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年の瀬

先日、クリマス会をやったと思ったらもう年末です。今年は、年賀状も書き終えました。今年は、28日と4日前に投函できるだからたいしたものです!えへん。そうはいうものの大部分は、主人の仕事です。絵の得意な主人はこいつに命をかけています。


新婚当初はプリントごっこでした。結婚して、倍に増えた200枚前後の枚数をせっせと4~5版を使って印刷していたのです。まず、水彩画の原画を描き、それをトレーシングペーパーで色毎に写し取り、製版して行くらしいんです。色が交じらないのが不思議でしたがスポンジのようなものを貼り付けていました。よくわからないのですが、こうすると少ない版数ですむのだそうです。もし、これがなかったらどんな数になっていたのでしょうか? まさに、職人芸です。さらに、進んだものとしては網点印刷機まで発売れており、ほしがっていましたが却下しました。乾燥のためにストーブをつけて部屋を暖かくし遅くまでがんばっているようでした。子供も小さくじゃまをするので大変だったみたいです。5版で200枚の場合、1000回ギッタンバッタンとするのですから・・


やがて、10万円以上もするスキャナーというものが現れ、複合機というものが出てきてずいぶん楽になったそうです。私はまったくタッチしていないのでよく知りません。こうして、下絵を描いてスキャナーで読み込み、宛名書きソフトで印刷すればおしまいなのです。しかし、いつも遅くなるのが常でした。何でも納得のいく原画が描けないのだそうです。そこは芸術家魂がうずくらしいのです。私もピアニスト(只のピアノの先生ですが・・)ですから、なんとなく解る気がします。


今年は、主人が全部やってくれました。原画を描いてデザイン面を印刷し宛名も完璧に・・・ああ!これ違っている!チェックをしていて気がつきました。どうしようかと迷いましたが、宛名の印刷ぐらいならできそうです。伊達に毎年作業を手伝ってはいません。


「えーと,ここのスイッチを起動して・・・わぉ、なんやこれは!」

「ママ、これちゃうか?」という智勇サトルです。

「いや、こいつをさわっていたで・・・あ!おかしい。」

「わぁ、由縁ユカリ姉ちゃんが・・あっ!消えた。」というミノルです。

「あっ!こら勝手にさわるな。真っ暗になったじゃないの。」という私です。

「だって、パパが動かないときの最終手段はこれだって・・」

 由縁ユカリはなんとコンセントを抜いていました。いきなりやって大丈夫なのかしら・・

「ともかく、スイッチを入れてみようか。」

 ブーンと音がして、画面にでましたが・・うーんわからん。何で横文字がでるの!ちらりと、子供達をみると、由縁ユカリは消えていました。小ずるいヤツめ!

「ともかく、どこか押してみたら?」

「ちょっと、まって、触るな!パパに電話するから!」

 会社で仕事中の主人に携帯で電話します。

「どうした!」

「パパ、大変なの。エジソンさんが・・英語をしゃべっている。」という私です。

「はぁ、おまえ頭確か?いきなり何を・・エジソンは確かアメリカ人だから当たり前だろ。」

 私はことの次第を話します。ちなみに、エジソンとは我が家のデスクトップPCの愛称です。

「え?!なに、コンセントをいきなり抜いたあ? バカ、そんなことをしたら、ハードディスクが壊れて、データが吹っ飛ぶこともあるんだぞ。」

「それって、どうなるの。」

「写真とか文書が読み出せなくなる。すなわち、消えてしまうのと言うことだ。200名以上の住所も大切な思い出写真も消えてしまうんだ。」

「ひぇーー」

「ともかく、何かのキーを押してみろ。」

「あっ・・もとにもどった。いつもの旗の絵が出たよ。」

「そうか・・最悪にはならなかったようだな。ともかく、ログオフをしよう。それはなあ・・・」

 結局、主人が夜に帰ってきてから、修正して再印刷してくれました。宛名書きソフトの使い方をやっと覚えたので大丈夫と思ったのに、思わぬ罠が待っていました。


年末は、いろいろ大変です。大掃除をやらねばなりません。今年は年末に主人がいないのでことさら大変でした。実は今年から、主人が私の実家の清原家に帰っておせちを作ることになっているのです。

母が『毎年、大変や』とぼやいていたので、『主人が手伝いましょうか』と申し出たところ、二つ返事でOKがでたのです。私の場合は、任せるところが無いと言っていましたのに・・なんでや!

その結果、今年の年末は、母と二人で仲良くおせちを作り、我が家と弟夫婦に配るということになったのです。様子伺いに電話をすると、『手先が器用で、千賀子より速い。ほんまに良い嫁さんやわ。』と言っていました。おいおい、婿さんやろ!


主人は器用で電気屋や水道屋の仕事を平気な顔でこなします。昔、電気屋さんでアルバイトをしていので、電気に恐怖感が無く、背が高い上に照明の取り替えも平気です。なんと、1階のクーラーは主人が電気屋さんで道具を借りて取り付けたものです。インターネットで安いやつを買い、取り付け費用をケチったのです。その際に、ブレーカーまで取り替えて200Vのコンセントにしていました。(電気工事免許のない主人がやったことは内緒ですよ。)

私の実家、清原家は電気が怖いです。こんなこと考えられません。例えば、電気の笠を掃除するのは大変です。電気屋さんに来てもらい蛍光灯を替えてもらい、そのついでに取り外した笠を掃除するのです。そして、掃除をした電灯をつけてもらうのです。今から思えば、切れてもいない蛍光灯を交換するなんてもったいない話ですが清原家ではでは当たり前の話でした。日下部家では、ひょいひょいと交換してくれる主人がいるのでこんなことはあり得ません。


今年は清原家の私一人でどうしようかと思っていました。ところが、智勇サトル由縁ユカリが、主人の代わりをしてくれることがわかりました。初めは、脚立の下で主人が外した照明を受け取るが精々だったのですが、最近では、取り外して取り付けることができるようになっていました。子供に任せるのは不安なのですが私はできないのです。あいつらよく怖くないなあ。たしかに電気は怖くないようなんですが……子供のやることですからおとなしく交換するわけがありません。


「姉ちゃん。揺らしたら怖いでえ。」

なんだか思いっきり伸ばした脚立がガタガタと揺れています。由縁ユカリのしわざです。

「何をしているの。危ないじゃあないの」

「うぎゃー。」

ガタンと音がして、とうとう智勇サトルが足を踏み外したのです。そして、慌てて梯子にしがみついたのですが、股間が……やっぱり、智勇サトルも男でした。


スポンジで網戸を泡だらけにし、シャワーで流します。窓も外して洗います。しかし、外した窓ガラスがなかなかもとに戻せません。

「あれ、入らないわ。何を間違ったのかしら・・」

「ママ!何をやっているの。」

「ちょっと持って、こうやでぇ」

「いや、反対じゃないの。」

「うーん、ちょっと待て、よく考えよう。」

「確か。この文字は内ににむいていたよな。」

「そうそう!」

 主人がいれば簡単にすむことなんですが・・ああ、めんどくさい。

「あとは、やっといて、私は買い物に行ってくる。」

「えー、こんな重たいものは、小学生じゃ無理やでぇ。」

「ママ、そんな。このままやったら、僕らの部屋は吹きさらしや。」

毎年は主人がやっていたことなんです。私はおせちに必死になっていました。今年はまるで逆です。おせちは作らなくても、買い物にもいかないといけません。私は子供達の恨み声をスルーして出かけました。


 大晦日です。主人がおせちをもって帰ってきました。

「ただいまあ。」

「ああ、パパだあ。」

「お帰りなさい。あなたがいないから大変だったのよ。」

「そうか。ご苦労さんだったな。着替えてくるよ。」

 そう言って、主人は3階の寝室に上がっていきました。

「なんだ。3階のこの寒さは・・」

 当たり前です。3階は窓をうまくはめられなくて開けっ放しになっていました。本来は寝室なのですが、寒くて眠れません。2階の居間のこたつで寝たのです。

「ごめんなさい。洗うのはできたのだけど。窓がうまくはめられなくって・・」

「網戸は外だけど、溝が違うんだ。ここにはめ込むからダメなんだ。」と言う主人です。

そう言いながら、神業のような手さばきで、主人はいとも簡単に窓をはめてくれました。わぉ、すごい!パチパチ・・。主人には後光が差していました。

「いいか。形をよく見るんだ。そして、これがどんな役目をしているか考えるんだ。」

「よくわからない。」

「わからないとがあるか。これは、ロック部分の台座だろう。だからこれは外だ。そして、これが見えるように外側につけねばならない。」

「・・・」と、難しい理論を語る主人に黙り込んでしまいました。

「あんた達、よく見て覚えなさい!」

「それって、ママは逃げる気か。」と言う智勇サトルです。

「いや、あんた達の将来のために、ちゃんと見ておくのよ。私は年越しの用意があるから・・」と、言って私は台所に戻りました。


残った仕事は、お風呂と車の掃除です。ともに子供が大活躍です。お風呂の汚れ落としは由縁ユカリ智勇サトルです。主人は、ミノルと一緒に車をあらいます。ガソリンスタンドで洗車機を使うなんて論外です。だれがあんなモノに金を払うか。主人と子供はブツクサと言っていますが・・


娘と息子がお風呂の壁の泡を流し終わり、主人達が車にワックスを塗りたくって戻ってきました。

「おっ、ぜんざいだな。いい匂いだ。」と、居間に入ったとたんに言う主人です。

「餅をたくさん買ったから、炊いたのよ。どうして、わかるの。」

「ちょっとせいべいの焦げた匂いと豆を炊いている匂いがしたからな。ちがうのか。」

まるでイヌです。確かに戌年ですが・・

「車はどこまで、進んだの。」

「今、ワックスを塗りたくったとこまでだ。乾いたら拭き取りだ。内装の掃除がのこっているけどな。」

ミノルは大丈夫?」と、私はストーブで手を温めるミノルにいいました。

「ああ、寒ぃ。お風呂のほうが良かったな。」

 お風呂は特典があるのです。水着姿になり温水シャワーで洗うのです。真冬に水遊びなんて滅多にできることではありません。一方、車洗いは冷水です。この寒空ではきついです。

「だったら、代わろうか。」と、言う智勇サトルです。

「ベー。嫌だよ。」と言って、パパに抱きつきます。こっちは、パパにべったりというのが特典です。

(おいおい、パパの胸に顔を伏せるな。こっちにも決して立派でないものがあるぞ。しかし、ママの存在感ないなあ。あんまりシカトすると家出するぞ!)

「ママ、おいしいね。疲れたなと言うときは甘いものがいいよ。」と言い、さりげなくフォローしてくれる主人です。

「食べたら、車の方に行っていい?」

「ああ、手伝ってくれ。ママ、タオルあるかい。」

「あるわよ。えーと、どこだっけ。」

「助かるなあ。由縁ユカリは内装のぞうきんがけをしてくれるかい。」

「僕は?」

ミノル智勇サトルは、ワックス磨きをたのむよ。軽く拭いて落とせばいいから。」

「わかった。」

 ちょっと、小腹の空く時間です。冷えた体にはお汁粉は最高です。ふうふうとしながら、ミノルが言いました。

「パパ、さっきのおっさんまたくるかな。」

「もう、こないだろう。断ったから・」

「何かあったの。」と私が聞きます。

「失礼なヤツがいてね。僕を捕まえて、『奥さん新聞取ってよ』というんだ。」

「あら、めずらしいわね。しかも、この年の瀬になんて・・また、新聞の配達所でもできたのかしら。」

「インターネットがあるから、新聞はいらないと言ってやったんだ。僕のことを奥さんだなんて、失礼なヤツだろう。」

「・・・・・」と、私と子供達はあきれて黙り込みました。昔どっかできいたことがあるような話、それも新婚時代に・・


日が暮れて、主人と子供が1階の車庫から帰ってきました。車はピカピカになったでしょうか。今年も窓ガラスがきれいです。天井もちり一つありません。

「お疲れさん。晩ご飯よ。」

「何かな。」という主人です。

「年越しそばに決まっているじゃないの。」

「えー、また、にしん蕎麦なの。あれ堅い。」

「堅いのがいいのよ。大丈夫、今年は鴨南蛮よ。正確には鶏南蛮だけど。」

「ママ、紅白が始まるよ。」

 私は音楽が好きです。だから、年末は紅白と決まっています。これだけは譲れません。年末は紅白を見ながら、こたつで年越しそば!主人はおせちをアテにお酒の晩酌!

幸せのひとときです。今年の子供達は除夜の鐘までおきていられるでしょうか。

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