204号室と203号室
2作目。1作目は完結していませんが両方ともやめずに書くつもりですのでご安心ください。
僕がここに引っ越してきてからはや一ヶ月が経ちました。
ですが、いまだここのアパートの雰囲気に慣れません。
───なぜなら、ここのアパートの住人は変わり者ばかりだからです
あっ、忘れてました。僕は朝霧 太一と言います。このアパートの204号室に住んでいる17歳の普通の学生です。この歳ですが一人暮らしをさせてもらってます。原因は親の転勤などなどと思うでしょうが、ここの大家さんが格安で部屋を使わせてあげるというので流れで一人暮らしを始めたわけです。
今日は学校もない休日というわけで部屋で読書してたのですが・・・
「あぁ、もうこんな時間かぁ・・・」
窓を見ると日が沈みかけていて、いつの間にか夕方を迎えてました。読書ももうちょっと程々にしておくべきかな。
さて、今日の夕飯を作らなければいけないのだけれども・・・。
「・・・・・・何もないなぁ」
冷蔵庫の中身は卵と味噌と少しの飲み物くらいを除いて空の状態になってました。これは買いに行かなければ。といっても財布の中身もそこまで入ってないからなぁ・・・。
「これじゃあ何も食べるものがないなぁ。誰かに相談してみるかなぁ~」
正直言うとそれは乗り気じゃありません。ここの住人と会うとロクなことが起きませんので。まぁ、僕も最近はそれを楽しみにしている節もあるんですけどね。
そんなことを話しているうちに隣の203号室に着きました。まぁ、誰と話していたのかというツッコミは抜きにしてください。
ドアをノックして「裕子さ~ん、いますよね~?」と一声をかけた。
すぐ返事が聞こえてドアが開き、出てきたのはだらしない恰好をしていて髪を後ろで縛ってる一人の女性が出てきた。
この人は203号室に住む朝霧 裕子さん。
20歳で、ここらのちいさな道場で剣道を教えてる。かなりの凄腕で竹刀を振れば遠くのリンゴが粉々になるというほどの噂も流れ、しかもそれを実際にやってのけるという実力を持つ。
でもそれって剣道にならなくないかなぁ・・・。
ちなみに僕の従姉弟でもあり、名字が一緒なのはそれが原因。悪いってわけじゃあないんだけどね。
「おぅ、どうした。太一。また寂しくて眠れないのか?」
「いや・・・、今は夕方だし僕だって子供じゃないんだからさぁ・・・。そんな昔の話を持ってこられても・・・」
僕も昔、裕子さんの家に遊びに行った時は裕子さんと一緒に寝たものだ。まぁ、そんな思い出も今となっちゃあいい思い出だ。
「そんなことより、僕の部屋の冷蔵庫の中身が切れちゃってさ、夕飯作るから材料くれないかな?」
「うん、まぁ、いいっちゃあいいのだが・・・、台所は自分のところを使うのか?」
裕子さんは何か躊躇っているかのように質問してきた。
「いや、裕子さんのところを使いたかったんだけど・・・、もしかしてまた?」
「あぁ、まただ」
裕子さんはアパート一の力を持っているのだが、アパート一のめんどくさがり屋でもあるのです。
要するに、台所が汚い。
すごく汚い。
「じゃあ、わかりましたよ。僕の部屋で作りますんで、できたら呼びに来ますね」
「あぁ、すまないな。いつもいつも」
「いえいえ、いいですよ。材料は裕子さんのなんですし」
さて、材料は───じゃがいも、にんじん、たまねぎと───これはカレーを食べたいとでも言っているのか!?カレールーもちゃんと甘口から辛口までそろってる!?
こうなったら作ってやろうじゃないか、カレーを!
あっ、このジャガイモ腐ってる!
~激闘の末~
「裕子さ~ん、できましたよ~」
僕は隣の部屋に行き裕子さんを呼んできた。
「おっ、いい匂いじゃないか。あの食材でここまでできるなんてなぁ」
「あっ、やっぱ知ってたんですね」
「当たり前だ、整理整頓はできなくとも食材の良し悪しを見るくらいならできるぞ」
裕子さんは胸を張って言った。もちろん、胸を張って言えることじゃないのだが・・・。
「じゃあ食べるか」
僕と裕子さんはテーブルに向かい、いただきますと言ってカレーを口に運んだ。
その味は天にも昇る味で僕と裕子さんは一口で昇天してしまった。
もちろん、不味いという意味で・・・。
「やっぱり、食材がまずかったんだな・・・」
「そりゃ、そうですよね・・・」
そう言って僕たちはスプーンを床に落とし倒れてしまった
ちょうど用があって入ってきた大家さんに見つかって病院へ送られたのはこの出来事から1時間後のことである。