第50話「区切り」
終わったと判断される時、すべてが終わっているとは限らない。
王宮内の動きが、落ち着きを取り戻し始めていた。
巡回の間隔は通常に戻り、回廊に立つ人数も減っている。
あの緊張が嘘だったかのようだが、実際に何も起きていないだけだ。
私は報告のため、指定された部屋に入った。
装飾の少ない、実務用の空間。
近衛兵と数名の関係者が揃っている。
王女エリシアは、席にはいない。
「今回の件について確認する」
淡々とした声で、話が始まる。
実行犯は捕縛。
動機は不明。
背後関係は特定できず。
「組織的関与の可能性は否定できないが、現時点で断定はしない」
その言葉に、誰も異議を唱えなかった。
事実として確定できるのは、そこまでだ。
王妃暗殺事件との直接的な関係についても、同様だった。
線は繋がらない。
繋がらないまま、保留される。
私は壁際で話を聞きながら、必要な情報だけを整理する。
解決したこと。
解決していないこと。
『未確定要因、継続監視推奨』
それ以上でも、それ以下でもない。
「護衛任務についてだが」
話題が切り替わる。
「今回の対応をもって、任務は完遂とする」
その言葉は、静かに告げられた。
達成感を煽るような響きはない。
私は一度、頷く。
「評価は内部記録に残す。公表はしない」
当然だ。
この件は、表に出る性質のものではない。
「以上だ」
短い確認で、場は解散となった。
部屋を出ると、回廊の窓から光が差し込んでいた。
王宮内の人の動きも、いつもの速さに戻っている。
平穏が戻ったように見える。
だが、それは一時的なものだ。
捕まえたのは、実行役に過ぎない。
背後に何があるのかは、まだ分からない。
それでも、区切りはついた。
護衛任務は、完遂した。
そう扱われる。
私は一度だけ足を止め、王宮の中庭を見下ろした。
静かな風が吹いている。
何も起きていない。
今は、それでいい。
【あとがき】
今回は、護衛任務が一区切りとされるまでを描きました。




