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AI勇者は諦めない  作者: ゼロスキルのAI使い
王都編

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38/55

第38話「王女の秘密」

彼女が笑わない理由を、俺は知った。



暗殺未遂から三日が経った。

俺は再び、王宮に呼ばれていた。


「殿下が、直接お話ししたいとのことです」


案内された部屋は、静かだった。

窓から差し込む光が、床に模様を描いている。


「お待たせしました」


扉が開き、王女エリシアが入ってくる。

今日は、護衛も侍女もいない。


「カイト」


「はい」


「座ってください」


促されるまま、椅子に座る。

王女も、向かい側に座った。


しばらく、沈黙が続く。


『心拍数が安定しています。敵対的な雰囲気はありません』


とAIが告げる。


「あの日」


王女が、静かに口を開いた。


「あなたは、迷わず私の前に出ましたね」


「……はい」


「なぜですか」


その問いに、俺は少しだけ考えた。


「護衛だからです」


「それだけ?」


「……それだけです」


王女は、わずかに目を細めた。


「正直ですね」


「嘘は、苦手です」


その言葉に、王女は小さく笑った。

初めて見る、本当の笑顔だった。


「私は」


王女が、視線を窓へ向ける。


「人を信じるのが、苦手なんです」


「……」


「誰もが、王女という立場を見ている」


「私自身を、見てくれる人はいない」


その声には、深い孤独が滲んでいた。


「それに」


王女は、言葉を切る。


「五年前、母が暗殺されました」


胸が、きゅっと締まる。


「……そうですか」


「はい」


王女の声は、静かだ。


「護衛がいました。でも、守れなかった」


「犯人は、まだ捕まっていません」


その言葉が、胸に重く落ちる。


だから、彼女は笑わないのか。

誰も信じられないのか。


「私は」


王女が、俺を見た。


「あの日、あなたを見て思いました」


「この人は、嘘をつかない、と」


「……」


「計算もない。打算もない」


「ただ、やるべきことをやっただけ」


王女は、小さく微笑む。


「だから、あなたと話したかったんです」


俺は、何も言えなかった。


慰めの言葉も、約束の言葉も、思いつかない。


ただ、できることがある。


「殿下」


「はい」


「俺は、戦闘が得意じゃありません」


王女が、わずかに目を見開く。


「でも、逃げません」


「見るべきものから、目を逸らしません」


その言葉に、王女の目が、少しだけ潤む。


「……ありがとう」


「それだけで、十分です」


部屋を出るとき、王女が静かに言った。


「また、お願いできますか」


「護衛を」


「……はい」


俺は、頷いた。


「できる限り」


王宮の廊下を歩きながら、俺は考えていた。


王女は、孤独だ。

誰も信じられず、誰にも本当の顔を見せられない。


だが、俺にできることは少ない。


ただ、逃げないこと。

問題から目を逸らさないこと。


それだけだ。


『あなたの姿勢が、評価されています』


「……評価じゃない」


俺は、小さく呟いた。


「ただ、逃げないだけだ」


その夜、宿に戻ると、レオンが待っていた。


「おう、カイト」


「レオンさん」


「聞いたぞ。王女の護衛だって」


「……はい」


「すごいじゃねぇか」


レオンは、笑った。


「だが、気をつけろよ」


「何に、ですか」


「王宮の仕事は、複雑だ」


レオンの顔が、少しだけ厳しくなる。


「お前みたいに真っ直ぐな奴は、利用されやすい」


その言葉に、胸がざわつく。


「……気をつけます」


「ああ。でも」


レオンは、肩を叩いてきた。


「お前らしく、やればいい」


窓の外を見ると、王都の灯りが静かに輝いていた。


王女の孤独。母の暗殺。

まだ捕まらない犯人。


俺には、何ができるのか。


『現時点で、全てを解決する必要はありません』


「……そうだな」


俺は、静かに頷いた。


できることを、一つずつやるだけだ。

逃げずに、見続けるだけだ。


それが、俺のやり方だ。



王女エリシアの過去が明かされました。カイトは慰めも約束もしませんが、「逃げない姿勢」だけは見せました。


【次回予告】

「手紙に込められた想い――言葉にならない不安が、届く」

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