屋である、ということだけだった。
学習机は隅の方に追いやられ、目を通してもいない本の山を除けなければその椅子は引く事が出来なくなっていた。
湿った空気が滞っていた。悠月はその嫌な空気に追いやられ、逃げるようにベッドの淵の旧世代スマートフォンに手を延ばした。
時刻は、いつもの起床時間より15分も経った時間を示していた。
誰もいない部屋に舌打ちを捲きつつ、悠月は布団を払いのけて、カーテンを開けようとした。
部屋は既に、新鮮な風に満ちていた。昨夜確かに閉めた窓は開けられ、しんとした部屋の中で暖かな黄色のカーテンだけが微かに揺れていた。
リビングに入ったところでおはようと口にしかけた。それを返してくれる人はもう出かけていた。
霧が集まっているみたいな眩しさの中に、テーブルの上に幻想みたいに、無差別に皿に積まれた、昨日の残りのコロッケと、乱暴にラップに丸め込まれたおにぎりだけがあった。悠月はそれを乱暴に口の中に押し込んだ。相応の態度を取ったつもりだった。




