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AI勇者は諦めない  作者: ゼロスキルのAI使い
王都編

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52/55

第52話「報酬」

報酬は、数字ではなく形で渡されることもある。



王宮からの呼び出しは、前回ほど改まったものではなかった。


指定されたのは、執務区画の一角。

人の出入りが多く、会話も途切れない場所だ。

それだけで、内容の性質が察せられる。


部屋に入ると、王女エリシアと、近衛兵の責任者が席についていた。

書類が一つ、机の上に置かれている。


「今回の任務に対する報酬についてです」


王女は、形式的な前置きを省いた。


「金銭での支払いも検討しましたが、別の形を用意しました」


書類が、こちらに差し出される。


私はそれを手に取り、内容に目を通した。

王都内の住所。

建物の規模。

付随する権利。


一瞬、意味を測りかねる。


「……住居、ですか」


「ええ」


王女は頷いた。


「護衛として、王都に常駐する以上、拠点が必要です。

宿では、限界がありますから」


合理的な判断だ。

特別な配慮ではない。

少なくとも、そう説明できる。


「維持費は王家持ちではありません。

ただし、所有権はあなたにあります」


条件も明確だ。


私は書類を机に戻した。

指先が、わずかに震えている。


理由は分かっている。

この報酬は、生活に直結する。


「受け取ります」


答えは即座に出た。


「分かりました」


王女はそれ以上言及しなかった。

感情的なやり取りを挟む場ではない。


部屋を出ると、廊下の喧騒が耳に入る。

人の声、足音、遠くの鐘。


王都の中で、私はずっと仮の場所に立っていた。

宿も、仕事も、一時的なものだった。


それが、変わる。


『居住拠点、確保予定』


数値や確率では表せない変化だ。

それでも、確かに現実として存在する。


王宮を後にし、街へ出る。

道の両脇に並ぶ建物が、少し違って見えた。


ここに、戻る場所ができる。

そう考えただけで、歩調が自然と緩む。


絶望の中にいた頃、先のことを考える余裕はなかった。

今日をやり過ごすだけで精一杯だった。


今は違う。

明日や、その先の配置を、現実として思い描ける。


私は空を見上げ、一度だけ深く息を吸った。


まだ、何も始まっていない。

だが、始められる場所は手に入れた。





【あとがき】

今回は、任務の報酬として与えられる「場所」を描きました。

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