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AI勇者は諦めない  作者: ゼロスキルのAI使い
王都編

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43/55

第43話「ひとつだけ違う」

日常の中に、ひとつだけ違うものがある。



護衛任務は、三週間目に入った。


朝、王宮の門前に集合する。

リーダーが点呼を取る。配置を告げる。

俺は後方。それは変わらない。


「今日は午前中に来客対応、午後は執務室だ」


いつもと同じ流れだった。


王女エリシアが姿を現す。

俺たちは歩き始める。


『本日の予定は過去データと一致。特異点なし』


変化がない。

それが続いている。


来客対応の護衛に就く。


謁見の間の外、俺は壁際に立った。


廊下を行き交う使用人。

窓から差し込む光の角度。

魔道具の配置。


全て、昨日と同じ。

一昨日と同じ。

二週間前と同じ。


『過去三週間の観測記録と比較。人員配置、動線パターン、魔力反応、いずれも安定』


何も変わっていない。


来客が到着する。


中年の男性。商人風の服装。

護衛が二人ついている。


『来客の身元は別部署で確認済み。本護衛の管轄外』


俺には関係ない。

見ているだけだ。


来客が謁見の間に入る。

扉が閉まる。


静かな廊下。

他の護衛たちは、黙って立っている。


時間が過ぎていく。


俺は、ふと廊下の奥を見た。


使用人が一人、歩いていく。


『使用人の服装、識別番号を確認。第三区画所属、清掃担当』


特に異常はない。


だが、俺はその使用人を目で追った。


理由は分からない。

ただ、何か引っかかった。


使用人は廊下の角を曲がり、見えなくなった。


『対象はルート通りに移動。過去の動線データと照合……一致』


一致している。

異常はない。


なのに、引っかかりが消えない。


『違和感の原因を特定できず。追加情報が必要』


追加情報。

何を見ればいい。


謁見が終わり、来客が去る。


王女が扉から出てくる。


「昼食を」


短い言葉。

俺たちは移動する。


昼食後、執務室の護衛に就く。


廊下で待機しながら、俺は考えていた。


さっきの使用人。

何が引っかかったのか。


『先ほどの使用人について、記録を照合』


服装は正規のもの。

動線も正規のルート。

歩く速度、姿勢、全て通常範囲内。


『有意な差分は検出されず』


差分がない。

なのに、俺は何かを感じた。


気のせいか。


『「気のせい」の定義は曖昧。客観的判断材料なし』


分かっている。


夕方、護衛任務が終わる。


「明日も同じ時間だ」


リーダーの言葉を聞き、俺は王宮を後にした。


宿への道を歩きながら、まだ考えていた。


あの使用人。


服装は正しかった。

動線も正しかった。

全て、正しかった。


だが。


『照合データとの差分を再検索中』


歩いていると、ふと思い出した。


靴。


あの使用人の靴だ。


『使用人の靴に関するデータ。王宮使用人は支給品を着用。黒の革靴、型番統一』


支給品の靴。

それは知っている。


だが、さっきの使用人の靴は……


『視覚データを再構築中。解像度の限界により、詳細な特定は不可能』


見えていたはずなのに、思い出せない。


靴の色は黒だった。それは確かだ。

だが、型が同じだったかどうか。


分からない。


『記憶データの精度不足。結論は保留』


結論は保留。

また、保留だ。


宿に着く。


机に座り、考える。


靴が違ったのか。

同じだったのか。


明日、確認すればいい。

同じ時間帯に、同じ場所を通る使用人がいれば。


『明日の観測対象として登録』


俺は、窓の外を見た。


王都の灯りが揺れている。


三週間、何も起きていない。

暗殺者は捕まっていない。

警備は変わっていない。


そして今日、俺は使用人の靴が気になった。


それだけだ。


『関連性は不明。判断材料不足』


分かっている。


ただの気のせいかもしれない。


でも、明日、確認する。


それだけだ。


【あとがき】

護衛任務の中で、カイトは小さな違和感を覚えました。使用人の靴——それが何を意味するのかは、まだ分かりません。次回、その違和感が少しずつ積み上がっていきます。

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