付喪神の住まい
明後日投稿すると言ったな?あれは嘘だ
申し訳ございません!お盆休みに入って勝手に休んでいました!
決してネタが尽きてきたわけじゃないよ!早すぎるじゃないか!
「・・・あれ?僕、なんでソファーで寝てるんだ?」
ベッドを見てすぐ思い出した。お鈴さんが寝てるんだった。
お鈴さん。幽霊、ではないな。この娘は付喪神なのです。裕子さんが持っている人形の。その人形は今はお鈴さんが持っています。
夜にいろいろ話していたのですが、人形から離れるとどんどん存在が薄くなっていくとのことです。存在が消えるなどということにはならないのですが、目視しにくくなるとのことです。簡単に言うと影が薄くなるということです。
それはちょっと避けたいな。
・・・というかお鈴さんが付喪神ということに驚いてない自分に驚いた。
「あっ・・・、おはようございます。太一さん」
「うん、おはよう」
「そういえばっ!今日は大家さんが私の部屋をくれるんですよね!?私、もうすごくわくわくします!人形の時からずっとこうやって歩き回って一人でいろんな所へ行ったり、一人だけで生活したりしたいなぁって思ってたんですよ!だって、なんかかっこいいじゃないですか!?私なんて生まれて少ししか経ってませんけども、人形としていろんなご家族の家庭というものを見てきたんで!なんか、あんなに小さかった子供が立派に育って巣立ちをするって、なんか感動するんですよ!ほかにもですねぇ!!!」
お鈴ちゃんがいきなり熱く語りだした。夜もこんな感じに何回か語っていたなぁ。
「ちょっと待って、お鈴ちゃん!話はそのくらいにしてそろそろ朝ごはんにしようよ。ほら、もう作ったからさ。お鈴ちゃんは和食派?それとも洋食派?」
「じゃあ、洋食でお願いします」
なんか外見に似合わず洋食が好みらしい。昨日の夕食も何食べたいって聞いたらパスタだったし。和服でパスタって中々シュールだったなぁ。
ちなみに僕はどちらかと言えば和食派。
「ごちそうさま」
「さて、みんな揃ったか?洋一はまだ寝てるのか?もう10時だぞ」
「いやいやいや、俺はここにいるでしょ!大家さん!ホント俺の扱い悪いなぁ~」
大家さんが洋一さんも弄り終えたので掃除開始です。
予定時間は3時。それまでに家具を整理して、部屋の清掃、そのあと使わないけどまだ全然使えそうな家具はお鈴さんにあげるので部屋に入れるという手順で。案外どれも綺麗なので十分使えそうだ。
───男子グループ
「昨日は夜は雨降らないって言ってたから外に出しておいてもいいだろってことになったが、ホントに雨降らなくてよかったな。もし雨降ったら家具が全滅だったからな」
たしかに佐助さんの言うとおりだ。急遽、使わない家具はお鈴さんが使うことになったから雨でも降ったらどうなっていただろう。まぁ、濡れちゃうよね。
「ではこちらも家具の掃除やってしまいましょうか」
アレスさんが人数分の雑巾とバケツを持ってきてくれた。
「ところで水道はどこですか?バケツに水を汲みたいんですが」
「たしかアパートの裏にあったはずだが・・・・。ちゃんと出るのか?洋一」
外にあったんだ、水道。
やっぱ手入れされてないんだろうな。
「わかんないけど、最後に使ったのはみんなで流しそうめんをしたときじゃないかな?あん時はまだこんなに人もいなかったよな~」
「あっ、じゃあ、その時の話聞かせてくださいよ、洋一さん」
「私も気になりますね、私たちが来たのは去年の冬でしたから」
すごく気になるな、僕が来る前のアパート。
だけど、この話はまた後々話すことにしよう。
───女子グループ
「はい!持ってきてあげたわよ!ほうきにちりとり、それとはたきと掃除機と雑巾といろいろ!もう、疲れたわ!私これで終わりでいい!?」
「アレスに頼りっきりだからそうなるんだ。ったく、金持ちは・・・」
「あぁー!悪口言ったー!何よ、もう偉そうに!」
全く、あいかわらずだ。マリーは。
あぁ、私か?裕子だ。大家じゃない。太一はあっちのグループだからな、臨時だ。
語り部というのもなかなか面白いもんだな。
「じゃあ、何からするか。とりあえず窓を開けろ。なんかこの部屋もだいぶ変わったもんだなぁ。こんなに埃っぽくはなかったんだけどな」
「そこまでじゃないだろ、まだきれいな方じゃないか」
「それはお前の部屋が汚いだけだろ。というか、これがきれいな方なのか?というか、裕子。お前部屋どれだけ汚くしてるんだ?あたしのアパートをどうしたいんだ?」
「それは知らない、私でも謎だ。それは長年一緒のお前だって知らないはずだ」
「知ってるし。お前がめんどくさがるところだろうが」
見事に当てられた。なんてこった。隠してたのに。
「一回お前んちに行ったとき、軽いトラウマになってそれ以来行ってないんだぞ。わかってたのか?」
「トラウマ?大家ってトラウマとかあったんだ?ていうか私の家に来たことあったのか?」
へ~、それは知らなかった。
学生の時に私の家に来るのを避けてたのはそのせいだったのか。
「あのさ!話ばっかりしてないで二人とも手を動かしなさいよ!何で、あたしばっかやってるのよ!ねぇ!?まかせっきりにしないでよ!」
マリーに怒られた。マリーはタンスの上をはたきで掃除していた。
「そういえば鈴はどこ行った?姿が見えないんだが」
「私はここですぅ~」
押入れの戸をバンバンと叩く音と声がした。そんなとこにいたのか。
「何をやってるんだ、お前は」
押入れを開けると涙目になって鈴が出てきた。
とりあえず、そっと私は頭を撫でてやった。
「だって、私が押入れの中を掃除してたら誰かにいきなり閉められたんですもん~・・・」
「誰だ?」
「誰?」
「誰よ」
三人同時に鈴に聞いた。
その威圧感で鈴が若干引いた。
「そ、そそ、そんなの知りませんよぉ~!」
ついに泣いてしまった。
そして、逃げた。
「・・・まぁ、続きをやろうか」
ちなみに犯人はちゃんと掃除をしてたマリーだった。
鈴がいると気づかず閉めてしまったと。
───夕方
「よし、みんなで荷物を入れてくれ」
夕方になってしまったものの無事に掃除は終わった。
時間を確認した。
5時前か。予定時間よりかなり過ぎたけど、なんとか終わったからいいか。
「よ~し、みんなごくろうだな。じゃあ、今日はみんなでどっか食いにいくか?鈴の引っ越し祝いと歓迎会だ」
大家さんがそんな提案をしてきた。
「そんなん言うけど金はどうすんだ?俺は給料日前だからあまり持ってないぞ」
だが、大家さんは大丈夫とばかりにフッと笑った。
「先日家賃をもらったばかりだからな。金ならある。何を食いに行こうか?やっぱ肉にするか?」
「やったぜ!肉だ!いつぶりだチクショー!」
洋一さんが待ってましたとばかりに歓喜の声を上げた。
そんなわけで僕以来の新しい住人が一人増えた。
そういえば、部屋がもう一部屋空いてるらしいのだけどいったい誰が住むことになるのだろうか?