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キンちゃんか

日下部拓也46、日下部千香42、智勇と由縁6、実5、金藤俊治 46、三隅淳子 36

 桜の季節です。薄赤い花びらが落ちる中、色とりどりのランドセルが歩いていきます。主人と私はスーツ姿で見送っています。これから入学式なのです。さすがに、1年生の入学式は見学者が一杯です。祖父母のみならず会社を休む父親までいます。子供によっては、お母さんと離れたらた泣き出す子供までいます。お母さんは大変です。先生も大変です。いろんな子供がいますし、親の関心も集中しています。女の優しい先生だろうか。厳しく躾けてくれる男の先生だろうか。どうなるか興味津々です。


 居並ぶ父兄ををみて、先生達が小声で話していました。三隅淳子先生と低学年主任の金藤俊治先生です。ちなみに、三隅先生は既婚者ですが、金藤先生は未婚です。

「あれが、例の親御さんかですか?」と三隅先生が聞きます。

「ああ、美人だろ。おばさんだ。となりのちっこいのが母親だ。」と金藤先生が答えます。

「いろんなモンスターペアレントがいるけどあんなのは初めてですね。」

「ああ、わがままといえばわがままだが・・小さな学校ではあれぐらいやむ得ないこともあるしなあ。」と金藤先生が答えます。

「それと、まあ、親としての主張もわかります。」

「大したことはないけど・・受け持つ先生が大変だんだ。フルネームでないとけないとか、問題が起こると予想しておかないといけない。めんどうなことになるのは必然だ。」

「確かに問題があるとわかっててやりたがる先生いませんよね。」

「だから、おれが引き受けたんだ。」

「さすが、主任ですね。」

 金藤先生と目があった主人は、ニコリと笑って、ウィンクをします。

「あれ、ウィンクしましたよ。やっぱり、先生と何かあったんじゃないですか。」と言う三隅先生です。

「そ、そんなことないだろう。目の錯覚だよ。」と苦笑いする金藤先生です。


 入学式が無事終わりました。いよいよ、注目のクラス分けの発表です。掲示板の全面にびっしりと名前がはられていました。親子連れが口々に言い合っています。


「ねぇ!3人姉弟、同じ1組よ。良かったわねぇ。」と言う私です。

「よしよし、キンちゃん、ちゃんと約束守ったな。」と頷く主人です。

「キンちゃんって、だれ?」

「いや・・その・・」とごまかす主人です。

 その隣でお母さん達が盛り上がっています。

「わぁ、金藤先生のクラスだわ。良かったわねぇ。」とあるお母さんが喜んでいました。

「良いわねぇ。ウチは2組の三隅先生よ。ハズレだわ。」とまたあるお母さんが残念がってます。

「・・・あのう。ハズレってなんですか。」と聞く私です。

「あら、知らないの。金藤先生は低学年主任で優秀なのよ。それに、やっぱり男の先生のよねえ。厳しく教育してくれるし・・」とあるお母さんが答えます。

「へぇ、あいつはそんなに評判なんだ。」と小声で言う主人です。

「え?『あいつ』・・・知り合いなんですか!」と驚くあるお母さんです。

「いや、そういう訳じゃ。ははは、そんな訳ないじゃないですか。」とごまかす主人です。


 お母さん達が立ち去った後、私は主人に聞きました。

「さっき、話はどういうことなの。」

「じつは、金藤先生は同級生だったんだ。内緒にしてくれと言われているんだ。」

「同級生?!」

「小・中学校と一緒だったヤツが、母校に戻って先生をしていたんだ。」

「そんなのいつわかったの?クラス発表は今日が初めてでしょ。」

「うっ・・その・・・実は・・」

「はっきり、いいなさい!」

「実は学校に3人を同じクラスにしてくれと頼みに行ったんだよ。」

「いつ、そんな勝手なことを・・」

「半月ほど前だけど。」

 主人は半月程前のことを話し始めました。


 新瞳小学校の職員室です。そこに、黒のスーツにミニスカートと網タイツを履いた派手な化粧をした美女がやってきました。サングラスを掛けており、まるで、スナックのママです。実は主人だったのです。


 みんなは、校長か教頭の飲み代の請求にでもきたのだろうと思っていました。ところがその女は職員室に入るといきなり座り込んだのです。そして、頭をさげてこう言ったのです。

「先生、お願いします!ウチの子供を同じクラスにてください。」

 職員室の先生達はびっくりです。

「ど、どうしんたですか!奥さん!」とそばにいたトレーナー姿の先生が尋ねます。

「大変、わがままなお願いととは承知しております。ウチのこども3人を同じクラスにしてください。」

「え?話がよくわかりませんが・・教頭先生、変なひとが来ましたよ。」

 そう言って教頭先生を呼びに行きます。教頭先生がやってきました。

「こらこら、変な人は失礼だろう。すみませんね。私が聞きますんで、まずは、お名前をお願いします。」

「あっ、すみません。僕は日下部美希といいまして、4月に入学予定の日下部由縁ユカリ智勇サトルミノルの叔母です。」と主人が答えます。

「なるほど、新入生のクラス分けのことですね。日下部という名前があったどうか。確認します。ちょっと、金藤先生、クラス分けの名簿をもって来て下さい。確認して頂けますか?」と言う教頭先生です。

 教頭先生に呼ばれて、金藤先生がリストを持ってきました。

「わかりました。えーと、日下部ですか・・・ありますね。」

「ちょっと、この人の話を聞いてもらえますか? この人が低学年主任の金藤俊治先生です。クラス分け利責任者です。」と教頭先生は金藤先生を紹介しつつ言いました。


 金藤先生は主人に言いました。

「奥さん、我々は新入生を万全の体制で迎えるべく準備をしております。クラス分けも種々の条件を考慮しつつやっています。よほど特殊な理由が無い限り変更できないのですよ。」

「わかっております。ですから、こうやって頭をさげているんです。」

「うーん。困ったなあ。どうして、そこにこだわるんですか?」と困った顔をして金藤先生がいいました。

「いえ、その・・ウチの姉弟は常に一緒に育ててまいりました。」

「そらまあ、姉弟だならばそうでしょう。」

「別々にすると不安がりまして・・」

「それはどこでもあることです。お母さんから離れたらがなくて、皆さん苦労しています。それにあなたは叔母でしょう。」

「う・・確かに、そうですが・・うーん。」

「・・・何かあるんですね。」

「あの子達は、誕生日からわかりますように、本当は3姉弟ではありません。」

 そう言われて、金藤先生は新入生のリストを眺めます。

「そう言えば変だと思っていました。上の2人は、同じ4月生まれで誕生日が15日違いですね。」

「はい。私はあの子達の叔母です。しかし、本当はあの子達の母親なんでもあるんです。すなわち、上の2人は腹違いの姉弟と言うわけです。」

「なるほど。そんな複雑な関係でしたか。どうして、このようなことしたんですか。」

「それはですね・・・。内緒にして頂けますか。できれば、別室で・・」

「わかりました。会議室へいきましょう。」


 職員室の隣に、小さな面談のための部屋がありました。机を挟んで座ると金藤先生はいきなりこう切り出しました。

「さてと、えーと、日下部美希さんでしたか。あなたは、父親の日下部拓也とどういう関係なんですか?」

「ええ、姉ですがそれが何か。」と答える主人です。

「それはおかしい。美希というお姉さんなんていなかったはず。」

「え?・・・どうして、それを!」と言って驚く主人です。

「ひょっとして・・・おまえ、拓也か?」

「いやその・・・」

「やっぱり、そうか。おれだよ。金藤俊治だよ。小・中学校一緒だった俊治だよ。」

「ゲ! キンちゃんか。おまえが学年主任、いや低学年主任か!」と驚く主人です。

「当たり前だ。もう、いい年だからな。」と笑う金藤先生です。

「低学年主任ってなんだ?学年主任じゃないのか?」

「1から3学年の学年主任だ。ウチの学校は1学年1クラスしかないから、そうしているんだ。町中の小学校も過疎化が進んでいるんでな。タワーマンションができたんで、今年は特別3クラスだけどな。」

「しかし、おまえが学年主任とはなあ・・・。悪い、さっきの話はなかったことにしてくれ。この学校やめさせるわ。どこかの私立へ入り直させよう。」と言う主人です。

「馬鹿なことをいうな!おれが原因ということになったらエライことだ。」

「ははは、冗談だよ。」と笑う主人です。

「噂には・・オンナになったと聞いていたが、こうしてみるとすげえな。」

「ははは、どうだ。綺麗で色っぽいだろ。おっぱいもすげえだろ!」と言いつつ主人は豊かな乳房を持ち上げてみせます。

「色っぽいどころか・・おまえ、夜の仕事してるのか。どこのオカマバーだ。」

「ああ、そうだよ。新世界の・・・・・とんでもない!ちゃんとした製薬会社の開発の仕事だよ。表向きは女子社員ということになっているがな。」

「表向き?会社は男だと知っているのか。」

「ああ、仕事中に初潮が始まってなあ。大騒ぎになっちまったんだ。」

「本当に、昼の仕事か?その格好はどう見てもスナックのママだぞ。」

「ははは、たまにこんな格好して遊んでいるんだよ。ほれ、会社の名刺だ。」

「おお、東亜製薬か。すごい、大手じゃないか。結婚したとは聞いていたが・・」

「ああ、うちの奥さんの写真もあるよ。見るか?」と言いつつ主人は携帯電話を取り出しました。

「奥さん?!オンナと結婚したのか。」

「当たり前だろう。僕は男だぜ。立派にナニもある。子宮もあるけどな。」

「両方あるのか。」

「卵巣がないんで子供は作れないが、まあ、そういうことだ。なんだったら、これからホテル行くか?」

「ば、ばかなことを言うな!」

「ところで、おまえこそ結婚はどうなんだ。」と主人が聞きます。

「実は・・まだだ。」

「え?まだなのか?僕と同じ年だったよな。大丈夫なのか。」

「大丈夫も何も仕方が無いだろう。教師はなかなか機会が無いんだよ。」

「そうなのか。しかし、おまえが主任ならば話が早い。なあ、頼むよ。」

「公私混同だろ。そんな訳にいくか。」

 断られて、主人はしなを作りながら手を握って言います。

「ねえー、キンちゃん、お願い!」

「だめだ・・・・」

 胸を揺らして、さらに言います。

「うふーん。ねぇ、てば。」

「だめ・・・・」

「男のひととは初めてだけど。お願いをきいてくれたら、あげちゃう。」

「・・・・」

 効き目がないと知ると憮然とした顔で言いました。

「わかった。この手は使いたくなかったが・・」

 そう言うとおもむろにおっぱいを出し始めます。

「何をする気だ!」と驚く金藤先生です。

「こうして、叫び声をあげて隣の部屋へ逃げ出すんだ。」

「わかった!それだけはやめてくれ!」

「だったら、クラスを一緒にしてくれるよな。」とにっこりとして主人がいいます。

「わかったよ。クソ!男の癖に女の武器を使いやがる・・」と金藤先生は渋顔で答えました。

「ありがとう!」

「ちょっと、聞いておきたいんだが、こいつらはすべておまえ達の子供か?」

「あたりまえだ。2人は僕が生んだ。後の1人は妻だ。」

「それで、15日ずれの4月生まれか?・・・ちょっとまて、子供を産んだのか?子供は作れないとか言ってなかったか?」

「でも、子宮があって、生理があるということは、受胎は可能ということだ。人工授精した卵子を子宮の機能テストのために着床させたんだが、いざ妊娠してみると中絶できなくてな。結局、産んだ。勢いで、残りの受精卵も着床させて、2人も産んだ。」

「そういうことか。」

「出産や授乳なんて、なかなか、できる経験じゃないぞ。おまえもしてみるか?」

「できるか!」

「ははは・・・冗談はさておいて、これは子供達をイジメから守るためなんだ。」と主人が答えます。

「どういうことなんだ。」

「誕生日をみれば、腹違いの姉弟とまるわかりだろ。イジメ良いネタだ。」

「そりゃ、そうだな。」

「そこでだ。小さい頃から3人姉弟でガッチリとタッグを組ませて助け合うように育ててきんだ。クラスが別々になるとそれができなくなるだろう。」

「しかし、兄弟で完結すると社会性に問題がないか。」

「大丈夫。確かに3人だけで遊んでいることもあったが、ちゃんと友達を作って遊んでいる。それよりも、子供社会から疎外されても、3人で耐えていけるほうが大事だ。」

「それはそうだが、先生というものがあるんだぞ。」

「まあ・・僕は先生達が頼りにならないからとか言っている訳じゃないんだ。こんな子供達を産んでしまった責任として、僕はなんとしても守らねばならないんだ。お願いだ。」

「母親みたいなことを言うなあ。」

「父親と言ってくれ。一家の長だからな。家ではパパとよばれているんだぞ。くれぐれも、みんなには、叔母さんということにしておいてくれよ。」

「わかったよ。ところで・・何をくれるんだ?」

「え?!何か言ったか?ああ、『あげちゃう』とか言ったな・・うーん。そうだな。おまけ付きでこれをやろう。」

 そう言うと自分の花柄のハンカチを取り出すと、口紅を取り出して、口に付けた後、ハンカチにキスマークをつけました。

「どうだ。独身のおまえにはうれしいだろう。女の匂いのするハンカチだぞ。しかも、キスマーク付きだ。」

 男が何を喜ぶかツボを押さえている主人です。しかし、金藤先生は、ハンカチを眺めて、神妙な顔をして言いました。

「元男のキスマークか。複雑な気分だ。うれしいような。うれしくないような。」

「あんまり、気持ち悪いことをするなよ。僕は男には興味ないからな。」と言って笑いました。


 そして、2人は会議室から出てきました。主人は笑顔ですが、金藤先生は渋顔です。金藤先生はすぐに教頭先生に報告します。

「教頭先生、3人は同じクラスします。事情を聞きましてやむなしと判断しました。責任は私が持ちますし、そのクラスは私が担任します。」

「そうか。君がそこまで言うなら仕方が無いな。」と言う教頭先生です。

「金藤先生、ありがとうございました。」という主人です。

「奥さん、真似する人がでると困るのでくれぐれも内密に願いますよ。」と教頭先生は念を押します。

「わかっています。本当にありがとうございます。」とそう言って主人は笑顔で帰りました。


 その後です。三隅淳子先生がにこにこして言いました。

「ほう、やむ無しですか・・何があったんです?スナックのサービス券でももらいましたか?」

「とんでもない!第一、あの人はスナックのママじゃないぞ。普通の会社員だ。」と金藤先生が答えます。

「え?違うんですか。さっきの話だと、面倒がみれないから、子供を養女にだしているということでしょ。てっきり、夜の仕事で稼いでいるだと思っていました。」

「なんか、違うみたいだったな。製薬会社の開発だとか言っていたな。それに、オレと違ってあいつは昔から頭が良かった。」

「へえ、見かけによらないですね。昔から・・え?知り合いですか!」

「この小学校の出身で、オレと同級生なんだ。」

「え?本当なんですか。すごい!それで、旦那さんいるんですか?」

「旦那さんねぇ。よく聞いてないが、いないんじゃ無いかな。」

(あいつが、旦那とは言えねぇよなあ・・・)

「え?じゃ、独身なんですか。チャンスですよ。」

「何がチャンスなんだ。」

「だって、あんな美人の同級生、しかも、独身なんでしょ?バツイチぐらいなんのその。チャンスですよ。」

「はは、バカな。あいつとは、あり得ないよ。」

「いやいや、旦那さんがいれば、子供を養子に出さなくてもすむんですから、芽はありますよ。」

 いやいや、とんでもない話になりました。おーい、私がいるんだぞ。人の旦那を取るな!


 そして、今日です。1年生の教室です。出席を取っています。後ろには心配そうにお母さん達がずらりと並んでいます。

 主人は、今日は黒のスーツです。化粧も控えめです。

「安達」

「はい」

「井上」

「はあい」

「伊勢崎」

「はい」

「上田」

「はい」

「川島」

「はい」

「工藤」

「はい」

「日下部」

「はい」「はい」「はい」

「日下部、3姉弟きょうだいOKと・・」

「澤田」

「はい」

「・・」

「さて、皆さん。私が担任の金藤俊治です。よろしく、お願いします。わかったら、『はい!』と言いましょう。」

「はあい!」

 こうして、1年生の初授業が始まりました。


 短い授業の終了です。三々五々に父兄が担任の先生に挨拶をしています。

「金藤先生、日下部美希です。こちらが母親の日下部千香です。」と主人が私を紹介します。

「よろしくお願いします。」と私が挨拶しました。

「おまえら、同じクラスになってよかったなあ。この方が担任の金藤先生だぞ。しかも、低学年主任だ。こんなエライ先生に教えてもらうなんてスゴいぞ!」と主人は子供達に向かって言います。

「おまえ、それ褒めているんだろうな。こないだと言いようが違うが・・」と金藤先生は少し照れています。

「当然じゃ無いか。同級生だからって、皮肉なんて言ってない。」と主人が答えます。

 金藤先生は、改めて主人を足から頭までを眺めて言いました。

「まったく、おまえがこんな美人になるとはなあ。」

「僕は白鳥家のお父さんじゃねえぞ。」と答える主人です。

 確かに某通信会社のCMじゃあるまいしイヌではありません。しかし、主人が男だと知っているようです。

「先生はこのひとが男と知っているんですね。」と確かめる私です。

「ああ。」と答える金藤先生です。

「しかし、キンちゃんが学年主任とはなあ。こんなすごいコネは無いぞ。僕がたのめば成績だってどんどんあげてくれるぞ。」

「子供達にバカなことを言うな。おまえの頼みとはいえそんな不正できるか!」

「はは、でも、困ったことがあれば、相談にのってくれるよな。」

「それは、そうだが、他の生徒も一緒だぞ。えこひいきになるからな。」

「あっ!僕の子供にそんな態度をとるのか?いろいろ、ネタはあるんだぞ。」

「・・何を言う気だ。脅す気か?おまえ、子供にそんな教育しているのか。」

「冗談に決まっているだろう。でも、本当にたのむぞ。何かあったら、学校ではおまえが頼りだからな。」

 同級生とあって、タメ口のきき放題です。それに、『キンちゃん』が相手だとまるで漫才コンビです。こんな主人を初めてみました。冷や汗を流しつつ、背広のポケットに忍ばせた先日の花柄のハンカチをそっと握る金藤先生でした。


 金藤先生は、日下部3姉弟きょうだいをよく使います。

「日下部!ちょっと手伝ってくれや。」

「はい。」

「何をするんですか。」

「このプリントをくばってや。」

「はい。ほれ、ミノル智勇サトルの分よ。」

 3人で手分けして、作業を終えて、席にもどりました。3人は並んですわっています。


「ねぇちゃん。わいらばっかりやな。」と愚痴をこぼすミノルです。

「文句いわない!パパが先生の手伝いは進んでしなさいと言ってたでしょ。」と由縁ユカリがたしなめます。

 主人の教育のたまものです。主人は「先生の手伝いは進んでしろ。クラスの委員は引き受けろ。」と口を酸っぱくしていうのです。当時、何のためか3人はよくわかりませんでした。一体、何のためでしょうか。


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