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AI勇者は諦めない  作者: ゼロスキルのAI使い
王都編

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40/55

第40話「続く日常」

日常は続く。だが、何かが変わり始めている。



護衛任務は、翌日も続いた。


王宮の回廊を歩く。

今日の任務は、書庫への同行だった。


「カイト」


リーダーが、低い声で呼ぶ。


「今日も後方だ。動くな」


「はい」


俺の役割は変わらない。

末端の護衛。目立たず、騒がず、見ているだけ。


王女エリシアが書庫に入る。

護衛は外で待機する。


『周囲の魔力反応を監視中』


静かな廊下だった。

窓から差し込む光が、埃を照らしている。


他の護衛たちは、黙って立っている。

俺も、同じように立つ。


時間が、ゆっくりと過ぎていく。


あの日から、五日が経った。

暗殺者は逃げたまま。捕まっていない。


だが、王宮は何事もなかったかのように動いている。


「おい」


隣の護衛が、小声で話しかけてきた。


「お前、あの日いたんだってな」


「……ええ」


「よく生き残ったな」


その言葉に、俺は何も返さなかった。


生き残った。それだけだ。


『当該戦闘における生存確率は、事前情報なしの場合、推定38%』


低い数字だった。

運が良かっただけ、とも言える。


書庫の扉が開き、王女が出てくる。


「戻ります」


短い言葉だった。

俺たちは、再び歩き始める。


王女の背中を見ながら、俺は考えていた。


五年前の暗殺。

今回の襲撃。


関係があるのか、ないのか。


『現時点で関連性を示す情報なし』


分かっている。

だが、引っかかる。


王宮を出ると、日が傾き始めていた。


「今日は以上だ」


リーダーが、短く告げる。


「明日も同じ時間に集合」


護衛たちが散っていく。

俺も、宿へ向かった。


王都の街並みが、夕日に染まっている。

日常の風景だった。


だが、どこか落ち着かない。


宿に戻ると、机の上に便箋がそのまま残っていた。


昨夜、何も書けなかった。

今夜も、書けるか分からない。


リリアは、何も知らない。

暗殺者のことも、王女のことも。


「危ないことはしていない」とは書けない。

かといって、「暗殺者に襲われた」とも書けない。


心配をかけたくない。

でも、嘘もつきたくない。


その狭間で、ペンが止まる。


『返信を保留することも選択肢の一つ』


「……そうだな」


俺は、便箋を引き出しにしまった。


窓の外を見ると、王都の灯りが一つずつ灯っていく。


暗殺者は、まだ捕まっていない。

王女の母を殺した犯人も、五年間捕まっていない。


王都は、静かに見える。

だが、その下には何かが潜んでいる。


俺には、まだ見えていないものがある。


『新規情報の取得を継続』


今は、目の前のことをやるしかない。

護衛の仕事を続け、見続け、記録し続ける。


いつか、点と点が繋がる日が来るかもしれない。

来ないかもしれない。


それでも、やることは変わらない。


逃げずに、見続けるだけだ。




【あとがき】

護衛任務の日常が描かれました。暗殺者は捕まらず、リリアへの返事も書けないまま。次回、王女との距離が少しだけ変わります。

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