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PTA

日下部拓也48、日下部千香44、智勇と由縁8、実7、金藤俊治 48、三隅淳子 38

芳川薫 46、海児祐子 45、孤島敦子 31、堂島直美さん 30


 運動会の夜のことです。孤島敦子さんは、堂島直美さんに電話をかけています。二人は仲がいいのです。

「本当に、今日は散々だったわ。せっかく作った重箱が無残に・・」

「ウチもよ。せっかく作ったおかずに手もつけずに、添加物だらけだと。」

「そりゃひどい。私は努力したのよ。お母様の漬け汁に浸した鶏肉を温度計をにらみながら、かりっとした感じに揚げたんだから・・そして、中はジューシーにできたのよ。」

「私もよ。添加物がだめだからと、ゆかりや青のりといった天然物で彩りをつけたおにぎりをいっぱいにぎったのよ。それが無駄になったから、せめておにぎりだけでもと必死で探したんだから。今時、添加物がないものなんて、探す方が大変なのにさ。何よ。これは食べられないとかポイよ。あげくに、自分たちはカレーを食べてきたくせに、甘いカレーだったとぶつぶつと言うのよ。」

「ポイとはねえ。ウチは夫が旨そうに食べてくれたけど。肝心の洋樹にはひとつもたべてもらえなかった。洋樹はおばあちゃんとハンバーガーとフライドチキンを食べて喜んでいたけどね。あの人が『まったく、できない嫁だこと』という目でにらむのよ。『折角、旨い唐揚げを洋樹食べさせてやろうとおもったのに、敦子さんたら・・』と私ぶつぶつ文句を言いつつね。」

 商店街にはファーストフードのお店が何軒かあります。どうやらそこで食べてきたようです。二人とも外食は高いのであまり利用しませんが、祖父母達は孫が喜ぶならと平気です。だから、子供達にとってはうれしかったようです。

「こんなことなら、お弁当つくらなきゃよかったわ。」

「そうよ。毎年のように給食ならば、こんなことがなかったのよ。」

「どうして、こんなことになってのかしら・・」

「あいつよ。あのオンナよ。」

「ああ、そうね。日下部というあのオンナが、運動会にお弁当だなんてしなければよかったのよ。」

「そうだわ。あの破廉恥なオンナが、こんなことを計画しなければよかったのよ。」

「腹が立つわ。何よ。これ見よがしに、パソコンを開いて見せていたでしょ。『私はできるオンナです』と言わんばかりにね。」

 くれぐれも言いますが主人は男です。

「そうよね。ちょっと、胸に贅肉がついているからと言って、これでもかと言うほど胸を強調する服を着てさあ。」

「だいたい、いくつだと思っているよ。ポットパンツよ。太もも丸出しの黒タイツなんて考えられない。化粧も濃かったし、いったいどこで働いているのかしら・」

 私も主人の格好はひどいと思います。あれは、ティーンエイジャーの格好だと思います。夜のオンナと疑われるのも当然です。それにしても、悪口はどんどんひどくなってきました。どう見ても失敗したのは自分の責任なのですが、それではおさまりません。誰かのせいにしないと収まらないのです。

「会長さんが、色気にまどわされて、あんな人をPTAの役員にするからよ。」

「あのオンナは、金原先生に何かをしたのかしら・・3年生の子供が3人の選手宣誓なんて変よねぇ。」

「あっ、ありえるわ。あの子達を学級委員にしていると聞いたわよ。」

「そんなことしているの。そういえば、役員席でPTA会長と金原先生が楽しそうに話しているのをみたわ。先生は独身だし、何かをやったのかしら。」

「それって、私たちの金原先生も抱き込んでいるってこと?」

「あり得るわね。由々しき事態だわ。」

「確か、副会長さんは知らないと言っていたわね。」

「そうね。こんなこと許されることではないわ。オンナの武器を利用して、PTAや学校を牛耳るなんて・・」

「そうね。是非、あんなオンナはクビにすべきよ。会長さんはだめだから、副会長さんなら・・・」

「そうね。もうすぐ、退院が近いと言っていたし、明日、病院に行ってみましょう。」

「いいわ。明日ね。」


ここは、病院です。PTA副会長の海児祐子は、半身を起こしていいました。

「なんですって!それほんとですか?」

 傍にいるのは、書記の孤島敦子さんと会計の堂島直美さんです。

「そうなのよ。」と言う書記の孤島敦子さんです。


「あの会長が独断であんなことをするなんて!」と怒る副会長さんです。

「そうでしょう。運動会の昼は給食と決まっているのに・」

「そうよねえ。だってかわいいそうじゃない。今時、親と食べられない子供がほとんどなのよ。」

本当は、逆でした。親子参加が増えたのです。日曜日だったので、父親や祖母の参加率が高かったのです。結構、お母さんはがんばったのです。無残な結果に終わったのはこの二人ぐらいものなんです。


「そうよ。それをあの人が独断でやったらしいの。」と孤島さんが言います。

「そんなの。私への相談もなしに、PTA会長が許すわけ無いじゃないの。」と副会長さん怪訝な顔です。

「それがねぇ。どうも、ある女がそそのかしたらしいです。しかも、その後、ちゃっかりと、書記におさまっているですよ。」

「絶対、色仕掛けで落としたのに違いないわ。」

「えーー、ハレンチな。どんな人なの。」と驚く副会長さんです。

 さて、だんだんと話が白熱してきます。副会長の海部祐子さんは黙って聞いていました。

「年を食っているくせに、厚化粧してね。サングラスをかけていましたわ。」

「運動会で黒タイツの足むき出しの色っぽい格好していました。」

「あの人、金原先生とデキているという噂があるのよ。」

「本当?」

「なんでも、色仕掛けで、自分の子を学年主任の担当になるようにしたそうよ。」

「そうなだ。だから、あの子達、学級委員とかやっているのよね。それって、えこひいきじゃないの!」

「それにさあ。三つ子というのがおかしいのよ。」

「おかしい?どういうこと。」

「あの3姉弟の誕生日が変なのよ。上の二人が、同い年の15日差らしいのよ。下の子供は年子らしいけどね。」

「えっ、ちょっとまって。双子じゃ無いの。」

「双子で誕生日がずれるなんてありないわ。どうも、一人は養子らしいの。」

「それなら、計算が合うわね。なんで、そんなことをしたのかしら。」

「そこなんだけどね。あのオンナ、おばさんという話なんだけど。どうも、旦那さんがいないらしいのよ。」

「それがどうしたの。いや、養子にするなんて・・何かあるわね。」

「その何かというのが、どうも、不義理を働いて未婚の子供を授かったからと言う噂!」

「えー、本当なの。それって・・まさか。金原先生との子供?!」

「それはありえないわ。そうじゃなくて、未婚の子供を授かったという事実を隠すために養子縁組をしたらしいの。」

「えー、んなことを!ひどいオンナねぇ。子供のことを考えているかしら。許せないわ。」

「そうよね。でもそんな人をPTA役員にしていいの?」

「うーん。それは大問題よね。しかも、色仕掛けで学年主任やPTA会長をあやつるなんて!そんな横暴は許されませんわ。」と副会長さんも言わざる得なくなりました。

「そうでしょ。会長さんに文句を言ってくださいな。」

「わかったわ。あいつは幼なじみ。退院したら、ガツンと言ってやるわ。」と拳を揚げる副会長さんです。

「副会長~!」

「ステキ!」

「明日には退院するから、任せておきなさい。そのオンナの名前わかる?」

「えーと、日下部美希という名前でした。商店街の酒屋の娘だとか。副会長、知っています?」

「日下部美希?知らないわね。」

副会長さんは、地元民です。日下部酒店は古くから知っていますが、確かにそんな娘はいないはずでした。


 こうして、副会長さんは、会長さんに直談判しに行くことになりました。翌日のことです。副会長さんは、退院手続きを済ませたついでに、日下部美希の家を訪ねることにしました。副会長の海部さんは、地元民です。日下部の家の検討はついていたのです。

「うん、やっぱり、ここよねぇ。たくにぃの家だわ。」

 そこの表札には、日下部拓也、千香、由縁、智勇、実、美希の6人の名前がかかれていました。まずは、どんな人物か会ってみようと思ったのでした。インターフォンを押して話しかけます。

「すみません。PTA副会長の海部といいますが、日下部美希さんいますか?」

「はあい。日下部美希・・ああ、パパのことね。今、開けます。」

「パパ??」

 程なくして、おかっぱ頭の童顔の女性が出てきました。私のことです。

「すみません。パパ・・もとい、姉は会社からまだ帰ってきておりません。」

「パパといいませんでした?」

「義理の姉の家での呼び名でしてね。本当は叔母なんですが、外国に行って滅多に帰ってこない主人の代わりにいろいろしてもらっているです。そのせいで、パパといのがいつのまにか子供達に定着してしまったんです。」

「そうなんですか。はて、拓也に美希さんなんて、兄弟いたかしら・・」

 私はやばいと思いました。どうも、この人は地元民で、日下部一家のことを知っているようです。

「いますよ。何を言っているんですか。」

「まあ、いいわ。ところで、お姉さんにはお子さんがいらっしゃるんですか。」

「え?いませんけど。」

「ふーん。じゃ、表札にあるお子さんは、全部、奥様の子供なんですね。」

「当然です。」

「ちょっと、聞きたいことがあったのだけど、帰宅していないなら仕方がないわ。また、今度にします。ご挨拶に伺ったとだけお伝えください。」

「わかりました。伝えておきます。」

 海部祐子が帰るのを私は見送りました。


 その日の夜のことです。主人はいつものスーツ姿を脱いで下着姿になっいます。私はスーツを洋服ダンスに直しながらいいました。

「あなた、今日、PTA副会長の海部さんという方がお見えになったわよ。」

「海部・・だれだろう。昔、海部さんとこに祐子ちゃんというのがいたな。」

「いや、名前まではきいてなかったから・・また、来るそうよ。あいさつに伺ったとか言っていたわ。」

「ふーん。じゃ、また、来るだろう。」

そんな話をしていて、ふと主人を見れば、網タイツを履き、胸の大きく空いた悩殺ファションをしています。

「あっ、あなた。何、その格好は!やめなさい。何をする気なの。」

「芳川会長のところへ行くんだよ。何か話があるらしい。」

「どうして、そんな格好をするの。」

「おもしろいからにきまっているだろう。じゃ、行ってくる。」

 止める暇なく派手なハイヒールを履いて出て行きました。夜のオンナ風です。


 ここは、百円均一ショップです。そこに色っぽいオンナがやっきました。

「パパいる?」

レジ打ちのアルバイトさんは、怪訝な顔をして店主の奥さんをみます。どうみても、店主のオンナが店にやってきたようにみえました。しかし、奥さんはにっこりとして、主人を呼びます。

「あら、あんた。日下部さんが来たわよ。」

「おお、待ってたぜ。おまえ、ちょっと行ってくるわ。」

芳川さんは、網タイツの女と軽く腕組みしながら堂々と出て行きます。それをにこにこと見送る奥さんを見て、レジ打ちのアルバイトさんは、『この奥さんすげぇ』と思うのでした。

「なんだ。つまらんな。ちょっとぐらい、反応しろよな。」と小声で言う主人でした。

「あほか。おまえ、前回の時、ウチのやつにナニをみせただろう。男だと解っているのさ。おれは男色の趣味はねぇしな。」

「あっ、そうか。・・・僕にもないぞ。」と言って、主人はあわてて組んだ手を離しました。

ちなみに、ハイヒールを履いた主人は、195近い身長です。170程しかい芳川さんを見下ろしています。しばらく歩いて、主人は言いました。

「ところで、今日は何の用?」

「PTAの副会長がおまえに会いたいというんでな。居酒屋で一杯やりながらでもと思ってな。」

「ふーん。そういえば、ウチにきたとか言っていたな。留守だったけど。海部とか言っていたな。」

「ああ、海部の祐子ちゃんだよ。」

「やっぱり、祐子ちゃんか。僕の3つしただっけ。ははは、楽しみだな。お互い解るかな。」

 そして、とある居酒屋に入って行きました。


商店街の若い仲間が飲んでいました。サカナは主人の噂です。

「最近、あの女こねぇな。何という名前だっけ。」

「ミキちゃんだよ。日下部美希!」

「あの色っぽいねぇちゃんか。本当だな。来ないな。」

「知っているか? 喫茶メリーの親父とデキているという話だぜ。」

「違うだろう。ありゃ、芳川会長のコレだろ。」

「いやいや、親子して入れ込んでいるらしいぜ。息子の薫とも仲が良いらしい。」

「こないだはあのオッパイをこすりつけてきやがった。」

「やっばり、誰とでも寝るのかな。」

「どこの店なんだ。知らないか!」

「ミナミのとあるバーらしいぜ。」

「いや、あの気品は新地だろう。銀座から流れてきたという話だ。」

「実は、北浜の料亭の女将らしいと聞いたことがある。」

 なんとまあ、とんでもない噂が飛び交っています。主人の会社は、道修町です。地下鉄の北浜は最寄り駅です。昼間、見かけてもおかしくありません。


 そこに初老の男が、色っぽい女を連れて入ってきます。噂のオンナです。酔客は一斉にだまりました。男は商店街会長の息子、芳川薫でした。

「・・・お、おい。あのオンナだ。」

「綺麗だな。ホントだ。芳川のおっさんのオンナだったんだ。」

「芳川の旦那、そのオンナは・・」

「ああ。こいつか。俺のレコさ。」

「え?やっぱり!」

「ウソだよ。PTAの役員さんだよ。書記を頼んでんだ。今から会合さ。」

「なんだ。そうか。」

「ねえ、ねぇ。あんたの店どこ?名刺頂戴!」

「名刺ねぇ。」と主人は笑いながら、ウエストポーチをまさぐります。そして、一枚の名刺をだしました。男どもは喜び勇んで、名刺をのぞき込みます。

「はあ、大東亜薬品?」

「なんだこれは!」

「どこの店だ。道修町?」

「こりゃ、製薬会社だぁ。」

 主人は笑っています。確かにそこには『日下部美希』と書かれているのです。

「女将さん、奥にあいつは来ているか。」

「お待ちですよ。」

店の奥に入ると、そこにはおばさんが一人で飲んでいました。

「よお、祐子ちゃん。お待たせ。」

「待ってたわ。」

 おばさんはじっと主人を見つめています。

「初めまして、日下部美希といいます。海部さんですか。」と主人はにっこりとして挨拶をしました。

「ええ、海部祐子よ。確かに、たくにぃに似ているわね。でも、若い。拓也の妹?」

「え?!祐子ちゃんなの。僕ですよ。拓也です。」と言って、主人は顔を指さしています。

「あんたが、たくにぃ?ウソ!まさか、若すぎるわ。女になったと聞いていたけど。」

「へへへ、よく言われるんですよ。祐子ちゃんは、すっかりおばさんだね。」

「当たり前のよ。長男は大学生で就職活動中よ。」

「うあぁ、そんな年なんだ。僕の息子はまだ3年生なのに・・」

「3年生?!遅い子供ね。いくつで産んだの。いや、ごめん。作ったか。」

「産んだでいいよ。僕が40才のときに産んだ子供だからな。」

「産んだあ?!あんた、男でしょ。」

「その通りだよ。生まれつきおちんちんと子宮があったんだ。だから、人工授精で作った受精卵を着床させて妊娠できた。」

「えー、本当なの。不思議な感じねぇ。」

「実は、3人の子供うち2人は僕が産んだ子供だよ。結構、安産でねぇ。ウチの奥さんはそのときは、36才、さすがに高齢出産で死にかけたけど。」

「うそー。出産までしたの。じゃあ、奥さんというのは昨日あったヒトかしら。」

「家に行ったのか?そう言えば、海部さんという女の人が訪ねてきたと言っていたな。」

「男と結婚したのじゃないのね。」

「当たり前だ。そんな趣味ないぞ。」と、怒る主人です。

「いや、こいつはやりかねんぞ。」と、笑いながら混ぜ返す芳川さんです。

「ひでぇや。人を変人みたいに言ってやがる。」

「ははは、でも、今回のお弁当騒ぎの張本人はこいつだ。こいつが、ぎりぎりでねじ込んで来やがったんだ。」

「そうなの。でも大変だったでしょ。ご苦労さん。」と、海部さんはお酌をしつつ言いました。

「今回は祐子が入院していたんで助かったわ。PTAの仕事こいつに丸投げしたけどな。」

「いやあ、でも、おもしろかったぜ。」と、主人はうれしそうに答えます。

 それを見て、海部さんが言いました。

「うれしい。次もあるのよ。助かるわ。」

 芳川さんは、何だっけと言う顔です。

「ほら、林間の季節でしょ。」

「ああ、そろそろだな。」

 それを聞いて、主人はやおやら立ち上がりました。

「あっ、そうだ。今日は子供勉強をみてやらないといけないんだ。悪いなあ。これで・・」

 しかし、海部さんは、腕をがっしりとつかんで話しません。

「大丈夫よ。すぐ、終わるから・・さっさと、これにサインして。」

 そう言って、海部さんは紙切れを出してきました。

「こんなのいつも持ち歩いていたのか。」と驚く芳川さんです。

「適当な人材がいなくてねぇ。今日、委員長をだれにしようかと相談しようと思っていたのよ。」

海部さんが取り出した紙切れを見た主人が言いました。

「これって・・PTAのスポーツ・レクレーション委員の任命受諾書じゃないか。」

「これに、サインしてたら、帰ってもいいわよ。」という海部さんです。

「ひぇーー」

「さっさとサインしろよ。終わったら帰ってもいいぞ。今日は、おごってやるつもりだったが残念だな。」

「ちぇ!やりますよ。但し、こうなったら、飲ませてください。」

 商店街で遊んでいた昔話に花を咲かせる主人達でした。


 数日後のPTAの会合です。孤島敦子さんと堂島直美さんもでています。

「あれ、あのオンナがいないわ。」

「副会長、あいつにガツンと言ってくれたのですね。」

「え・・・何のことかしら。」と言う海部さんです。

「え?話が違います。」と孤島さんが小声で言います。

 その時です。カツカツとハイヒール音がコンクリートの廊下に響きました。ガラリという音ともに教室の扉が開いて、噂のオンナが入ってきました。

「すみません!遅刻しましたあ。」

やって来たのは黒のスーツに身を固めた眼鏡美人の主人です。

「遅いぞ。今日はまともな格好だな。そんなまともな格好もできるんだ。」と言うPTA会長の芳川さんです。

「当たり前じゃないですか。あれは、冗談でやっているだけですよ。人を変人みたいに言わないでください。」

「変人じゃ無いか。」と言う芳川さんです。

「何おう。薫、おまえな・・」

「まあまあ、子供みたいなじゃれ合いはやめて、日下部さんも席に付いてくださいな。」と言って、副会長の海部さんが止めに入ります。

「はあい。」と主人は、空いた席にすわりました。

 それを確かめると、芳川さんは口火を切りました。

「では、始めるか。今日の議題は林間学校の準備だが、まずは新任のPTA役員を紹介しよう。日下部美希さんだ。」

 紹介を受けて、主人が再び立ち上がります。

「初めまして、日下部酒店の娘、日下部美希といいます。48才です。」

「えー?!」と驚く、孤島さんです。

「会長より年上!!ウソー」と驚く、堂島さんです。

「ちなみに、私達は商店街通りで遊んだ幼なじみよ。今回からスポーツ・レクレーション委員長を頼みましたので、委員のみんなはこの人を中心に運営をお願いします。」

 幼なじみで会長より年上ということは、すなわち、あのオンナは、たぶん、姉御として会長達をリードして遊んでいたということです。3つ子の魂100までといいますが、小さい頃の年上に対する信頼と服従は絶対です。もう、あのオンナをPTAから追い出すなんて、とんでもないことだと悟った瞬間でした。


平成27年5月31日 誤字訂正

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