御開帳 裸間ボッチここに極まる
有野さんの侵入を許さない。
今夜はさすがに静かに過ごしたい。
有野さんと楽しい夜を過ごすのも悪くないが恐怖が勝ってしまっている。
これはもはやどうしようもないこと。昨夜の脅迫が俺を消極的にさせた。
安全策を取るのがいい。俺まで狂っては収拾がつかないからな。
ターゲット変更っと。
葛藤すること十分。ついに五階さんが姿を見せる。
うん? うん? うーん!
確かに目の前にいるのは五階さんだ。それは間違いない。
だからって示し合わせたかのように素っ裸ってことはないだろう? 失望するぞ。
彼女がひた隠しに隠してきた性癖。それを咎める立場にない。
俺はただ受け入れるのみ。
五階さんのそれは同じかそれ以上に大胆で激しい踊り。
夜だと言うのに。一体何を?
ダメだ。いくら話しかけても服を着てくれない。
当然ガラスで隔たれているのだから聞こえはしないが。
それにしても両隣ともまるで覗いてくれと言わんばかりの大胆さ。
防犯意識のかけらさえないだらしなさ。
有野さんだけならまだ納得するが五階さんまでとなるとわざととしか思えない。
俺はついにこの仕組みに気づいた。これは俺を陥れる為の罠。蟻地獄。
それに今ようやく気づいた。だとすれば相手は随分苦労したんだろうな。
二人と出会うまでは…… 実際は占い師に言われるまで。
運気を上げる為と有野さんと仲良くなる為にカーテンを開いたのがきっかけ。
でも一人暮らしの場合カーテンでずっと締め切るのは決して珍しいことではない。
だからこそ今まで隣人たちの密かな企みに気づけなかった。
丁寧に体をひねる。ああ…… 五階さんのあられもない姿が。
見てはいけない。決して見てはいけないのにどんどん引き込まれていく。
もう無理だ。耐えることなど不可能。
あっちを見れば裸でこっちを見れば裸。裸に取り囲まれ逃げ場を失う。
安さに惹かれ駅や学校から遠い場所へ。そうして二人の間にすっぽり収まった。
まさかこんなことが起きるとは夢にも思わなかった。
五階さん…… 君がひた隠しにしていた秘密を暴いてしまったらしい。
二人から責め立てられる日々の始まり。思ってもみなかった試練。
その試練に立ち向かっていくしかない。
声もなく仕草だけで伝える高等テクニック。
済まない五階さん。俺にはもう耐えられない。
有野さんほどの情熱は感じられないがそれでも立派なものを持っている。
ああ羨ましいほど。欲しいとさえ思うことも。
それでも俺は言う。見えないのだ。肝心なものが下ろした黒髪で隠れてしまう。
そもそも見たい訳ではないのでじっと見る気もないしちらっとだけ。
ああ…… 明日にでも髪を切ってもらおう。
二人にはショートカットが似合うと言えば喜んで切ってくれるはず…… ないか?
でもあの髪が本人のとは限らない。もし前住人の呪いだとしたら?
それが俺の視界を妨げるならまったくの逆効果。
どうであれすべての真相は黒髪の中に。何てね。
こうして真実にたどり着いた。
裸間ボッチここに極まる。
身長は高い方だから様になる。
まるでモデルのような体形とはさすがに褒め過ぎかな?
でもスタイル抜群の有野さんにも匹敵するほどの美しさ。
もはや心を奪われてしまう。
ああどうしてこんなにも隣人たちは大胆で美しいのだろうか?
たまたま選んだ家には信じられないほどの発見があった。
まさか有野さんだけでなく五階さんまでここまでとは思いもしなかった。
毎日のようにこのような破廉恥な格好をしてたのかと思うと鼻血さえ出ない。
今すぐ抱きしめて感謝のハグをしてやりたいが一心不乱に踊り続けるから無理。
そもそも俺たちの間には壁が。どんなに近くても壁があればどうにもならない。
ただ大人しく見守るしかない。ああどれだけ求めてるか分かってるつもりだ。
思春期症候群になってなければすべてがお目見えになったんだろうな。
それだけが悔やまれる。
黒髪では隠し切れずに前に立ちはだかるのは白い湯気だ。
それが部屋全体に立ち込めたかのように。もちろん分かっている。
異常かもしれないがもう慣れた。
たとえ五階さんの姿が見れないとしても仕方がない。
ぼんやりしたものだからどうにかなりそうだがそうはいかない。
鉄壁のガードで守られている。
思春期症候群は進行してるのか徐々に見れる範囲が狭まって行く。
そんな気がする。
結局のところ二人にはこの秘密を打ち明けていない。
思春期症候群改善でおかしな実験と治療をしているが一向によくはならない。
そう簡単に治るものではないと自覚はしている。
でもこのせいで詳しくは見られないから困っている。
医師が言うには何年か経てば治るだろうと。
そう言うところははっきりしない。
とにかく今は五階さんの裸を目に焼き付けよう。
ああいつまでもその踊りを見ていたい。寝てる間もずっと見ていたい。
だからどうしてもカーテンを閉めるのが遅れてしまう。
ついにお隣さんの正体が分かった。
気にすることなく裸で生活していたのだろう。
こうして悪夢は過ぎ去って行く。
ありのままの姿を見せようとする有野さんと御開帳する五階さん。
どうであれ俺にとって二人は掛け替えのない友人であり隣人であり仲間だ。
衝撃的ではあるが俺は二人を見捨てることも関係を断ち切ることもない。
大体薄々は気づいていたのだから今更何があろうと驚きはしない。
ただなぜここまでするのか恐怖が増すばかり。
続く




