9/9
エピローグ 【和也】新しい出発
「てんちょー、氷ノ山神社の雪宮さんから、ダブルベジタブルL、二枚入りましたー」
「よし、俺が行くよ」
「……は?」ぽかんとしている新人バイトを横目に、俺は手早くピザを焼き上げると、梱包してバイクに積み込んだ。
二号店に異動になって一ヶ月、俺は今や本物の店長だ。でも実際には先輩が店長に内定していた。元々気乗りしていなかった奴は、美貴と取引をした。
店長職と兎の護符とを――嬉々として。
『ナンパ出来ない人生なんて死んだも同然』とか抜かしてな。
直接俺に言わなかったのは、同情で職を譲られたと思わせないための配慮だろう。
――やはりあの男の頭の中身は不可解だ。
そうそう、美貴に贈った指輪は、お袋が倒れる直前あいつの誕生日プレゼントにと買っておいたものだ。しかし、あんな形で贈ることになるとはな。近々向こうのお袋さんにも、婚約の挨拶に行かなければ――。
神社に着き、長い階段を昇ると社殿の前であのガキ、いや土地神様が呑気にアイスを食っている。奴は俺に気付くとニヤリと笑った。
俺は帽子を取って、深々と頭を下げた。
「毎度、ピザキャットです。……ご注文の品、奉納に参りました」
――今日は俺の奢りだ。




