第51話「評価」
評価は結果よりも、次の扱いに現れる。
王宮での任務が一区切りついたあとも、私の一日はすぐには変わらなかった。
巡回に同行し、報告をまとめ、配置の確認を行う。
護衛という役割は続いているが、空気は明らかに違う。
緊張が抜けたというより、張りつめる理由が一つ減った、そんな感覚だ。
呼び出しを受けたのは昼過ぎだった。
場所は前回と同じ、装飾の少ない部屋。
王女エリシアが席についている。
近衛兵が二人、壁際に立っていた。
「座ってください」
促され、私は椅子に腰を下ろす。
形式ばった場ではないが、私語を交わす雰囲気でもない。
「今回の護衛任務について、正式な評価を行います」
言葉は淡々としている。
だが、内容はすでに決まっているのだろう。
王女は書類に目を落としながら続けた。
「未然防止、即応、被害抑制。
いずれも問題なし。
判断も適切でした」
評価は短い。
過不足がない。
「記録上は、それで十分です」
私は一度、頷いた。
それ以上を求める理由はない。
「今後についてですが」
王女が顔を上げる。
「引き続き、王都での護衛任務に関わってもらいます。
ただし、これまでのような緊急対応ではありません」
平常業務への移行。
それは、信頼が前提にある配置だ。
「異議はありますか?」
「ありません」
即答する。
考える必要もない。
王女は小さく息を吐き、視線を和らげた。
「……助かりました」
その一言は、評価でも礼でもない。
ただの事実確認のようだった。
部屋を出ると、王宮の中庭が見える。
昼の光が、石畳を照らしている。
私は足を止め、しばらくその光を眺めた。
何かを成し遂げた、という感覚はない。
だが、押し潰されていた重さが、少しだけ軽くなっている。
『今後一週間の危険度、低下』
数字が示す通りだ。
だが、それ以上に、周囲の人間の動きが変わっている。
視線が柔らかくなり、言葉が簡潔になる。
必要以上に構えなくていい。
その変化が、妙に懐かしかった。
宿へ戻る道すがら、私は歩調を少し緩めた。
急ぐ理由が、今日はない。
風が頬に当たる。
冷たくはない。
絶望の中で、ただ耐えていた時間があった。
今は、そこから少しだけ、前を向いている。
理由は、まだはっきりしない。
だが、悪くない兆しだ。
私はその感覚を、無理に整理しないまま、歩き続けた。
【あとがき】
今回は、任務後の評価と、空気の変化を描きました。




