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AI勇者は諦めない  作者: ゼロスキルのAI使い
王都編

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34/55

第34話「静かな評価」

派手な活躍はなくても、評価は確実に残る。



保留扱いになった報告から、一週間が経った。

下町での調査は一区切りついたが、俺は相変わらずギルドへ通っていた。


掲示板の前に立つと、視線の端で何人かがこちらを見るのが分かった。

だが、声をかけてくる者はいない。


『周囲の注目度は微増していますが、警戒ではありません』


とAIが静かに告げる。


「……ちょうどいい」


俺は、小さく呟いた。


目立ちすぎるのは、好きじゃない。

ただ、必要なことをしているだけだ。


依頼票を眺めていると、受付の女性が手招きする。


「カイトさん、少しよろしいですか」


「はい」


俺は、カウンターへ向かった。


「先日の調査報告ですが……」


彼女は、声を落とす。


「上層部で、話題になっているそうです」


「話題……ですか」


「はい」


彼女は、少しだけ笑った。


「戦闘実績はないけど、調査能力が高いって」


胸の奥が、じんわりと温かくなる。


「……そうですか」


「それと」


彼女は、一枚の紙を差し出した。


「これ、あなた宛ての依頼です」


紙には、短い文章が書かれていた。


――市場区画での水質異常調査

――依頼者指名:カイト


「指名……」


「はい」


彼女は、頷く。


「前回の調査を見て、あなたに頼みたいって」


『指名依頼です。信頼の証です』


とAIが補足する。


「……受けます」


俺は、紙を受け取った。


派手な依頼じゃない。報酬も高くない。

だが、確かに"必要とされた"という実感がある。


「ありがとうございます」


彼女は、微笑んだ。


「頑張ってください」


市場区画へ向かう途中、レオンとすれ違った。


「おう、カイト」


「レオンさん」


「また仕事か?」


「はい。市場の水質調査です」


「地味だな」


レオンは、笑った。


「だが、お前らしい」


その言葉に、少しだけ照れくさくなる。


「……そうですか」


「ああ」


レオンは、腕を組んだ。


「最近、お前の名前を聞くぞ」


「えっ」


「派手な活躍じゃない。でも、ちゃんと仕事をする奴だって」


胸の奥が、じんわりと熱くなる。


「そんな……」


「謙遜するな」


レオンは、俺の肩を叩いた。


「評価されてるんだ。自信持て」


その言葉が、胸に染みた。


「……ありがとうございます」


「じゃあな。また組むときは声かけろよ」


レオンは、そう言って去っていった。


市場区画に着くと、依頼主の商人が待っていた。


「カイトさんですね」


「はい」


「噂を聞いて、指名させてもらいました」


商人は、深く頭を下げる。


「最近、井戸の水が少し濁るんです」


「飲めなくはないんですが……気になって」


「分かりました。調べてみます」


俺は、井戸へ向かった。


水を汲み、匂いと色を確かめる。


『微弱な魔力反応があります。ただし、毒性はありません』


「……原因は?」


『地中の魔石片です。おそらく、近隣の工事で露出したものと推測されます』


「なるほど」


俺は、商人に説明した。


「魔石の破片が、地中に埋まっています」


「取り除けば、元に戻ります」


「本当ですか!」


商人の顔が、ぱっと明るくなる。


「すぐに、やってもらえますか」


「はい」


作業は、数時間で終わった。

地道で、誰も褒めない仕事だ。


だが、終わった頃には、水の濁りは完全に消えていた。


「ありがとうございます!」


商人は、何度も頭を下げた。


「助かりました。本当に」


「いえ」


俺は、小さく笑った。


「仕事ですから」


ギルドへ戻ると、掲示板の前で冒険者たちが話しているのが聞こえた。


「あいつ、カイトだろ」

「市場の件、片付けたらしいぞ」

「地味だけど、ちゃんと仕事するよな」


小さな声だった。

だが、確かに聞こえた。


『現在のあなたは、「信頼できる冒険者」として認識されつつあります』


「……そうか」


俺は、掲示板を見上げた。


名前を呼ばれるわけでもない。

称賛されるわけでもない。


それでも、確かに評価されている。


派手じゃない。でも、これでいい。

俺は、静かに積み上げていく。


王都の空を見上げる。

もう、冷たさは感じない。


ここには、俺の居場所がある。



目立たない努力が、形として返ってきました。カイトの立ち位置が、少しずつ定まってきています。


【次回予告】

「小さな仕事が、信頼という形になる」

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