サトルの消息 疑惑の転校
裸間ボッチ完成!
こうして悪夢の夜は過ぎ去っていく。
今考えれば有野さんの奇行をごまかそうと五階さんが体を張り発覚を遅らせた。
有野さんを守ることで自分たちの秘密を守ったことに。
しかしそれはおかしい。ならばなぜ今になってバレるような動きをする?
何をごまかし何を俺に見せようとしたのか?
巻き込みたいのか巻き込みたくないのかはっきりしない。
まさかまだ準備が整ってないとか?
矛盾する隣人たちの動き。
結局五階さんも毎夜このような奇行を繰り返していたのだろうか?
だとすればやはり俺に気づいてもらいたがっていたとしか思えない。
果たして俺は彼女たちの思い通りに動けただろうか?
今振り返れば随分と鈍感だったのではと感じる。
有野さんもそうだが当然俺の存在を認識してたと思う。
指摘すれば言い訳はできない。いくら優秀だろうとかわしようがない。
サトル…… お前はいつもこんなものを見ていたのか?
特等席で夜のスペシャルダンスショーを堪能したんだろう?
しかも俺と違って何の障害もない。羨ましい限りだ。
思春期症候群ではない彼ならばきっと思いっきり楽しめたことだろう。
今思えば羨ましいサトルの存在。何に悩むことがあるだろうか?
ノートにわざわざ残すような真似までして何を訴えたかったんだ?
分からない。俺にはまったく分からない。
サトル…… なぜお前はこんな羨ましい場所から逃れるように姿を消したんだ?
俺には理解できない。それともお前は転校してないのか?
誰もお前の転校先を知らない。元気に暮らしてるか等の情報も入って来ない。
まさか…… お前は転校してないのか?
転校した転校したと言ってるのはお隣さんと大家さんだけ。
誰もその後を目撃したと言う情報がない。
そもそもサトルは存在するのか? いや確かにノートはあった。
テレビの下に隠すように置いてあったがそれが逆に不自然な気もする。
急な引っ越しで大変だったろうがそれでも大家さんが責任持って部屋をきれいに。
当然部屋全体を掃除するはずだ。そこでなぜノートを発見できなかったのか?
そこまで行き届いてないと言うのはあり得るのか?
疑問が残るサトル転校。彼のその後を知っている者がいればそれで文句ない。
確認のために直接本人に話を聞くのがいい。
もちろんその時は奇妙な隣人の習慣について語り合うことになるだろう。
とにかく今は事件ではなく単なる転校と言う話に納得するしかなさそう。
翌日。
直前に迫ったクリスマスパーティー。イヴ当日は予定もあるだろうと前日に開催。
俺としてはどうせ当日はやることもない。だからイヴもクリスマスも暇。
できるなら有野さんと楽しく過ごしたい。ただこればっかりは分からない。
有野さんの気持ち次第。前日に勢いに任せて誘ってみようかなと考えている。
クリスマスパーティーを利用して思いっきり距離を詰める。
非公式とは言え俺たちはもう付き合ってるのだから。何も恐れる必要はない。
堂々と誘えばいい。断られたら五階さんでも誘うかな。
でも予定が入ってそうなんだよな。もしそうなら潔く身を引くべき。
何だか急に弱気になってしまう。
ボーっと屋上で飯を食ってると緑先生が姿を見せる。
「一ノ瀬君…… 」
「緑先生お久しぶりです。元気ないけどどうしたの? 」
寝不足なのか欠伸をしている。俺も昨夜のことがあって睡眠不足。
そもそもロクに考えがまとまらなかった。
「ねえ一ノ瀬君。あなたまだ彼女たちと別れてないの? 」
いきなり何を言ってるんだろう? 俺たちが別れるはずない。
もはや俺には有野さんしかいない。確かに緑先生は俺の憧れの先生だけど。
止める権利はない。そう誰も止める権利は有してない。
「何を言ってるんですか緑先生? 」
どうやら緑先生はまだ有野さんたちとの仲を危惧してるらしい。
大丈夫。何の問題もない。多少相応しくない展開だろうがそれでも問題ない。
俺たちは互いに愛し合ってるのだから。
最後の最後まで説得する緑先生。どうも様子がおかしい。
「本当にどうしたんですか緑先生? 」
繰り返し話を聞く。
「実は…… サトル君が」
何とサトルについて話したいことがあるらしい。
だったら詳しく聞かせてもらいましょうか。
隠していたものを吐き出してもらおう。
まさか緑先生はすべて知っているのか?
サトルの話が出た以上慎重になる必要がある。
「ねえ一ノ瀬君はサトル君についてはどこまで知ってるの? 」
探りを入れる。どう答えるのが正解だ?
憧れの緑先生に包み隠すことなくすべてさらけ出せばいいのか?
だが彼女が敵か味方か分かっていない。そもそも敵味方などないが。
五階さんは警戒するようにと報告もするようにと。それが俺たちの為だと。
隣人関係を破壊する動きはできるならやめてもらいたい。
「俺ですか? ほとんど何も。俺が引っ越す前にいた前住人と言うぐらいです」
秘密のノートの存在は今のところ伏せておこう。
信頼が置けたら伝えてもいいがそうすると覗いたことがバレる恐れがある。
やはりここは慎重になるしかない。
「本当に? 有野さんたちや大家さんからは? 」
どうやらいろいろ詳しいようだ。俺の知らないことを把握してるに違いない。
これは取引する価値があるかもしれないな。
「へへへ…… 教えてあげてもいいですがタダと言う訳には…… 」
あれ? 俺は何を言ってるんだろう? 学校の屋上でおかしな取引を持ち掛ける。
困った緑先生の顔が見たい訳ではないのに。最低だな。
「分かった。ここでは人の目もあるし改めてどこかで会いましょう」
おっと…… おかしな展開になって来たぞ。
緑先生と密会か。悪くない展開。
放課後に待ち合わせの喫茶店へ。
ついに動き出す。
こうして物語は新たな章へ。
続く




