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キルトリ KILL-TORI  作者: モノクロック
Ep.01 カソウへ落ちる
2/63

1-1

 初夏。

 少年は目を開いた時に、今が一体いつなのか、それを思い出す。

 高速で流れるのは、窓の外の風景。

 青い稜線だけが緩やかに動き、彼はその麓に広がる住宅街を見下ろすようにして、普通列車の座席にもたれかかっている。


 今夢の中で見たのと同じ感じだな、と彼は思う。

 自分が知らない物がそこには広がっている、という点に関してだ。

 自分が知らない物がそこに広がっていると、

 ここに自分は本当にいるのか、なんてつい考えてしまう。


 対面式の座席だが、前の座席に人は座っていなかった。

 確かにまだ朝早い時刻だが──そうだとしても座席が空きすぎている。


「起きたの?」


 隣で彼を呼ぶ声がある。溜息交じり。


「もうそろそろ着くから、準備しときなーよ」


 呼び声の主――佐伯朱里は、そういいながら膝元に置いたメモ帳にシャープペンシルで何事か記録していた。彼はそれを横目でちらと見たが、窓から差し込む光のせいで、彼女の顔色すら確認することは出来なかった。日の光をもろに受ける彼女を見て、眩しくはないだろうか――と少年は少しだけ思う。


「あそこにほら、学校が見える」


 彼女が指さした先に、校舎は見えた。

 山の中腹にある白い校舎は、ここからだと本当に小さく見える。


「良かったよね、母さんの病院が近い高校が取れて」


 朱里の言葉に何も返さず、少年は微睡みに引き摺られたままの視線を白いものに向けていた。やがてトンネルに差し掛かり窓の外が暗転すると、彼はまた目をゆっくりと瞑っていった。

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